《完結》ありがとう神様!スキル【リセット】を使って異世界を生き抜きます!

ぜらちん黒糖

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㉑ザード

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そろそろ閉店間際のお食事処『カオリン』

店内の玄関近くに立っていたカオリンは来客の気配を感じて玄関の戸を開けた。

営業スマイルのカオリン。

「お帰りなさいませ……」

客の顔を見て、言葉が詰まるカオリン。

「ザード!」

「ただいま、カオリン」

そう言って店の中に入って行った。

店の奥にいるセンフーと目が合った。鞘から素早く刀を抜くセンフーだったが、ザードは刀を抜かなかった。

「ここ座っていいか?」

センフーの前の席を指差すザード。

センフーは抜いた刀の切先を地面につけたまま、ザードを睨みつける。

ザードがもう一度聞く。

「ここに座ってもいいか?」

「どういうつもりだ?なにしにきた?」

センフーは抜いた刀を鞘に収めて言った。

「座れよ。座りたきゃ」

ザードは無言で座った。

カオリンが慌ててやって来て、「ザード帰って」と言いかけたとき、

「俺もおすすめ定食と酒をくれないか?金は持ってる」

センフーの顔を見るカオリン。

頷くセンフーを見て、カオリンは厨房へ注文しに行った。

ザードの目を見つつ、おちょこで酒をぐいっと飲むセンフー。

飲み干したおちょこをザードの前において

「ザードって呼んでいいかい?」

頷くザード。センフーが置いたおちょこに酒をつぎ「飲みなよ。」
と声をかけた。
 
ザードは一気に飲み干した。
暫く無言の間が過ぎる。

ザードが口を開く……

「この前は悪かった。切りかかって」

「あ……ああ」

ザードに予想外のことを言われて、言葉に詰まるセンフー。

そこへカオリンがおすすめ定食とお酒を持ってやって来た。

すぐにガツガツと食べ始めるザード。

「お、おい。そ、そんなに慌てて食わなくても、取り上げたりしねーから、ゆっくり食え」

「す、すまない。久しぶりのまともな飯だったから……」

「そ、そうか」

そう言ってセンフーはザードが食べ終わるのを待っていた。

ザードが食事を食べ終え、ちょびりちょびりとお酒を飲み始めたのを見てセンフーは声をかけた。

「で?弟の敵を取りに来たのか?」

センフーがゆっくりと立ち上がった。

「表へ出ろ。方をつけよう」

ザードがカオリンを見る。

「この酒、温めてくれないか」

カオリンがセンフーを見た。

「おい!お前!」

ザードがなんとも切なそうな顔をしてセンフーを見た。

「カオリン。奴の言う通りにしてやってくれ。末期の酒になるかもしれんからな」

そう言ってセンフーは諦めて座り直した。

温められた酒を飲むザード。

「美味い。これは……美味い。」目をつむり「美味い」

温めた酒に興味をそそられたセンフーはカオリンを見て、

「俺にも同じ奴をくれ」

運ばれて来た酒を飲むセンフー。

「美味いな、これ」

カオリンも興味を引かれ飲んでみる。

「美味しい。体が温まるわね」



数時間後ぐでんぐでんに酔った3人。

「それでどうなった?」

「カオリンが俺たちの掘った落とし穴に」

「うんうん」

「笑顔で走って来たカオリンが笑ったまま落っこちた。こんな顔してな」

ザードが変顔する。

大笑いするセンフー。

怒るカオリン。

「やめてよ!ザード!」

「落とし穴には魔獣のクソを入れてあったので、カオリンはクソまみれよ」

「ザード!」

「落とし穴から這い上がって来たカオリンの怖いことと言ったらなかったぜ。それからカオリンは俺たち悪ガキを正座させて説教はじめてな」

涙目のセンフーが「クソまみれのままでか?」

「ああ。で、悪ガキの一人がな、こう言ったんだ」

「なんて言ったの?そいつ」

「お前、臭すぎてお前の説教が頭に入ってこねえよって。カオリンは、誰のせいでこうなったと思ってるの!って泣きながら俺たちを追い掛け回した」

ザードがカオリンを見つめて、

「あの時は悪かった。謝るよ、カオリン」

「もう時効よ。許すわ」

それを見ていたセンフーは大笑いしながら「犯人と被害者が和解したあ。」と言ってまた笑いだした。

3人は一晩中飲み明かした。



ザードはいなかった。
テーブルの上には金貨3枚が置いてあった。


 それから暫くしてセンフーとカオリンに手紙が届いた。


センフーとカオリンへ

この前の夜は楽しかった。あんなに楽しかったのは久しぶりだったよ。

センフーと飲んで思ったのは、人間も俺たち魔族となんら変らないってことだ。

センフーが俺に弟の敵討ちに来たのかと聞いたがそれは違う。

弟のサイラスはサキュバスを誘拐して、闇商人に売り飛ばしていた犯罪者だ。

センフーが殺さなくても、あいつはどうせ死罪になっていただろう。

俺が追い掛けていたのはサイラスでもセンフーでもない。俺はカオリンを追い掛けていたんだ。

弟のサイラスがサキュバスを誘拐して闇商人に売り飛ばしていることを知った俺は、部下に弟の居場所を聞いた。

すると部下は弟がカオリンを追って出て行ったと答えた。  

俺はすぐにあいつの残留思念を追い掛け、追いついた時にはサイラスの首と胴は離れていた。

まだあいつは事切れて間もなかったので、残留思念を読みとることが出来た。

あいつの目に最後に移っていたのはセンフーと、その後ろに立つカオリンだった。

すぐに追い掛けかけたかったが、サイラスの後始末が残っていたので行けなかった。

俺は魔国に戻り闇商人をあぶり出し、被害にあったサキュバス達を助け出した。

そしてサイラスの兄として責任を取り、魔国特殊部隊を除隊した。
 
王国に潜入してセンフーとカオリンはすぐに見つけられた。
 
カオリンはセンフーに連れ去られたのかもしれないと思っていたが違った。

遠目に見てもお前達二人は幸せそうに見えた。だがサイラスほどの腕の立つ男の首をハネたセンフーに、興味が湧いて試してみた。

本気で切りかかったのだが、受け止められてしまった。サイラスを倒せるはずだと納得した。

サイラスと俺は血は繋がっていない。継母の連れ子だ。

センフー。カオリンと二人で幸せに暮らしてくれ。

それからセンフーは知らないだろうが魔族の寿命は長い。将来センフーが老いぼれて老衰死したらカオリンを迎えに行くからその時までカオリンをお前に預ける。

カオリン、センフーが死んだら俺と結婚してくれ。

           ザード


手紙を読んだ後、センフーがカオリンに言った。淋しそうに……

「カオリン。よかったな。第二の人生が用意されていて」

「もう。センフーのバカ」

私が愛しているのはセンフーだけ。でも保険(ザード)があると、これからの人生に安心感があるわね、と思うカオリンだった。

二人は抱きしめ合い、

「愛してるぜ、カオリン」

「私も愛しているわ、センフー」

少しだけ心の中にズレのある幸せな夫婦だった。
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