《完結》護衛騎士ビーネと仮面の下の真実

ぜらちん黒糖

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①秘密クラブ「蜜の味」

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 ベッドの上で天井を見つめながら話をしている二人。

「ビーネ、私たちのこと、奥さんにはバレてないの?」

「ああ、全く問題ない。それより君の方は大丈夫なのか?旦那さん」

「私の方も問題ないわ」

「君の旦那さんも変わっているな」

「どこが?」

「君のように素敵な女性を妻にしながら、そんな妻がこんな夜中に、外出しているのに気にも止めないなんて」

「ふふふ、どんな夫婦にも秘密はあるものなのよ」

「そうかねえ、俺が旦那だったら君をこんな夜中に外には絶対出さないがな」

「まあ、嬉しいこと言ってくれるじゃない?だけどあなたの奥さんだっておかしいと思うわよ?」

「どこが?」

「だってこんないい男を夜一人で飲みに行かせるだなんて、私だったら無理ね。浮気されるんじゃないかと思って 絶対に外に出さないわ」

「ふっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」

 2人は愛し合い 、一つになり、そして自分の家に帰って行った。

 護衛騎士のビーネは公爵令嬢オリオット様の護衛をしている。3人の騎士が3交代でオリオット様を守っている。

 丸1日勤務すると丸2日、休日がある。ビーネは25歳、筋骨隆々の大男である。そして左手薬指には指輪がはまっている。

 交代の騎士がやってきた。

「お疲れビーネ。問題はなかったか?」

「ああ、何もない。後は頼んだぞ、ピンストック」

 そう言うとオリオット様に挨拶をして帰路に着いた。

 家に帰ると下駄箱の上に左手薬指にはめた指輪を外す。

「さて一眠りするか」

 そのままビーネはベッドに沈み込むように横になった。

 ビーネが目を覚ますと外はもう薄暗くなっていた。

 長い髪をうなじの辺りで紐で縛り、紺色のスーツに紺色の靴、シャツも紺色。

「さて出かけるか」

 ビーネは今、秘密クラブ「蜜の味」に入っている。このクラブは既婚者しか入れない、デートクラブだ。

 ビーネは独身だが、相手が人妻なら結婚を求めてきたりはしないだろうと、既婚者と偽ってこのクラブに入っている。

 しかし今、ビーネは1人の女性に心を掴まれている。女性の名前はブルー。とても色気のある女性だ。年はビーネと同じぐらい。恐らく25歳ぐらいだろう。

 結婚などしたいとは思ったことはなかったが、ブルーと出会ってから、この人とできることなら一緒に暮らしたいと強く思うようになっていた。

 ただ相手には旦那も子供もいる。略奪婚などできるはずもない。

 結婚はしたくない。だが女遊びはしたい。それでこのクラブに入ったのに、ビーネは今、ブルーに夢中になりかけていた。


「女将さん、それでは失礼いたします」

「メロン、気をつけて帰るのよ」

「はーい」

 店の女の子メロンが出て行くと、女将のブルーは入り口のドアに鍵をかけた。

 ブルーはこの小さな酒場の経営者である。休みは週に一度。その日は秘密クラブ「蜜の味」に通う日だ。その日が来るのが待ち遠しい。

 ブルーもまた独身であった。ブルーは体の温もりを求めてこのクラブに入った。恋人なんていらない。時々私を抱いてくれる人がいればそれで構わない。そう思っていた。

 だけど今、クラブで知り合ったビーネという男に夢中になりつつある。

 今まで私に結婚しようと迫ったり、近づいてくる男たちは、ほとんどが私を紐にしようという男たちだった。

 私1人に働かせて、自分は遊んで生きていこうとする男ばかりだった。

 しかし秘密クラブ「蜜の味」はそういう紐になるような男は誰一人いない。

 もうすでに男たちには妻がいるのだから。

 きっとクラブにやってくる男たちは妻以外の女の体を、ただ求めているだけなんだろう。

 ブルーは店のテーブル席に座って、1人酒を飲みながら、独り言を言う。

「私がもしもビーネに、私、離婚したからあなたと結婚したい、なんて言ったらあの人、どんな顔するんだろうな」

 最初は体の温もりだけを求めて入ったクラブだったのに、なんだか今は心に隙間風が吹いているような寂しい気分になっていた。





     
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