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第一章
④コールの告白
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深夜、ウォーカー男爵家の屋敷を目指して白い煙の渦が冷気を撒き散らしながら突き進んでいた。
『デビン様……デビン様……愛しのデビン様ぁぁぁ~~~』
白い煙は屋敷の壁をすり抜けると階段を登っていく。そして一番奥の部屋のドアをすり抜け、天蓋付きのベッドの前で浮遊し、やがて人型になりグレイスの姿になった。
『デビン様……私のデビン様……』
ベッドで眠るデビンの足元から布団の中に入っていくグレイス。
『デビン様……今宵も、私と良い夢を見ましょうぞ……』
足から、膝、腰、お腹、胸……そして首……そして唇へ。
少しづつ少しづつ這い上がっていくグレイス。
その時、グレイスの幽体が力強く抱きしめられた。
『デビン様……え?』
グレイスの目の前に知らない顔があった。
『……誰だ?お前は』
「やだなぁ、コールだよ、コール」
『……コール?どうしてお前がここに?デビン様は?デビン様はどこ?』
グレイスはコールの腕から逃れようとしたが、がっつりと掴まれて抜け出せなかった。あがくグレイスにコールが声をかける。
「私と話をしようグレイス」
『お前と話ことなどない』
「ねぇグレイス、デビンのどこが好きなの?」
『全てだ』
「全て、かぁ。……二股も?」
『え?』
「君とキャサリンを天秤にかけて値踏みするところ?」
『……』
「相手の見た目や性格なんて気にしないで、家格で比べたり、跡取りかどうかで結婚相手を決めるところ?」
『……』
「深い関係になったのに、いらなくなったら簡単に捨ててしまうところ?」
『……』
「それとも、床上手なところが良かったの?」
『……』
「子供ができてたんでしょ?」
『……妊娠は……してなかった』
グレイスの頬に雫がおちた。
『子供ができていたなら……自殺なんてしないわ』
コールがグレイスの顔を見た。彼女の表情は苦痛と悲しみで歪んでいた。そして目から涙が次々とこぼれ落ちて来た。
グレイスの口調が、少し人間味を帯びて来る。
『デビンは私にとって初めての人だったの。初めての人を恋慕っちゃいけないの?ねぇ』
コールは諭すように優しく返事をした。
「そんなことないよ。それでいいんだ。だけどそれは生きている間だけのこと」
「君はもう死んでいるんだ。天国へ行かなくちゃ。このままこの世に残っていても君が辛いだけだよ?」
「そしてデビンに取り付いても、彼を不幸にするのと同時に、君も不幸になるんだ」
グレイスが大粒の涙をこぼし始めた。
『だって私はもっともっと愛されたい』
『生きていればもっともっと愛されたはずなの。そんなこと考えちゃいけないの?』
『女がそんなことを考えると、はしたないの?ねぇコール!答えてよ!』
「グレイス、君は自分のことばかり言うんだね」
コールは起き上がるとグレイスを自分の隣に座らせた。
「君は覚えているか、中等部三年生の時、君の下駄箱に手紙が入っていただろう?」
『……手紙?』
「あぁ、君に対する愛の告白を記した手紙だよ」
『……いたずらで、もらったことはあるわ』
「いたずら?あの手紙は私が書いたんだ」
『え?コールが?』
「勇気を出して君に愛の告白をした。だけど君は手紙を読むなりゴミ箱に捨てたよね?」
『……』
「高等部三年生の時、君の机の中に手紙を入れておいたんだが、君は知らないか?」
『……あったけど、それだって私を馬鹿にするいたずらだもん』
「中等部の時も高等部の時も、君は手紙を最後まで読んではくれなかった」
『だって……いたずらだって分かってたから』
「最後まで読んでくれていれば……私の名前を見つけたはずだ」
『…まさか本当にコールがあの手紙を私にくれたの?』
「愛しのグレイスへ……手紙の書き出しにそう書いてなかったかい?」
『もう、覚えていないわ』
「私は君のことが大好きだった。あの頃も、そして今もだ」
『それなら……口で言ってくれないと……手紙だといたずらだと思っちゃうわ……』
「思春期には、恥ずかしくて手紙じゃないと言えない男だっているんだよ。グレイス、今更だけど言わせて欲しい。君が好きだ。いや好きだったよ、グレイス」
『コール……』
「グレイス、お願いがある。来世で生まれ変わったら、私と結婚してほしい」
『……コール』
「君は先に天国へ行って私を待っていてくれないか」
『……分かったわ…コール。私、成仏します』
「本当かい?グレイス」
『ええ』
その時、天井に白く大きなホールが渦巻き、グレイスは吸い込まれるように浮かび上がった。
これで無事、グレイスを浄霊できると安心した瞬間、ホールが閉まる間際にグレイスの声が響いた。
「来世で必ず待っているわ。でも、あまり遅れたら探しに行くからね」
そう言ってグレイスは天国へと旅立った。
『デビン様……デビン様……愛しのデビン様ぁぁぁ~~~』
白い煙は屋敷の壁をすり抜けると階段を登っていく。そして一番奥の部屋のドアをすり抜け、天蓋付きのベッドの前で浮遊し、やがて人型になりグレイスの姿になった。
『デビン様……私のデビン様……』
ベッドで眠るデビンの足元から布団の中に入っていくグレイス。
『デビン様……今宵も、私と良い夢を見ましょうぞ……』
足から、膝、腰、お腹、胸……そして首……そして唇へ。
少しづつ少しづつ這い上がっていくグレイス。
その時、グレイスの幽体が力強く抱きしめられた。
『デビン様……え?』
グレイスの目の前に知らない顔があった。
『……誰だ?お前は』
「やだなぁ、コールだよ、コール」
『……コール?どうしてお前がここに?デビン様は?デビン様はどこ?』
グレイスはコールの腕から逃れようとしたが、がっつりと掴まれて抜け出せなかった。あがくグレイスにコールが声をかける。
「私と話をしようグレイス」
『お前と話ことなどない』
「ねぇグレイス、デビンのどこが好きなの?」
『全てだ』
「全て、かぁ。……二股も?」
『え?』
「君とキャサリンを天秤にかけて値踏みするところ?」
『……』
「相手の見た目や性格なんて気にしないで、家格で比べたり、跡取りかどうかで結婚相手を決めるところ?」
『……』
「深い関係になったのに、いらなくなったら簡単に捨ててしまうところ?」
『……』
「それとも、床上手なところが良かったの?」
『……』
「子供ができてたんでしょ?」
『……妊娠は……してなかった』
グレイスの頬に雫がおちた。
『子供ができていたなら……自殺なんてしないわ』
コールがグレイスの顔を見た。彼女の表情は苦痛と悲しみで歪んでいた。そして目から涙が次々とこぼれ落ちて来た。
グレイスの口調が、少し人間味を帯びて来る。
『デビンは私にとって初めての人だったの。初めての人を恋慕っちゃいけないの?ねぇ』
コールは諭すように優しく返事をした。
「そんなことないよ。それでいいんだ。だけどそれは生きている間だけのこと」
「君はもう死んでいるんだ。天国へ行かなくちゃ。このままこの世に残っていても君が辛いだけだよ?」
「そしてデビンに取り付いても、彼を不幸にするのと同時に、君も不幸になるんだ」
グレイスが大粒の涙をこぼし始めた。
『だって私はもっともっと愛されたい』
『生きていればもっともっと愛されたはずなの。そんなこと考えちゃいけないの?』
『女がそんなことを考えると、はしたないの?ねぇコール!答えてよ!』
「グレイス、君は自分のことばかり言うんだね」
コールは起き上がるとグレイスを自分の隣に座らせた。
「君は覚えているか、中等部三年生の時、君の下駄箱に手紙が入っていただろう?」
『……手紙?』
「あぁ、君に対する愛の告白を記した手紙だよ」
『……いたずらで、もらったことはあるわ』
「いたずら?あの手紙は私が書いたんだ」
『え?コールが?』
「勇気を出して君に愛の告白をした。だけど君は手紙を読むなりゴミ箱に捨てたよね?」
『……』
「高等部三年生の時、君の机の中に手紙を入れておいたんだが、君は知らないか?」
『……あったけど、それだって私を馬鹿にするいたずらだもん』
「中等部の時も高等部の時も、君は手紙を最後まで読んではくれなかった」
『だって……いたずらだって分かってたから』
「最後まで読んでくれていれば……私の名前を見つけたはずだ」
『…まさか本当にコールがあの手紙を私にくれたの?』
「愛しのグレイスへ……手紙の書き出しにそう書いてなかったかい?」
『もう、覚えていないわ』
「私は君のことが大好きだった。あの頃も、そして今もだ」
『それなら……口で言ってくれないと……手紙だといたずらだと思っちゃうわ……』
「思春期には、恥ずかしくて手紙じゃないと言えない男だっているんだよ。グレイス、今更だけど言わせて欲しい。君が好きだ。いや好きだったよ、グレイス」
『コール……』
「グレイス、お願いがある。来世で生まれ変わったら、私と結婚してほしい」
『……コール』
「君は先に天国へ行って私を待っていてくれないか」
『……分かったわ…コール。私、成仏します』
「本当かい?グレイス」
『ええ』
その時、天井に白く大きなホールが渦巻き、グレイスは吸い込まれるように浮かび上がった。
これで無事、グレイスを浄霊できると安心した瞬間、ホールが閉まる間際にグレイスの声が響いた。
「来世で必ず待っているわ。でも、あまり遅れたら探しに行くからね」
そう言ってグレイスは天国へと旅立った。
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