《完結》運命の人と気づかずに通り過ぎる人もいれば、すぐに気づく人もいる。でも大概は後で気づく。

ぜらちん黒糖

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第三章 番外編

⑱判決

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一ヶ月後

 裁判長が口を開く。

「被告人、八木新一」

 八木新一が被告人席で立ち上がり、裁判長の言葉に耳を傾ける。

「本件について、当裁判所は以下のとおり判決します」

 判決主文を読み上げた後、裁判長が判決を言い渡す。

「主文。被告人を、懲役十年に処する」

「理由を述べます」

「被告人は、令和X年X月X日、東京都内の葬儀場において、殺意をもって被害者山田龍蔵の腹部を刃物で突き刺し、その生命に危険を及ぼしたものであり、その犯行は極めて悪質かつ危険なものであります」

「被害者は一命を取り留めたものの、重篤な傷害を負い、その苦痛は甚大であり、事件が被害者に与えた影響は多大なものであります」

「被告人の犯行は、亡くなった恋人への復讐という動機によるもので、その背景には深い悲しみや憤りがあったことは理解できます」

「しかしながら、いかなる理由があるにせよ、自らの手で他者の命を奪おうとすることは、決して許される行為ではありません」

「また、被告人は、本件犯行後、事件現場から逃走し、近隣住民を不安と混乱、恐怖を招いた上、さらに事件の真相究明を遅らせ、捜査機関の妨げを起こしました」

「しかし、その逃亡中にビルの屋上において自殺を図ろうとしていた女性に対し、自らの特異な行動で自殺を思いとどまらせるという一幕がありました」

「その行為自体は評価されるべき側面もありますが、逃亡中の出来事であり、今回の犯行を免責するものではありません」

「これらの事情を考慮し、被告人が初犯であり、犯行後に自身の行為を反省し、更生を誓っていること、被害者との示談は成立していないものの、その回復を願う意思を示していることなど、被告人に有利な事情も十分に考慮しました」

「しかしながら、本件犯行が社会に与えた影響を鑑みれば、実刑は免れず、懲役十年をもって相当と判断するものです」

「以上で、判決言い渡しを終わります」

八木新一は表情を変えずに湯沢弁護士にお辞儀をして刑務官に促され退廷していった。


 

八年後、東京校外の一軒家

庭の物干し竿に洗濯物を干している片桐博子(旧姓今川)は青空を見上げながら物思いにふける。

私は結局、自殺をしなかった。今では本当に自殺をしなくて良かったと思っている。

あの屋上での出来事の後、私は八木新一と一緒に屋上にいたので警察で事情聴取を受けることになった。

その時、私を担当した刑事さんは、私の話を、この八木新一の事件とは関係のない私の悩みを少し聞いてくれて……

その後、私はその刑事さんに悩み事を相談している内に、自然とお付き合いをするようになりました。

そして私は刑事さんを好きになり、告白して、結ばれました。

八木新一は、違う意味で私の運命の人でした。

彼が、あの日、あのビルの屋上に現れなければ、今の主人と出会うこともありませんでした。



縁側で遊ぶ子どもたちが声を上げる。

「お母さん、ごはんまーだ?」

「はいはい、もうちょっと待ってねーー」

「はーい」

「あ、それ僕んだぞー」

「違う!僕のだー!」

「お母さーん、お兄ちゃんが僕のおもちゃー取ったーー」



八木新一はまだ塀の中にいます。

彼が、私に言った最後の言葉……

「お前、死ぬなよ」

その言葉は今も私の心に残っています……







 
                
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