馬があわない私とあいつ

くじらと空の猫

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1.王宮メイド

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馬が合わない相手てというものは本当にいるらしい。

王宮のメイドとして働いてうん年。
リンは周りのメイドたちともつづがない関係を気づくことができ、何も問題はなかった。だた、仲の良いメイドの一人に頼まれて、騎士団にいったのがことの始まり。

こいつは気に食わない。

お互いが同じことを思ったというのは、顔をみてわかった。
そんな通じ方は決してしたくなかったけれど。

私にとっての鬼門その人物は黒騎士団に所属する、カイ・ハルワードという男だった。




************************************


 リンの仕事は王宮での下働き。
 数えきれない部屋を綺麗に掃除するのが、彼女の仕事だった。
 一応、父親は男爵という地位にはいるが、王都よりはるかにはなれた田舎の領地。暮らしも領民とほぼ変わらず、それどころか一緒に畑を耕している。リンはそんな家族が嫌いではなかったが、現金収入が乏しくそれに危機感を覚え、15歳になったときに王宮への推薦状をもらい、働きながらその収入を家族のもとへと送っていた。王宮のメイドとときけば、結婚前の令嬢達の花嫁修業場ともいわれているが、それは一部の高位令嬢にあてはめられる言葉であって、リンのようにもろもろの事情をかかえて、働いているものにとっては優良な職場以外何物でもなかった。まぁ、一部のメイドたちはそんな夢をもっているものもいるが、ほとんどの少女たちは現実をみて真面目に働いているものばかり。

(まぁ、それにこういった華やかなところにいる男性に目をつけられるような容姿でもないしね)

 リンは今年18歳になるが、身長は16歳のころに止まってしまっていて、同じ年代の少女たちよりは少し小さ目だ。おかげで掃除をする部屋の窓はいつも、脚立をもって走りまわるはめになっており、最近は腕の筋肉の付き方に不安を覚えるいる。丸めの顔にそれをなお強調するような、黒に近い先が跳ねまわる茶色の髪。鏡で自分の姿をみれば、いつも小さな少女がただそのまま大きくなっただけのようで、女性としての魅力は皆無ということにため息をつく。自信があるのは明るめの緑の瞳。この瞳のおかげで自分の雰囲気が暗くないのだけが唯一の救いだったが、ただそれ以上にも以下にもならないもの。

(いつかは、お嫁にはいきたいけどね…)

 領地に戻って恋人を探すといっても、このまま青春をここで過ごす予感がびしばしする。
 嫁き遅れで悩む先輩たちの背中が、数年後の自分の未来のようでそれを考えると終わったばかりの冬が逆戻りしてきそうだった。

(いけない、いけない、仕事があるんだから!)

 ぶるっと首を振って、暗雲たちこめる未来から顔をそむける。
 よしっと一声気合をかけて、脚立を持ち上げ丁度よく同じ部屋を掃除する、メイド仲間とともにリンは今日も王宮の部屋を綺麗に磨き上げるのだった。
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