《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第二章

⑦パトリシアとの出会い

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コールはそんなパトリシアに背を向け、早足でその場を立ち去った。

しかし、背中に突き刺さるような彼女の視線と、「田舎で待ってる人がいた」という言葉が、頭から離れない。

​「まさか……田舎って天国のことじゃないだろうな。……そんなわけないよな」

​コールはそう自身に言い聞かせた。グレイスの幽霊は成仏し、来世で再会を約束した。だからこの世に戻って来ることはないと。





​翌日、コールは図書館へ向かった。読書に集中しようとしたが、どうにも心は落ち着かない。

​何気なく窓の外へ目をやると、図書館前の塀の側に見覚えのある女性が塀にもたれて立っていた。

パトリシア・ライトだった。彼女は道行く人を眺めていたが、時折、図書館の入り口に視線を投げかけていた。

​「まさか、私をつけてきているのか?」

​コールは慌てて本で顔を隠し、静かに立ち上がって裏口から退出した。

​裏通りを抜け、人通りの少ない道を歩き始めたとき、突然、背後から小走りに追いつく足音が聞こえた。

​「コールさん!」

​振り返ると、息を切らしたパトリシアが立っていた。

コールはこの女の子に不気味さを感じて質問した。
​「君はどうしてここにいるんだ?」
「だって、せっかく助けてもらったのに、まだちゃんとお礼をしてませんし!」

パトリシアは両手を胸の前で合わせ、困ったようにコールを見つめた。

​「お礼ならもういい。本当にいいから」
​「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。コールさんは私の命の恩人なんですから」
「命の恩人だなんて……大げさだよ」

​パトリシアはふと笑みを消し、コールの目を見て語り始めた。

​「『後から行くから先に行って待っててくれ』って約束してくれた人がいたんですけど、私、待ちきれなくて……だから、来ちゃったんです」

​「……」コールは真っ青になる。

​「あの時、別れ際、あなたは私に言ったんです。『来世で生まれ変わったら、私と結婚してほしい』って」

​コールは息を飲んだ。周囲の喧騒が遠ざかり、世界から色が無くなったように感じた。

​「その人、ちょっと口下手で、愛を手紙でしか伝えられない人でした。でも、私はその手紙を読まずに捨ててしまって……ずっと、後悔しているんです」

​パトリシアは、三年前、コールがグレイスに打ち明けた過去の秘密を、まるで見てきたかのように語った。

​「ねぇ、コールさん。天国は、とっても退屈で寒かったのよ」❨自殺者は寒冷地に住まわされる❩

​パトリシアはコールの手をそっと取り、その体温を確かめるように握った。

​「だから、もう二度と私を一人にしないでください」

​コールは、目の前の女性がグレイスであることを確信した。

​「……グレイスなんだな?」

​コールがその名前を口にした瞬間、パトリシアの顔に、満開の薔薇のような笑みが浮かんだ。

「コール。二人で一緒に暮らしましょう」

もうコールには抗う力が残っていなかった。










    
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