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第1部 間奏
029 お買い物リベンジ
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「10日ぐらいは切り詰めずに過ごせる額を残して、残りは装備を強化しましょう」
サゴさんの試算だと、1日銅貨50枚もあれば、公衆浴場で汗を流して、帰りにビールをひっかけるくらいの贅沢までできるらしい。
サゴさんはともかく俺たちは基本的に好き好んで飲まないが、生活費は余裕を見ていたほうが安全だ。
銀貨12枚-銅貨50枚×10日=銀貨7枚。これが今回の装備強化費用となる。
前回に比べると増えたけれど、まだまだ中古品中心の生活は続きそうだ。
「すいません、鎧、修理に出したいんですけど」
「ここはただの中古屋だから職人を紹介してやる」
以前買い物をした露天商のおじさんにたずねたが、無理だと言われてしまった。
「まず、これをどうにかしないといけないから、先に買い物を済ませておいて、宿に戻ってていいから」
修理の値段の相場を聞いた後、3人の仲間に告げて、職人の店を訪れる。
「銀貨1枚、3日後」
露天商のおじさん曰く、愛想はないが安くて腕は確かという職人と最低限の会話をして、露天商のところに戻る。
他の3人は会計をすませたところだった。
サゴさんは、百姓一揆みたいな農具から短めの槍に持ち替えたらしい。革張りの円盾、履物も短靴から丈夫そうな革のブーツになっているし、小さな弓と矢筒まで装備している。いっぱしの冒険者という感じだ。
「弓はあったほうがいいですからね。あまり自信はないですけど、練習あるのみです」
チュウジも革張りの円盾を買ったらしい。手のひら側が露出した革の手甲に革のすね当て、革のブーツ、前回は胴と頭にしか防具をつけていなかったが、全て揃えられたらしい。腰に小剣まで下げてる。
「お気に入りの鎖分銅はどこ言ったんだ」
たずねると、チュウジはニッと笑って円盾をかかげる。裏側に軽く巻き付けて収納してある。
「状況に応じて臨機応変に武器を使い分けられてこそ、暗黒騎士というものよ」
とりあえず暗黒騎士と言いたいだけだろとツッコミをいれたくなったが、買い物を済ませていない俺はぐっとこらえる。
ミカもブーツを買ったらしい。盾もこれまでの木の盾から革張りの大盾に買い替えたようだ。武器もメイスに変えたようだ。
「みんなブーツ買ってるから、俺も買おうかな」
「一緒に選んであげるよ」
「サゴ殿、我は影の騎士、人混みはあまり得意ではない。こののろまのグズはミカ殿にまかせて先に戻っていようではないか」
チュウジの罵倒つき気遣いで俺とミカで買い物することになった。
「チュウジくん、いい子だよね。あんな弟ほしいな」
「いや、高1にしてなお重度の中二病だぞ」
言動も見かけも中2な奴であるが、実は高1だったということを先日聞いた。
「そこもまた可愛いところ、やっぱりシカタ×チュウジが一番だよね」
「そこ、同意を求められても困るんですけど」
「剣が欲しかったんだけど、斧って使ってみると案外面白いんだよね。柄が長くて持つところが調整きくから片手でも両手でも使えるし」
そんな話をしていると、「ちょうど良いのが入荷している」と戦斧を勧められた。
ほぼ新品で銀貨2枚で良いらしい。
「ほぼ新品で中古に出るって、なんか呪われてるとかあるんじゃないんですか?」
「呪いの武具なんて言われるいわくつきの代物は、こんな露店で安値で売らねぇよ。好事家にしこたま高く売れるからな」
1メートル弱の柄に鉄製の石突、片側だけ刃がついている。
刀の国で生まれ育った男の子としては両刃的な武器になんか抵抗感があるので、片刃であるというところもポイントが高い。両刃だと押し込まれた時に自分を切っちゃうんじゃないかって妙な心配をしてしまうんだよな。
「よし買った。今すぐ買います」
即決。基本両手で持つので盾は買わない。あとはみんなが買っていた革のブーツ、そして以前欲しかったすね当てを買う。どちらも今回は比較的よい状態のを買った。
みんなが買ってないものとしては、面頬という顔の下半分をガードする防具を買うことにした。
「それ、本当に買うの?」
「顔面には急所が集まっていると言うしね。盾も持たない俺には必要でしょ」
「……そう言われるとそうだよね」
合計銀貨5枚。鎧の修理代を入れても銀貨6枚だ。片手の斧は予備の武器兼日常作業用としてとっておくことにした。
「そういえば、ミカさん、なんで面頬買うのって聞いたの?」
「それちょっと顔に当ててみようか」
「お、おう。くせっ。くさいわっ。タナカの小手の臭いがする」
「あたしも買おうか迷ったんだけど、遠くからでもやばげな臭いがしてたから買えなかったんだよね。これだけは新品で買おうって。シカタくん、ちゅうちょなく買うから、さすが元剣道部、臭いへの耐性あるんだなって……」
サゴさんの試算だと、1日銅貨50枚もあれば、公衆浴場で汗を流して、帰りにビールをひっかけるくらいの贅沢までできるらしい。
サゴさんはともかく俺たちは基本的に好き好んで飲まないが、生活費は余裕を見ていたほうが安全だ。
銀貨12枚-銅貨50枚×10日=銀貨7枚。これが今回の装備強化費用となる。
前回に比べると増えたけれど、まだまだ中古品中心の生活は続きそうだ。
「すいません、鎧、修理に出したいんですけど」
「ここはただの中古屋だから職人を紹介してやる」
以前買い物をした露天商のおじさんにたずねたが、無理だと言われてしまった。
「まず、これをどうにかしないといけないから、先に買い物を済ませておいて、宿に戻ってていいから」
修理の値段の相場を聞いた後、3人の仲間に告げて、職人の店を訪れる。
「銀貨1枚、3日後」
露天商のおじさん曰く、愛想はないが安くて腕は確かという職人と最低限の会話をして、露天商のところに戻る。
他の3人は会計をすませたところだった。
サゴさんは、百姓一揆みたいな農具から短めの槍に持ち替えたらしい。革張りの円盾、履物も短靴から丈夫そうな革のブーツになっているし、小さな弓と矢筒まで装備している。いっぱしの冒険者という感じだ。
「弓はあったほうがいいですからね。あまり自信はないですけど、練習あるのみです」
チュウジも革張りの円盾を買ったらしい。手のひら側が露出した革の手甲に革のすね当て、革のブーツ、前回は胴と頭にしか防具をつけていなかったが、全て揃えられたらしい。腰に小剣まで下げてる。
「お気に入りの鎖分銅はどこ言ったんだ」
たずねると、チュウジはニッと笑って円盾をかかげる。裏側に軽く巻き付けて収納してある。
「状況に応じて臨機応変に武器を使い分けられてこそ、暗黒騎士というものよ」
とりあえず暗黒騎士と言いたいだけだろとツッコミをいれたくなったが、買い物を済ませていない俺はぐっとこらえる。
ミカもブーツを買ったらしい。盾もこれまでの木の盾から革張りの大盾に買い替えたようだ。武器もメイスに変えたようだ。
「みんなブーツ買ってるから、俺も買おうかな」
「一緒に選んであげるよ」
「サゴ殿、我は影の騎士、人混みはあまり得意ではない。こののろまのグズはミカ殿にまかせて先に戻っていようではないか」
チュウジの罵倒つき気遣いで俺とミカで買い物することになった。
「チュウジくん、いい子だよね。あんな弟ほしいな」
「いや、高1にしてなお重度の中二病だぞ」
言動も見かけも中2な奴であるが、実は高1だったということを先日聞いた。
「そこもまた可愛いところ、やっぱりシカタ×チュウジが一番だよね」
「そこ、同意を求められても困るんですけど」
「剣が欲しかったんだけど、斧って使ってみると案外面白いんだよね。柄が長くて持つところが調整きくから片手でも両手でも使えるし」
そんな話をしていると、「ちょうど良いのが入荷している」と戦斧を勧められた。
ほぼ新品で銀貨2枚で良いらしい。
「ほぼ新品で中古に出るって、なんか呪われてるとかあるんじゃないんですか?」
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1メートル弱の柄に鉄製の石突、片側だけ刃がついている。
刀の国で生まれ育った男の子としては両刃的な武器になんか抵抗感があるので、片刃であるというところもポイントが高い。両刃だと押し込まれた時に自分を切っちゃうんじゃないかって妙な心配をしてしまうんだよな。
「よし買った。今すぐ買います」
即決。基本両手で持つので盾は買わない。あとはみんなが買っていた革のブーツ、そして以前欲しかったすね当てを買う。どちらも今回は比較的よい状態のを買った。
みんなが買ってないものとしては、面頬という顔の下半分をガードする防具を買うことにした。
「それ、本当に買うの?」
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「……そう言われるとそうだよね」
合計銀貨5枚。鎧の修理代を入れても銀貨6枚だ。片手の斧は予備の武器兼日常作業用としてとっておくことにした。
「そういえば、ミカさん、なんで面頬買うのって聞いたの?」
「それちょっと顔に当ててみようか」
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