《完結》公爵令嬢は愛する男を骨の髄まで愛します。

ぜらちん黒糖

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⑤目的

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翌日、アンドロスは渋るレオナルドを連れて、街一番の大きな寺院を訪れ、高僧に事の次第を全て話した。

レオナルドが高僧に訴える。
「彼女はあと一日、あと一度だけ抱いてほしいと言っていました。ですから、今夜でソフィアはあの世へ戻ってくれるのではないでしょうか?」

​高僧は、疲れた表情のレオナルドの顔を見て、「お前の顔には、すでに死相が出ている」と告げた。

​「助かりたければ、よく聞きなさい。もう二度とその女を家に入れてはいかん。そして、この札を家の中と外から、入口の戸板に貼り、三日三晩、絶対に中に入れてはいけない。もし、入れるとお前はあの世へ、女と共に行くことになるだろう」

そして諭すように高僧は釘を刺す。
「おそらくその女の霊は、あと一回の逢瀬で決めるつもりだ」

「次、お前さんが女を家に入れれば必ず取り殺される。それを防ぐには三日間、家に入れずに追い返すしかない」

それでもレオナルドは、小さな声でソフィアをかばうように言った。

「ソフィアは悪霊でも怨霊でもない。ただただ、私を愛するあまりに、あの世へ行けずに私に会いに来ているだけなんだ」

その言葉を聞いて、高僧が諭す。
「幽霊となった女と、生身の男が結ばれることはない。そんなことは誰にでも分かることだ。しかしお前を慕うその女にはそれが分かっていない。お前が分からせてやることが、その女のためでもあるのだ」

「だからって魔除けの札で追い払うなんて……」

アンドロスが口を挟む。
「レオナルド。あのさ、俺たち生きてる人間でも、相手のことを思って、そいつのために泣く泣く別れることだってあるだろう?俺と結婚するより、他の男を探したほうがいいぜ、なんてさ」

「……うん」

「それが今なんだよ、レオナルド」



​​レオナルドは札を受け取ると、家に戻り、家の中から入口の戸に隙間なく貼り付けていった。

外側の戸にはアンドロスに貼ってもらった。

アンドロスが声をかける。
「レオナルド!絶対に迷うんじゃないぞ!同情するんじゃないぞ!いいな!」

「ああ、大丈夫だ!」



​深夜……いつものようにソフィアが現れた。戸板にびっしりと御札が貼ってあるのを見て、悲しそうにレオナルドに懇願する。

​「レオナルド様!どうしてこんな仕打ちをするのですか?お願いです。この札を剥がしてください……」

「レオナルド様」
「レオナルド様」
「レオナルド様」

​ソフィアの悲痛な声が、夜通しレオナルドの耳元を責めた。それでも、彼は頑なに耐え忍んだ。

「許してくれ、ソフィア。これが君の為なんだ」

​一日目が過ぎた。

夜通しソフィアの声にさらされたレオナルドは、ぐったりとしていた。気がつくと陽は沈み、外はもう薄暗くなっていた。

水を飲み、少しだけパンを口にして、またベッドに横たわるレオナルド。

「あと二日……」

そして、二日目。

戸口で立ち止まり、昨夜と同じようにレオナルドを呼び続けるソフィア。彼女の声は泣き声になっていた。

「レオナルド様……」
「レオ……ナルド…様」
「どうして……どうして私を避けるのですか?」
「ああ、レオナルド様……」

思わず戸の前に立ち手で戸を触る。すぐにソフィアが声をかけてくる。
「レオナルド様、あなたは今、目の前に立っておられるのですね?」
そっとソフィアが戸に触れる。

「あ」レオナルドの手にソフィアの手の感触が伝わった。

「ソフィア。すまない。君にはもう二度と会えないんだ。君は一人であの世へ行くべきなんだ」

涙をためて訴えるソフィア。
「私は……あなたと一緒に行きたいのです」その瞬間、ソフィアが口を抑える。しまった。本音を言ってしまった、と。

レオナルドもその言葉で正気に戻る。

(やはりソフィアの目的は私をあの世へ連れ去ることだったのか……)

ソフィアに向かって叫ぶレオナルド。

「ソフィア!もう私のことは忘れてくれ!私は、やっぱりまだ生きていたいんだ!すまない」

レオナルドは戸口から離れると、ベッドへ潜り込み耳を塞いだ。

ソフィアはまたゆっくりと来た道を戻り始める。アンドロスが戸の隙間から覗いていると、その前でソフィアが立ち止まった。

アンドロスの背中に冷や汗が落ちる。

ソフィアの視線と自分の視線が合ったような気がした。

しかしソフィアは視線を外すと、そのまま、来た道へ向かい姿を消した。
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