2 / 50
第一章
②怨霊の抱擁
しおりを挟む
その後、デビンはキャサリンと無事に婚約し、あとは結婚を残すのみとなった。
しかし、そんな二人に水を差す出来事が起こる。
グレイスが亡くなったと連絡が入った。失恋を苦にこの世を儚んで首を吊ったと、デビンはそのことを後で知る。
そしてお腹には子供がいたらしいとも聞いた。
「なぜグレイスは、私に子供がいると言ってくれなかったのか……」うなだれるデビンにキャサリンが耳元で囁く。
「お腹の子が、あなたの子だとは限らないでしょう?」
「え?」その言葉に驚くデビン。
「まさか……グレイスに限ってそんなことはない」
キャサリンがさらに囁く。
「だけど本当のことはグレイスしかわからないんじゃないの。違いますか?」
「それはそうだが……」
「デビン、子供はまた作ればいいじゃない。私と。ね?」
❖
結婚を一週間後に控えた日の夜、デビンの傍らに幽霊が現れた。
就寝中、金縛りにあい、息苦しくなって目をゆっくりと開けたデビン。
視界の端に誰かが立っているのが目に入った。視線をゆっくりと動かすとグレイスが恨めしそうな顔で立っていた。
「ひーっ!」
グレイスがゆっくりとベッドに上がると、横たわるデビンの上に馬乗りになった。
「デビン様……どうして私を捨てたのですか」
「私とあんなに愛しあったではありませんか」
そしてグレイスはしゃがみ込むと、横たわるデビンに抱きついてきた。
「う、う、う……や、やめ…て」
あまりの恐怖にデビンは気を失った。
翌朝、目を覚ますとデビンは裸になっていた。
「な……なんだこれは…」
「まさか私は幽霊と交わってしまったのか?」
「そ、そんな……」
デビンは身震いした。肌に残るかすかなグレイスの匂い。そして幽霊と関係を持ってしまったその事実が、恐ろしさよりも先に深い侮辱をデビンの心に焼き付けた。
(幽霊とはいえ、女性に……襲われるなんて……恥ずかしすぎる)
結婚を控えたデビンはこのままではいけないと思考を巡らす。このことがキャサリンにバレたら、この結婚も台無しになるかもしれない。
「まずい!まずいぞ、それは!」
その時、コールの顔が思い浮かぶ。「確かコールは幽霊の存在について研究していると言っていた。あいつに相談してみよう。今はそれしか思いつかない」
❖
翌朝、ヘルナンデス男爵家のドアノッカーが叩かれた。
使用人が顔を出す。
「あ、これはデビン様」
「やぁ、すまないがコールに用事がある。至急会わせてくれ」
使用人は扉を開けると応接室に案内した。
「少々お待ちください。坊ちゃまをお呼びしてまいりますので」
やや時間をかけて待たされたが文句を言っている場合ではない。コールをじっと待っているとやっと現れた。
「なんだよぉ、こんなに朝早く~」
まだ寝ていたことに驚きのデビンが一応謝る。
「すまん。急用だったんだ。お前に頼みがある」
「頼み?金はないぞ!」
「幽霊が出たんだ!幽霊が!」
その言葉にコールの顔色が変わる。
「何?本当かそれは!」
「あー本当だ!グレイスの幽霊が出たんだ!」
コールはグレイスとデビンのことは知っていた。そしてグレイスが失恋を苦に自殺をしていたことも……。
「グレイスか……怨霊だな」
「わかるのか、コール!まだ私は何も喋っていないんだぞ?」
「お前、自分がしでかしたことへの自覚は全くないんだな」
「何を言ってるのかわからんがとにかく聞いてくれコール……」
しかし、そんな二人に水を差す出来事が起こる。
グレイスが亡くなったと連絡が入った。失恋を苦にこの世を儚んで首を吊ったと、デビンはそのことを後で知る。
そしてお腹には子供がいたらしいとも聞いた。
「なぜグレイスは、私に子供がいると言ってくれなかったのか……」うなだれるデビンにキャサリンが耳元で囁く。
「お腹の子が、あなたの子だとは限らないでしょう?」
「え?」その言葉に驚くデビン。
「まさか……グレイスに限ってそんなことはない」
キャサリンがさらに囁く。
「だけど本当のことはグレイスしかわからないんじゃないの。違いますか?」
「それはそうだが……」
「デビン、子供はまた作ればいいじゃない。私と。ね?」
❖
結婚を一週間後に控えた日の夜、デビンの傍らに幽霊が現れた。
就寝中、金縛りにあい、息苦しくなって目をゆっくりと開けたデビン。
視界の端に誰かが立っているのが目に入った。視線をゆっくりと動かすとグレイスが恨めしそうな顔で立っていた。
「ひーっ!」
グレイスがゆっくりとベッドに上がると、横たわるデビンの上に馬乗りになった。
「デビン様……どうして私を捨てたのですか」
「私とあんなに愛しあったではありませんか」
そしてグレイスはしゃがみ込むと、横たわるデビンに抱きついてきた。
「う、う、う……や、やめ…て」
あまりの恐怖にデビンは気を失った。
翌朝、目を覚ますとデビンは裸になっていた。
「な……なんだこれは…」
「まさか私は幽霊と交わってしまったのか?」
「そ、そんな……」
デビンは身震いした。肌に残るかすかなグレイスの匂い。そして幽霊と関係を持ってしまったその事実が、恐ろしさよりも先に深い侮辱をデビンの心に焼き付けた。
(幽霊とはいえ、女性に……襲われるなんて……恥ずかしすぎる)
結婚を控えたデビンはこのままではいけないと思考を巡らす。このことがキャサリンにバレたら、この結婚も台無しになるかもしれない。
「まずい!まずいぞ、それは!」
その時、コールの顔が思い浮かぶ。「確かコールは幽霊の存在について研究していると言っていた。あいつに相談してみよう。今はそれしか思いつかない」
❖
翌朝、ヘルナンデス男爵家のドアノッカーが叩かれた。
使用人が顔を出す。
「あ、これはデビン様」
「やぁ、すまないがコールに用事がある。至急会わせてくれ」
使用人は扉を開けると応接室に案内した。
「少々お待ちください。坊ちゃまをお呼びしてまいりますので」
やや時間をかけて待たされたが文句を言っている場合ではない。コールをじっと待っているとやっと現れた。
「なんだよぉ、こんなに朝早く~」
まだ寝ていたことに驚きのデビンが一応謝る。
「すまん。急用だったんだ。お前に頼みがある」
「頼み?金はないぞ!」
「幽霊が出たんだ!幽霊が!」
その言葉にコールの顔色が変わる。
「何?本当かそれは!」
「あー本当だ!グレイスの幽霊が出たんだ!」
コールはグレイスとデビンのことは知っていた。そしてグレイスが失恋を苦に自殺をしていたことも……。
「グレイスか……怨霊だな」
「わかるのか、コール!まだ私は何も喋っていないんだぞ?」
「お前、自分がしでかしたことへの自覚は全くないんだな」
「何を言ってるのかわからんがとにかく聞いてくれコール……」
1
あなたにおすすめの小説
愛を忘れた令嬢が平民に扮した公爵子息様に娶られる話
rifa
恋愛
今まで虐げられ続けて育ち、愛を忘れてしまった男爵令嬢のミレー。
彼女の義妹・アリサは、社交パーティーで出会ったオリヴァーという公爵家の息子に魅了され、ミレーという義姉がいることを一層よく思わないようになる。
そこでミレーを暴漢に襲わせ、あわよくば亡き者にしようと企んでいたが、それを下町に住むグランという青年に助けられ失敗し、ミレーはグランの家で保護され、そのまま一緒に暮らすようになる。
そしてそのグランこそがアリサが結婚を望んだオリヴァーであり、ミレーと婚約することになる男性だった。
やがてグランが実は公爵家の人間であったと知ったミレーは、公爵家でオリヴァーの婚約者として暮らすことになる。
だが、ミレーを虐げ傷つけてきたアリサたちを許しはしないと、オリヴァーは密かに仕返しを目論んでいた。
※アリサは最後痛い目を見るので、アリサのファンは閲覧をオススメしません。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる