《完結》公爵令嬢は愛する男を骨の髄まで愛します。

ぜらちん黒糖

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⑥罠

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そして、いよいよ最後の三日目。

その夜も​、ソフィアの懇願はより激しく、悲しみに満ちたものになった。

 ​「もう……もうだめです……。お願い、開けて……あなたに会いたい……」

「レオナルド様……。私はあなたと別れてから、食事も水も、喉を通らなくなりました。そして私は、衰弱して死ぬことになりました」

「それほどまでに、あなた様のことをお慕いしていたのです」

「こんな私が、可愛そうだと……お思いになりませんか?」

「レオナルド様。あなたが、お父様に結婚を申し入れてくれたのは存じていました」

「しかし、断られただけで、私を簡単に諦めてしまわれた」

「どうして私を連れて逃げてはくれなかったのですか!」

「レオナルド様!」

レオナルドは、耳を塞いでじっと我慢していると、ソフィアの声が急にしなくなった。

(どうしたんだろう。もう諦めたのだろうか……)

だが戸や窓の隙間からは明かりは差し込んで来ない。

(油断はできない。完全に朝が来るまでは戸を開けるわけにはいかない)

レオナルドはベッドに潜り込み、まんじりともせずに耳を抑えて辛抱した。

その頃、隣家のアンドロスは気になってずっと様子を窺っていた。

アンドロスがカーテンの隙間から外を覗いていると、ソフィアが滑るように移動して、自分の家の前を通り過ぎようとしていた。

緊張するアンドロスの目の前で、何かが落ちる音がした。

目を凝らして地面に落ちたものを凝視すると、金貨が落ちていた。

金貨は不等間隔で、ソフィアが立ち去った方向に落ちていた。

(罠かもしれない……)

直感でそう感じたが、目の前の金貨はとても魅力的な輝きを見せていた。

(どうしよう。間もなく夜明けだ。早く取らないと誰かが拾うかもしれない)

迷うアンドロス。

(もうすぐ夜明けだ)

そっと戸を開けて周りを見てみる。ソフィアはもういない。姿は完全に消えていた。

アンドロスは誘惑に負けた。

まだ薄暗い外へ出ると、アンドロスは金貨を拾い始める。

一枚、二枚と拾っていくアンドロスが、五枚目を拾ったときに人の気配を感じる。

アンドロスの目の前に、冷ややかな眼差しで見つめるソフィアが立っていた。

恐怖で固まるアンドロスの頭にソフィアの言葉が響く。

『さあ、レオナルドの、家の戸板に貼ってある御札を剥がすのです』

アンドロスは、夢遊病者のようにフラフラと立ち上がると、レオナルドの家の前まで歩いて立ち止まる。

アンドロスは、ゆっくりと静かに御札を剥がしていく。全て剥がし終えるとまたソフィアの声が頭に響く。

『そのまま自分の家に戻って、ぐっすりと眠るのです。いいですね』

頷くと、アンドロスはふらふらと自分の家に戻り、戸を閉めて姿を消した。

「うふふふふ」

満面の笑みを浮かべながらソフィアは、
ゆっくりと、レオナルドの家の戸をすり抜けて、中へ入って行った。

 
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