魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

文字の大きさ
25 / 33
一章

24、戦う理由

しおりを挟む

 ジンは先へ進んだ。

 薄暗い通路はところどころ気休め程度のランプが灯っている。

「ここか……!!」

 貴賓室と書かれた部屋にやっと辿り着いた。会場内は迷路のような構造だったので、エルメスにあらかじめ聞いていたが、正直どこが貴賓室かわからなかった。そのため、ジンは片っ端から探して走り回っていたのだ。

 やっと辿り着けた扉を思いっきり蹴破って入った。

 そこにはガラス越しに闇市の舞台を見下ろしている男が一人、立っていた。

「よくも、闇市を台無しにしてくれたな!!」

 こちらをゆっくり振り返った男は痩身の男だった。身なりはハンターより小洒落た格好をしており、どこかの貴族だと言われても納得する。

 しかし、その男は蜘蛛の形をブローチを胸にしていたのだ。まさに、この男がレガーロのお頭。

「あんたが、お頭……だな?」

 彼の足元には小太りの男が倒れている。きっとそいつが今回の闇市の主催者だったに違いない。

「ああ、僕がレガーロのお頭、マクベスさ。でもな、それも今日で終わる予定だった!!」

 マクベスは剣を手に、ジンへ向かって急接近してきた。

「そんなことはどうでもいい!! あんた、よくも人の物を盗んでくれたな!!」

 迎撃態勢を取り、ジンはマクベスの攻撃を迎え撃つ。ガキイン、と刃がぶつかった。

「うるさい!! このオークションで虹蛇が高く売れれば、その金で僕は貴族階級を買えたんだ!! こんな土を食うようなハンター仕事ともおさらばだったのに!!」

「貴族社会の事なんて知らないしどうでもいい!! 重要なのはお前らが人から物を盗んだってことだ!! そのせいで誰かを悲しませたんだぞ!!」

「それがハンターなんだよ!! 物や命を奪い、僕たちが生きる!! 弱い奴は強い奴に淘汰されていく!! それが弱肉強食の世界だ!!」

 すると床から人形がぬっと現れる。

「僕の未来を邪魔した奴は、死ぬがいい!!」

 マクベスは押し切って追撃を打ち込んでくる。

 ジンはバックステップで躱しつつ、マクベスの攻撃を弾き叩き、迎撃をする。しかしジンの迎撃を軽い身のこなしで避けたマクベスの追撃は猛攻だった。彼から放たれる攻撃は目にも留まらぬ速さなのだ。

 隙を突き、致命傷を負わせようとしてくる。さすがはハンターだ。

 ジンはその縦横無尽に叩きつけられる剣閃けんせんを弾きまくるが、防戦一方なのをいいことに、人形たちもジンへ向かって切り込んできたのだ。

 マクベス同様、超高速で振り下ろされる剣は、まさに降り注ぐ剣の嵐。

 刃がぶつかる毎に剣戟音が響き、火花が飛び散る。

 その衝撃波が空間を軋ませた。

「死ね死ね死ね死ねええええええ!!」

「……未来なんて、いくらでも変えられるだろ!!」

 ジンは爆発的な力を発し、全ての攻撃を完璧なタイミングで弾き返していた。

 多量に襲いかかってくる人形たちを切り伏せ、横へ薙ぎ、相手の攻撃の隙をついて、他からの攻撃を避けつつ回し蹴りをお見舞いする。

 ジンに集中するように一塊になっていた人形がどんどん吹き飛ばされ、切り倒されていく。

 気づいたときには、ジンはあっという間に人形を全て蹴散らしていた。

 それでもひるむことなく果敢かかんに攻め立ててくるマクベスの剣技は、速く捉えどころのない乱れ打ちだ。腕が想像以上にしなり、予想している方向からは攻撃がこず、ややずれてジンを狙うのだ。

 ジンは幾度となく弾き返す。

「くそ……!! お前は許さない……!!」

 するとマクベスの腕につけているバングルが光り出す――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

処理中です...