《完結》王太子妃、毒薬飲まされ人生変わりました。

ぜらちん黒糖

文字の大きさ
3 / 85
第一章

③マリーの告白

しおりを挟む
ヘレンがメイドのマリーに憑依して丸一日が経つ。メイドの仕事は傍から見ていたのと違って大変だった。

見るのとやるのとではやっぱり違うわねと……。

ヘレンは毒殺犯を探すためにマリーの体を借りていたのに、いつしかメイドの仕事を覚えるのに必死になっていた。そんな時、休憩中に自分が服毒した時の話が出て来る。

「でも、ヘレン様の苦しみ方はすごかったわね」とルイーズが言った。

マリー(ヘレン)がルイーズの話に耳を傾ける。ルイーズが話を続けた。

「あの日はいつものようにトムス様とヘレン様のお二人だけのお食事だったんだけど」

「何事もなくお二人は楽しくお食事をされていたわ。」

「食後にはヘレン様はワインを飲んでらしたわ」

「でもね、突然ヘレン様が口を手で抑えたと思ったら吐血して」

「それからテーブルにうつ伏せになって動かなくなったの」

「いやもう、あっと言う間の出来事で、私もトムス様もあっけに取られて……すぐに動けなかったわ」

 ルイーズがマリー(ヘレン)に声をかけた。「マリーもそうでしょう?ヘレン様の側にいたあなたがすぐに動けなかったんだから」

そこへメイド長のアリサが現れた。
「ほら、あなたたち、仕事しなさい」

「はーい」

「マリー」アリサが呼んだ。

「はい、何でしょうか?」

「そろそろヘレン様のおむつを取り替えてあげてくれる?」

「はい」

マリー(ヘレン)はヘレンの寝ている部屋へ向かった。

静まり返ったこの部屋で、一人意識をなくしている自分の体を、濡れタオルで拭いていておむつを取り替える。

マリー(ヘレン)の目から涙がこぼれた。

「今夜、マリーに尋ねなくちゃ」

マリーは潜在意識の中のあの小さな部屋にいるはず。

マリー(ヘレン)はおでこを中差し指でトントンとつつきながら呟いた。「マリー、聞こえてる?」






深夜、ヘレンはマリーの潜在意識の中に入っていた。奥の方に明かりが漏れている部屋がある。あそこにマリーがいる。

ヘレンは滑るように廊下を進むとドアを開けた。椅子に座っていたマリーが振り向いた。

「ヘレン様」マリーは椅子から立ち上がると、すぐに土下座をして謝った。「お許し下さいヘレン様」

マリーはヘレンが尋ねもしないのに、自分から話し始めた。

「私はあの日、ヘレン様が服毒された時の給仕でした」

「私がヘレン様の係で、ルイーズがトムス様の係でした」

「でも少しの間だけ、交代してと頼まれたんです」

ヘレンが怪訝な顔をして聞いた。

「誰に頼まれたの?」

「ローズ様です」

「ローズが?まさか……」

「はい、ローズ様がお姉様をびっくりさせたいから交代してほしいと私に頼んだのです」

「ローズがあの場所にいただなんて……にわかに信じられないわ」

「本当なんです。ローズ様はずっと部屋の外の通路で待機していました」

「ヘレン様とトムス様の食事が終わって……トムス様がヘレン様にワインを飲もうって言われて……」

「変ね、トムスは私がワインを飲まないのを知っているはずなのに」

「トムス様はヘレン様に、こう言ったんです」

「君にも飲めそうなワインを見つけたんだよって、飲んでみないかって」

「それで私が飲んでみると、返事をしたのね?」

「はい。でもヘレン様は気乗りしないご様子でした。ヘレン様が渋々飲むとお答えした瞬間、トムス様が私に……」

「マリー、部屋の外に用意をしてあるから持って来てくれないかって」

「だから私は部屋の外へ行きました。そこには私がいました」

「……」ヘレンがマリーを見つめてもう一度聞いた。

「誰がいたですって?」

「私です」

「……」

「私そっくりのローズ様がいました」

「ローズ様は私と入れ替わりに、ワゴンにワインとワイングラスを乗せて部屋に入って行きました」

「しばらくして部屋の中から叫び声が聞こえてきたんです。私はどうしようかと迷っていたんですが ……」

「するとその時、ローズ様が叫びながら出て来たんです。『誰か!誰か来て!』って。そしてローズ様は私の顔を見ると、私に……」

「『ヘレンお姉様が倒れたからみんなを呼んで来てちょうだい!早く!』」

「私は言われた通りみんなを呼びに行きました」

「戻って来るとちょうどトムス様がヘレン様を抱えられて、こちらへ向かって来るところでした」

「気がつくと、いつの間にかローズ様はいませんでした」

「翌日 、ヘレン様のお見舞いに来られたローズ様に呼ばれて私に言いました」

「『昨日、私はここにはいなかった。ワインを持って行ったのはあなたよ。わかったわね、マリー』って」

「口止めをされたのね?」

「はい」

泣きじゃくるマリー。
「ごめんなさい、ヘレン様~!」

ヘレンはマリーを優しく抱きしめると「もう少しあなたの体を貸してね?」

ヘレンはマリーの潜在意識から抜け出すとゆっくりと目を開けた。

(マリーの言っていることが真実なら夫のトムスと妹のローズはグルになる)

(あー……。少し思い出して来たわ。私が毒を飲まされた前の晩、トムスは私を激しく求めて来た)

(そして、寝ているときに呟いた言葉も覚えているわ)

(トムスは確かにこう言った。『すまない、ヘレン』と……)

(知っていたからあの時、すでに私が毒を飲まされると知っていたから、だからトムスはあの日、激しく抱いたのね)

(もう二度と私を抱けないのを知っていたから……)

(あー……私は激しく求められて愛されていると勘違いをしていた)

(うふふふふふふふふ……)

「私が納得のいくまで説明をしてもうらうわ、トムス」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】愛人の子を育てろと言われた契約結婚の伯爵夫人、幼なじみに溺愛されて成り上がり、夫を追い出します

深山きらら
恋愛
政略結婚でレンフォード伯爵家に嫁いだセシリア。しかし初夜、夫のルパートから「君を愛するつもりはない」と告げられる。さらに義母から残酷な命令が。「愛人ロザリンドの子を、あなたの子として育てなさい」。屈辱に耐える日々の中、偶然再会した幼なじみの商人リオンが、セシリアの才能を信じて事業を支援してくれる。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...