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第3部1章 探索稼業
116 古代都市焼き討ち
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休憩を取った俺たちは古代都市の西端にある見張り塔に静かに進む。
見張り塔の方にはコザルはいないようだ。
入り口の扉は朽ちてしまったのか。しかし、塔の大部分は無事らしく、無骨な金属が苔の光を反射している。
西見張り塔に、今回の作戦指揮を取るチュウジと火矢を射つ人員が登る。
見張り塔の下には北部建物群から敵が接近してきたときに、それを足止めする部隊が展開する。この足止め部隊はタケイ隊が担当する。この人たちはでかすぎて見張り塔では場所を取りすぎそうだし、魔法使い兼癒し手兼自称ソードダンサーのトバさんには魔法を発動させるための広くて安定した場所が必要だ。
火炎放射部隊は火炎放射係のサゴさんに護衛が3名つく。護衛はタダミとミカと俺だ。護衛3名のうち、2名が先の戦闘でコザルに負傷させられた当人だが、それでも戦闘能力が高そうということで選ばれている。逆に言えば、普通にコザルとやり合うのはやはり自殺行為でしかないということでもある。
俺たち火炎放射部隊は北部建物群の南の廃墟に身を潜めて、攻撃の合図となる火矢を待つことになった。
「下で少人数で動く俺たちを捨てるなよ」
俺がチュウジにふざけた口調で念押しする。
やつはうすら笑いを浮かべながら答える。
「見損なうな。サゴ殿とミカ殿は我も大切に思っている。2人を見捨てることなど、我の名誉にかけてありえぬ」
「俺とタダミは?」
「骨は拾って野良犬の餌付けをするのに使ってやる」
以前どこかで聞いたようなセリフを吐きやがる。お前、セリフの引き出し少なすぎるわ。
苦笑する俺をタダミが肘で小突く。
見ると、自分の口を指差しながら、俺をにらむ。
「自分たちだけ喋るなってか? だって、お前喋るとコザルに丸聞こえになるし。まぁ、ちょっと我慢しろ。あとでたくさんお話聞いてあげるからな」
◆◆◆
廃墟の中に身を潜めて待つ。
火矢があざやかな光を発しながら北部建物群に飛んでいく。
いくつかある建物自体は火矢ぐらいでは燃えたりしないが、中にコザルが持ち込んだものは別だ。
チンパンジーは枝や葉を使ってベッドを作るという。コザルがでかいチンパンジーだというならば、中に快適なベッドをこしらえている可能性は充分あるだろう。動物番組大好き元寮生活者タダミはそんなことを言っていたが、その予測は当たったようだ。建物の中から煙がもうもうとあがっている。
コザルが数匹建物から飛び出し、西の見張り塔に疾走していく。快適な寝床に火矢をばんばん射ち込まれたら、怒り心頭だろう。
「今だ! 俺たちも行くぞ!」
俺の号令で火炎放射部隊4名は中央と北部の間に広がる枯れ木の森に走る。
中央通路の建物からコザルが出てくる前に一気に炎の壁を作る。
「ヒャッハー! 汚物はぁー! 消毒だぁー!」
予想通りのセリフを気持ちよさそうに叫びながら、サゴさんが枯れ木に火炎放射をする。
轟々と音を立てて吹き出す炎が中央から出てきてこちらに向かってくるコザルもろとも枯れ木を焼き、炎の壁を作りあげる。
一緒に焼かれたコザル2匹は炎の柱となって枯れ木にぶつかり、そして崩れ落ちていった。
「向こうからも来るぞ!」
タダミが叫ぶ。
西の見張り塔に向かった群れとは別に1匹のコザルがこちらに向かってくる。
1匹ならなんとかなる……と良いな。
「コザル、クソザル、ウンコザル! お前のために刻むぜライム。お前を刻む俺の傷は皆無! 許されざるはお前のクライム! お前ら潰すのは俺のチーム!」
タダミが訳の分からないことを叫びながら両手剣を上段に構える。なんだよライム刻むって? お前は喫茶店で出てくるコーラでも作るのか。
俺は無言で金砕棒を八相に構えると、コザルめがけて振り下ろす。
ナックルウォークで疾走していたコザルが飛ぶ。
前回は空振りして肩を外された。
今回は違う。
連携攻撃をすることになっている。
「えいっ!」
飛び上がったコザルの着地点にミカが盾を構えたまま体当たりをする。
吹き飛ばされたコザルにタダミがものすごいスピードで迫る。
「YO!!」
妙な掛け声とともにタダミはコザルを一刀両断する。
ふざけた掛け声の割にはこいつ強いな。
俺たちは南側の炎の壁を警戒しながら、西見張り塔側の戦闘が終結するのを待つ。
見張り塔の近くでは、空を飛び交う8本のナイフがコザルにまとわりついていた。
ナイフに気をとられたコザルの胸や腹を数本の矢が貫く。
炎と煙に追い立てられるようにして出てきたコザルたちは待ち構えていた西見張り塔射撃組とタケイ隊によってすり潰されていった。
チュウジがやってくる。
「ここから中央通路の建物に向かって火矢を放つぞ。火はここにいくらでもある。燃やし尽くして、サルどもを燻り出せ!」
相変わらず悪人的なセリフで指示を出す。
バイザーからのぞく呪いの人形の目は炎の照り返しを受けて不気味に光っている。こいつをお祓いに連れて行ったら、中身が消えて鎧だけが残ったりするんじゃないかな。俺はしょうもないことを考える。
射撃部隊は火炎の壁に阻まれた向こうにある建物に向かって火矢を放っていく。
向こうの建物も火と煙に覆われていく。
炎の壁を大きく迂回するようにして4匹のコザルがやってくるも、クロスボウや弓の一斉射撃で全員が息絶える。
「残りは南の建物だけだ。ここからは隠れるところがないから、注意して進むぞ」
この場所を通ったことのあるタダミがチュウジに注意をうながす。
北部と中央のいくつかの建物からこちらに向かってきたコザルはそれぞれ7、8匹程度ずつだった。南部の建物にいるコザルの数もそのくらいだろうか。
こちらは無傷の15名。もちろん、最初の遭遇戦であったことを考えれば、決して油断できる訳ではないが、こちらのほうが優勢になってきた。
◆◆◆
南部のコザルの動きはばらばらだった。
5匹がこちらに向かってきて、2匹が逃げた。
動物も知能が高くなると、人間のように大勢を見捨てて自分だけ助かろうという気になるやつが出てくるのだろうか。
それとも、俺たち人間の利己的な欲求もまた本能なのだろうか。
こちらに向かってきた5匹は4匹が蜂の巣となり、残りの1匹は火炎放射で焼かれて炭の柱と化した。
「弔ってやりたいところだが、ここはこのまま下に向かおう。異変の原因がわかるかもしれない」
チュウジの提案に乗って、俺たちは下層へ抜ける洞窟に向かう。
見張り塔の方にはコザルはいないようだ。
入り口の扉は朽ちてしまったのか。しかし、塔の大部分は無事らしく、無骨な金属が苔の光を反射している。
西見張り塔に、今回の作戦指揮を取るチュウジと火矢を射つ人員が登る。
見張り塔の下には北部建物群から敵が接近してきたときに、それを足止めする部隊が展開する。この足止め部隊はタケイ隊が担当する。この人たちはでかすぎて見張り塔では場所を取りすぎそうだし、魔法使い兼癒し手兼自称ソードダンサーのトバさんには魔法を発動させるための広くて安定した場所が必要だ。
火炎放射部隊は火炎放射係のサゴさんに護衛が3名つく。護衛はタダミとミカと俺だ。護衛3名のうち、2名が先の戦闘でコザルに負傷させられた当人だが、それでも戦闘能力が高そうということで選ばれている。逆に言えば、普通にコザルとやり合うのはやはり自殺行為でしかないということでもある。
俺たち火炎放射部隊は北部建物群の南の廃墟に身を潜めて、攻撃の合図となる火矢を待つことになった。
「下で少人数で動く俺たちを捨てるなよ」
俺がチュウジにふざけた口調で念押しする。
やつはうすら笑いを浮かべながら答える。
「見損なうな。サゴ殿とミカ殿は我も大切に思っている。2人を見捨てることなど、我の名誉にかけてありえぬ」
「俺とタダミは?」
「骨は拾って野良犬の餌付けをするのに使ってやる」
以前どこかで聞いたようなセリフを吐きやがる。お前、セリフの引き出し少なすぎるわ。
苦笑する俺をタダミが肘で小突く。
見ると、自分の口を指差しながら、俺をにらむ。
「自分たちだけ喋るなってか? だって、お前喋るとコザルに丸聞こえになるし。まぁ、ちょっと我慢しろ。あとでたくさんお話聞いてあげるからな」
◆◆◆
廃墟の中に身を潜めて待つ。
火矢があざやかな光を発しながら北部建物群に飛んでいく。
いくつかある建物自体は火矢ぐらいでは燃えたりしないが、中にコザルが持ち込んだものは別だ。
チンパンジーは枝や葉を使ってベッドを作るという。コザルがでかいチンパンジーだというならば、中に快適なベッドをこしらえている可能性は充分あるだろう。動物番組大好き元寮生活者タダミはそんなことを言っていたが、その予測は当たったようだ。建物の中から煙がもうもうとあがっている。
コザルが数匹建物から飛び出し、西の見張り塔に疾走していく。快適な寝床に火矢をばんばん射ち込まれたら、怒り心頭だろう。
「今だ! 俺たちも行くぞ!」
俺の号令で火炎放射部隊4名は中央と北部の間に広がる枯れ木の森に走る。
中央通路の建物からコザルが出てくる前に一気に炎の壁を作る。
「ヒャッハー! 汚物はぁー! 消毒だぁー!」
予想通りのセリフを気持ちよさそうに叫びながら、サゴさんが枯れ木に火炎放射をする。
轟々と音を立てて吹き出す炎が中央から出てきてこちらに向かってくるコザルもろとも枯れ木を焼き、炎の壁を作りあげる。
一緒に焼かれたコザル2匹は炎の柱となって枯れ木にぶつかり、そして崩れ落ちていった。
「向こうからも来るぞ!」
タダミが叫ぶ。
西の見張り塔に向かった群れとは別に1匹のコザルがこちらに向かってくる。
1匹ならなんとかなる……と良いな。
「コザル、クソザル、ウンコザル! お前のために刻むぜライム。お前を刻む俺の傷は皆無! 許されざるはお前のクライム! お前ら潰すのは俺のチーム!」
タダミが訳の分からないことを叫びながら両手剣を上段に構える。なんだよライム刻むって? お前は喫茶店で出てくるコーラでも作るのか。
俺は無言で金砕棒を八相に構えると、コザルめがけて振り下ろす。
ナックルウォークで疾走していたコザルが飛ぶ。
前回は空振りして肩を外された。
今回は違う。
連携攻撃をすることになっている。
「えいっ!」
飛び上がったコザルの着地点にミカが盾を構えたまま体当たりをする。
吹き飛ばされたコザルにタダミがものすごいスピードで迫る。
「YO!!」
妙な掛け声とともにタダミはコザルを一刀両断する。
ふざけた掛け声の割にはこいつ強いな。
俺たちは南側の炎の壁を警戒しながら、西見張り塔側の戦闘が終結するのを待つ。
見張り塔の近くでは、空を飛び交う8本のナイフがコザルにまとわりついていた。
ナイフに気をとられたコザルの胸や腹を数本の矢が貫く。
炎と煙に追い立てられるようにして出てきたコザルたちは待ち構えていた西見張り塔射撃組とタケイ隊によってすり潰されていった。
チュウジがやってくる。
「ここから中央通路の建物に向かって火矢を放つぞ。火はここにいくらでもある。燃やし尽くして、サルどもを燻り出せ!」
相変わらず悪人的なセリフで指示を出す。
バイザーからのぞく呪いの人形の目は炎の照り返しを受けて不気味に光っている。こいつをお祓いに連れて行ったら、中身が消えて鎧だけが残ったりするんじゃないかな。俺はしょうもないことを考える。
射撃部隊は火炎の壁に阻まれた向こうにある建物に向かって火矢を放っていく。
向こうの建物も火と煙に覆われていく。
炎の壁を大きく迂回するようにして4匹のコザルがやってくるも、クロスボウや弓の一斉射撃で全員が息絶える。
「残りは南の建物だけだ。ここからは隠れるところがないから、注意して進むぞ」
この場所を通ったことのあるタダミがチュウジに注意をうながす。
北部と中央のいくつかの建物からこちらに向かってきたコザルはそれぞれ7、8匹程度ずつだった。南部の建物にいるコザルの数もそのくらいだろうか。
こちらは無傷の15名。もちろん、最初の遭遇戦であったことを考えれば、決して油断できる訳ではないが、こちらのほうが優勢になってきた。
◆◆◆
南部のコザルの動きはばらばらだった。
5匹がこちらに向かってきて、2匹が逃げた。
動物も知能が高くなると、人間のように大勢を見捨てて自分だけ助かろうという気になるやつが出てくるのだろうか。
それとも、俺たち人間の利己的な欲求もまた本能なのだろうか。
こちらに向かってきた5匹は4匹が蜂の巣となり、残りの1匹は火炎放射で焼かれて炭の柱と化した。
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