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第三章 もしも、あの時、自然消滅していなかったら……
㉚司会進行係セルフ
応接室に集まったクロッグたち。
長テーブルに対面して座るギャラン伯爵とヤンセン伯爵は、お互いに目を合わせようとしない。ヤンセン伯爵の後ろには執事のセルフが立っている。
ギャラン伯爵の後ろには誰もいない。
中央の長テーブルの上座には前、少し迷惑そうな顔をして座るリヴァイダル公爵家当主のダンバルが座っていた。
反対の長テーブルの後ろ側にクロッグとアガサが座っている。そして、二人の後ろにはループが立っていた。
ヤンセン伯爵は、ループを見た時に、ついに現れたか、影の立案者めと思った。同時にループを解雇することをこの時決めた。
ループのしていることがたとえ正しかろうと、雇い主の意に反する行動を取ったループを許すことはできないと考えたからだ。
ヤンセン伯爵が口を開く。
「誰が、この話し合いを進行するんだ?」
ギャラン伯爵が「私がするつもりだが?」
ここで初めて二人は目を合わせる。
「ふふん」鼻で笑うヤンセン伯爵。
「なんだ、私では不服か?」
「あたりまえだ。お前の都合の良い方に話を進めるつもりなんだろう?」
「なに!」
「なんだ?やる気か?」
その時、公爵が口を開く。
「こら!」
びくっとして公爵を見る両伯爵。
「ヤンセン」
「はい」
「君の後ろに立っている男は君の執事か?」
「はい……そうですが」
「名前は?」
「セルフでございます」
公爵がセルフに声をかける。
「セルフ、君が進行係をやってくれ、君、利口そうな顔をしている」
セルフが戸惑いながらも引き受ける。
「かしこまりました、公爵様。では失礼して」
セルフは公爵の横に立つと早速、仕事を始めた。
「私はヤンセン伯爵家リスナ様の秘書セルフでございます。皆様、本日はよろしくお願いいたします」
深々とお辞儀をするセルフに、パチパチと拍手する公爵。慌てて他の者たちが拍手をした。パチパチ……
「それでは早速始めます」
セルフは視線をクロッグとアガサに向けて、
「ことの発端はクロッグ様とアガサ様が結婚を申し出されたのが始まりです」
「ヤンセン伯爵様もギャラン伯爵様も結婚を反対されました。お二方、理由をこの場で仰ってください。ではまずはヤンセン伯爵からどうぞ」
少し慌てるヤンセン伯爵。
「理由?」
「そうです。結婚を反対した理由です」
「私は反対などしておらん」
まさかの発言にクロッグが驚く。
「私はアガサが嫁に来るなら結婚を許すと言った。反対したのはあちらさんの方だ」
あちらさん呼ばわりされたギャラン伯爵はすぐに手を上げ、
「発言を求める」
セルフが返事をする。「どうぞ」
「私は反対などしておらん。クロッグが婿養子に来るなら結婚を許すと、クロッグにも直接言ってある」
みんながクロッグを見る。セルフがクロッグに尋ねる。
「クロッグ様。ギャラン伯爵の言われていることは本当ですか?」
クロッグは緊張の面持ちで話し出す。
「本当です。学校の帰りにアガサが屋敷に入って行くのを見送って、自分も屋敷に戻ろうとした時に、馬車で戻って来られたギャラン伯爵様に出くわしまして…その時、馬車で屋敷まで送っていただきました」
「私の屋敷に到着して、馬車から降りた時に伯爵から言われました。『君が婿養子に来るなら、アガサとの結婚を認める』と」
セルフが質問をする。
「クロッグ様、やけに詳しく説明をされていましたがそれはいつの話ですか?」
「アガサと付き合い始めた頃で、今から二年くらい前の話です」
「ほう、二年前の話なのに、昨日のようにお話をされていました。少し不自然ではありませんか?」
クロッグは耳を赤くして、
「俺、じゃない、私は、あの、日記をつけておりましたので…時々読み返していました」
シーンとなる中、セルフが口を開く。
「失礼しました。では、二年も間があったのに何もしなかったのはなぜですか?クロッグ様」
クロッグは少し情けない表情で、正直に答える。
「あの頃の私は高等部一年でした。結婚とか具体的な話はずっと先だど思っていたんです」
「それで、そのままにしていたら、気がつくともう三年生になっていて、少し焦りが出始めた頃に、アガサに言われたんです」
「何をですか?」
「今度の休みにお見合いするって……」
「それは、駆け落ちをする何日前でしたか?」
「三日前です」
「ほう、三日前にしては準備がよすぎやしませんか?とても計画的でございましたが?」
口ごもるクロッグ。
「クロッグ様?いかがされましたか?」
「私が手助けしました」
見かねたループが名乗り出る。
後ろ振り向くクロッグが、ループの顔を見てまたセルフの方を見て、
「ループは関係ありません。私がずっと前から計画を立てて実行したんです」と言ったが、セルフは信用せず、
「クロッグ様、このような計画を立てられる人間は二年もの間、問題になることを放って置くことはしないものです。計画したのはループです。クロッグ様、どんなときも嘘はいけません」
「う」と、言い返せないクロッグにループが囁く。
「クロッグ様、かばってくれてありがとうございます。でも私は大丈夫ですから」
そういうとループは話し始めた。
「両伯爵様にご質問があります」
「今から私がする質問にお答え願いたいのですが、いかがでしょうか?」
突然のご指名にギャラン伯爵とヤンセン伯爵は互いを見て、困惑していた。
長テーブルに対面して座るギャラン伯爵とヤンセン伯爵は、お互いに目を合わせようとしない。ヤンセン伯爵の後ろには執事のセルフが立っている。
ギャラン伯爵の後ろには誰もいない。
中央の長テーブルの上座には前、少し迷惑そうな顔をして座るリヴァイダル公爵家当主のダンバルが座っていた。
反対の長テーブルの後ろ側にクロッグとアガサが座っている。そして、二人の後ろにはループが立っていた。
ヤンセン伯爵は、ループを見た時に、ついに現れたか、影の立案者めと思った。同時にループを解雇することをこの時決めた。
ループのしていることがたとえ正しかろうと、雇い主の意に反する行動を取ったループを許すことはできないと考えたからだ。
ヤンセン伯爵が口を開く。
「誰が、この話し合いを進行するんだ?」
ギャラン伯爵が「私がするつもりだが?」
ここで初めて二人は目を合わせる。
「ふふん」鼻で笑うヤンセン伯爵。
「なんだ、私では不服か?」
「あたりまえだ。お前の都合の良い方に話を進めるつもりなんだろう?」
「なに!」
「なんだ?やる気か?」
その時、公爵が口を開く。
「こら!」
びくっとして公爵を見る両伯爵。
「ヤンセン」
「はい」
「君の後ろに立っている男は君の執事か?」
「はい……そうですが」
「名前は?」
「セルフでございます」
公爵がセルフに声をかける。
「セルフ、君が進行係をやってくれ、君、利口そうな顔をしている」
セルフが戸惑いながらも引き受ける。
「かしこまりました、公爵様。では失礼して」
セルフは公爵の横に立つと早速、仕事を始めた。
「私はヤンセン伯爵家リスナ様の秘書セルフでございます。皆様、本日はよろしくお願いいたします」
深々とお辞儀をするセルフに、パチパチと拍手する公爵。慌てて他の者たちが拍手をした。パチパチ……
「それでは早速始めます」
セルフは視線をクロッグとアガサに向けて、
「ことの発端はクロッグ様とアガサ様が結婚を申し出されたのが始まりです」
「ヤンセン伯爵様もギャラン伯爵様も結婚を反対されました。お二方、理由をこの場で仰ってください。ではまずはヤンセン伯爵からどうぞ」
少し慌てるヤンセン伯爵。
「理由?」
「そうです。結婚を反対した理由です」
「私は反対などしておらん」
まさかの発言にクロッグが驚く。
「私はアガサが嫁に来るなら結婚を許すと言った。反対したのはあちらさんの方だ」
あちらさん呼ばわりされたギャラン伯爵はすぐに手を上げ、
「発言を求める」
セルフが返事をする。「どうぞ」
「私は反対などしておらん。クロッグが婿養子に来るなら結婚を許すと、クロッグにも直接言ってある」
みんながクロッグを見る。セルフがクロッグに尋ねる。
「クロッグ様。ギャラン伯爵の言われていることは本当ですか?」
クロッグは緊張の面持ちで話し出す。
「本当です。学校の帰りにアガサが屋敷に入って行くのを見送って、自分も屋敷に戻ろうとした時に、馬車で戻って来られたギャラン伯爵様に出くわしまして…その時、馬車で屋敷まで送っていただきました」
「私の屋敷に到着して、馬車から降りた時に伯爵から言われました。『君が婿養子に来るなら、アガサとの結婚を認める』と」
セルフが質問をする。
「クロッグ様、やけに詳しく説明をされていましたがそれはいつの話ですか?」
「アガサと付き合い始めた頃で、今から二年くらい前の話です」
「ほう、二年前の話なのに、昨日のようにお話をされていました。少し不自然ではありませんか?」
クロッグは耳を赤くして、
「俺、じゃない、私は、あの、日記をつけておりましたので…時々読み返していました」
シーンとなる中、セルフが口を開く。
「失礼しました。では、二年も間があったのに何もしなかったのはなぜですか?クロッグ様」
クロッグは少し情けない表情で、正直に答える。
「あの頃の私は高等部一年でした。結婚とか具体的な話はずっと先だど思っていたんです」
「それで、そのままにしていたら、気がつくともう三年生になっていて、少し焦りが出始めた頃に、アガサに言われたんです」
「何をですか?」
「今度の休みにお見合いするって……」
「それは、駆け落ちをする何日前でしたか?」
「三日前です」
「ほう、三日前にしては準備がよすぎやしませんか?とても計画的でございましたが?」
口ごもるクロッグ。
「クロッグ様?いかがされましたか?」
「私が手助けしました」
見かねたループが名乗り出る。
後ろ振り向くクロッグが、ループの顔を見てまたセルフの方を見て、
「ループは関係ありません。私がずっと前から計画を立てて実行したんです」と言ったが、セルフは信用せず、
「クロッグ様、このような計画を立てられる人間は二年もの間、問題になることを放って置くことはしないものです。計画したのはループです。クロッグ様、どんなときも嘘はいけません」
「う」と、言い返せないクロッグにループが囁く。
「クロッグ様、かばってくれてありがとうございます。でも私は大丈夫ですから」
そういうとループは話し始めた。
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