愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖

文字の大きさ
29 / 114
第三章 もしも、あの時、自然消滅していなかったら……

㉙アガサへの手紙

クロッグとアガサはギャラン伯爵邸の玄関扉の前に立っていた。

玄関扉には黒ずんだ鉄製のドアノッカーがついている。

クロッグはドアノッカーを掴むと一度アガサの顔を見て、思い切り二度叩いた。

ゴンッ!ゴンッ!とずっしりした重みが伴う音が、屋敷の奥まで響き渡り、もう後戻りはできないぞという音に聞こえた。

扉がゆっくりと開いた。使用人の女性がアガサの顔を見てどこか懐かしそうな寂しそうな目をして、

「いらっしゃいませクロッグ様、お帰りなさいませアガサ様」

扉の向こうにはギャラン伯爵が立っていた。

伯爵は二人に声をかける。

「短い逃避行だったな、アガサ」

そういうと、ギャラン伯爵は屋敷の奥に姿を消した。

使用人のメリッサがアガサに声をかける。

「どうぞこちらへ、控え室はこちらになります」

メリッサについて行くと小さな部屋に通された。

とりあえず椅子に座るアガサとクロッグ。緊張しているのか二人はまだ一言も言葉を交わしていない。

そこへメリッサが飲み物を持って戻ってきた。

「どうぞお飲みください」

「ありがとう、メリッサ」

メリッサが無言で手紙を差し出す。

手紙を受け取ってメリッサの顔を見るアガサ。

「これは?」

「旦那様からのお手紙です」

「え?お父様からの?」

「では失礼いたします」

メリッサが部屋を出て、手紙を開かず手に持ったまま椅子に座るアガサにクロッグが声をかける。

「ねえ、なんて書いてあるの?読んでみなよ、アガサ」

「うん」

アガサは手紙をゆっくりと開いた瞬間、泣き崩れた。

その様に驚き、クロッグが床に落ちた手紙を拾って、恐る恐る読んでみた。

手紙には 一言……

『すまなかった、アガサ』

そう書いてあった。

クロッグは泣いているアガサにそっとハンカチを差し出した。




    

あなたにおすすめの小説

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

【完結】今さら執着されても困ります

リリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」 婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった―― アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。 いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。 蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。 ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。 「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」 ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。 彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。 一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。 ・全体的に暗い内容です。 ・注意喚起を含む章は※を付けています。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

はい!喜んで!

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のシリルは、婚約者から婚約破棄を告げられる。  時を同じくして、侯爵令嬢のリエルも、婚約者から婚約破棄を告げられる。  彼女たちはにっこりと微笑んで答えた。 「はい。喜んで」