《完結》辱めを受けた女は復讐の狂気に人生をかける

ぜらちん黒糖

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第二章

⑬嘘つきの記念日

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翔太は仕事の帰りにフラワーショップへ寄って、バラの花12本を束にしてもらい、続いて、ケーキ屋にも寄った。そこで、苺のショートケーキを2つ買うと、自転車に乗って自宅へ向かった。

アパートの階段を上がる時、105号室から純子が出てきた。よそ行きの服装をしていた。

階段の途中で立ち止まった翔太が声をかける。

「今から歓迎会に行くんですか?」

「ええ、翔太さんも今から、頑張るのね?」

純子は翔太の持つ薔薇の花束とケーキの入った小さな箱を見つめた。

「まあ、ね、じゃ」

翔太は、なんとなく、気まずくて階段を駆け上った。

自宅の玄関をノックしてみた。普段は、自分で鍵を開けて入るのだが、美知留がドアを開けてくれるのを待った。

しかし、ドアは開かなかった。仕方なく​自分の鍵でそっとドアを開けて部屋に入ると、美知留は奥の部屋で洗濯物を畳んでいた。

(なんだ、聞こえなかっただけか……)

​翔太は美知留の前に立ち、薔薇の花束を差し出した。

​「はい、これ」

突然現れた翔太に驚いた表情を見せたが、すぐに​美知留は笑顔で返事をした。

​「ありがとう、翔太!」

​美知留は、翔太が、今日は何の日か知っているかどうかを試すように、笑顔で花束を抱えたまま尋ねた。

​「ねえ、翔太。今日が何の日か言ってみて?」

​翔太は、純子に教えられた言葉をそのまま口にした。 

​「今日は、俺と美知留が初めて結ばれた日だ」

​美知留の視線が一瞬、翔太から外れた。それでも、優しく微笑んで「ありがとう」と礼を言った。

​夕食後、翔太が買ってきた苺のショートケーキを2人で仲良く食べた。

「この苺のショートケーキ、味楽堂のお店でしょ?」

「うん、あ、美知留、お前、時々、味楽堂のケーキを買って食べてるな?」 

「あ、バレちゃった?」

2人の笑い声が食堂に響く。幸せの夫婦の笑い声だった。

翔太は美知留との、このやり取りにほっとして、心のわだかまりが一時的に吹き飛んでいた。

「じゃ、俺、風呂に入ってくるよ」

「うん、着替え出しておくから」

浴室に入ると、すぐに頭を洗い始める。シャンプーで優しく洗ってシャワーで洗い流す。

翔太の体が固まる。純子との約束を思い出したからだ。

(デートか……)

そして思い出したように頭をシャワーで洗い流す。顔と体を洗って、ゆっくりと湯船につかり、考える翔太。

(純子さんか……名前にさんをつけると、陽子さんを思い出してしまうな。……陽子さん、どこへ行ったんだろう)

夜、のんびりとソファに座ってテレビを見ていたら、美知留がお風呂から上がってきた。どうやら部屋で髪を乾かすようだ。

ドライヤーで髪を乾かしている美知留を見つめながら、テレビを消す翔太。

ドライヤーを止めて、美知留が言った。

「ごめん、テレビの音が聞こえないよね」

そう言って洗面所へ行こうとしたが、翔太が呼び止める。

「いいよ、ここで。テレビよりお前を見ている方が楽しい……」

少しホスト時代の言い方に近かったのか美知留が笑った。

「ホントは今でもホストをやりたかったんじゃないの?」

「ホストか……ホストも嫌いじゃなかったけど、今の生活のほうが俺は好きだな」

「翔太…」

この夜、2人はまた、結ばれた。翔太は罪悪感と安堵感から、いつもより激しく美知留を抱いた。

​どれくらい時間が経っただろうか、ぐっすりと隣で眠る翔太を、美知留は静かに布団から出て、その横に正座して見下ろしていた。

部屋の照明は消え、窓のカーテンから、わずかに月明かりが差し込み、翔太の顔を青白く照らしていた。

​美知留は安心しきって眠る翔太に向かって、ほとんど息のような小さな声で囁いた。

​「……嘘つき」

​美知留は、純子と翔太の仲が急接近している気がして、罠をかけていたのだ。

​純子から、『ご主人、私の歓迎会に欠席するんですって。なんだか用事があるって言ってましたよ』と聞かされた時、突然に閃いてしまったのだ。

だから美知留はこう答えた。

『その日は、私たちが初めて結ばれた記念日なんですよ』って。

​翔太が、その話を今日、自分に答えたということは、2人はとても仲がいいと言うことになる。

(まさか、2人はもともと知り合いなのではないかしら?)

美知留はゆっくりと布団の中に入ると、静かに翔太の隣で眠りについた。




翔太と美知留が激しく抱き合ってきた頃、​その少し前に会社の歓迎会から帰って来たばかりの純子が、2人の真下の部屋に立っていた。

​天井から、また軋む音が聞こえてくる。

​純子は、思わず手に持っていたバッグを床に叩きつけた。

「週に三度も……。人を不幸にしておいて、いい気なものね」

純子の手が、怒りと屈辱で強く握りしめられていた。

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