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第二十九話 疑念

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「なんということだ!」

そんな風に衝撃を受けるのがストロングだった。

「なぜ、こうなった、なぜ、ここにオーシャンがいないのだ!」

多少間抜けかもしれないが、ストロングはオーシャンがいると思って、ここに来ていたのに、見つからなかったのだ、それだけに衝撃的だった、つまり、オーシャンが戦い方を変えて、あっさりとハンターを囮にしてストロングを引きつけたのだ、つまり、どこかで何かをするつもりなのだろう。

失敗した、そう思って衝撃を受けるのはハンターではなく、ランドだった、やっぱ、ハンターを囮にしても負けたので、これではいずれ、ストロングがここを拠点にしてオーシャンを攻撃するかもしれない、そんな可能性に囚われて、残念がった。

「もう遅いのかもしれないな、手遅れかもしれない、オーシャンは準備を完了したのかもしれない」
「そんなことはない、まだです、まだ、終わってないはずです」

ストロングと従者たちは悲観するものと、それを否定する者とに分かれた。

明らかに負けたのはハンターだ、なぜなら、ここにいるハンターの仲間たちがその証拠だ、もう、ハンターに協力しようとする仲間はいないはずだ、いても、大した勢力を持っていないはずだ。

諦めていないのは、ハンターではなく、オーシャンだった、オーシャンは素直に、この地に訪れようと思っていた、なぜなら、ここにはランドやハンターがいるからだ、大丈夫なはずだ、そして、一度、ストロングの様子を確認しておきたかったのだ。

*****

ディノ様見守り劇場

私の名前はコーム、ある日、ディノ様と出会った、しかし、彼は私を見ても、あまりご機嫌が良くなかったわ、それに、私は彼を応援するにしても、大したもてなしができないの、なので、こうしたわ、彼を見守ったのよ。

♦︎♢♦︎♢♦︎

そんな彼女を見守る天使がそっと現れた。

「我が名はリバース、天使にして、精霊の見守り手♢」

彼ら天使は誰にも見えないのだ、人は彼らを精霊のまとめ役と呼ぶ。

♦︎♢♦︎♢♦︎

ある日、ディノ様を見つけては手を振ってみた、ディノ様はこれを無視してどこかへと去っていってしまう、しかし、コームはこれを気にしなかった。彼女は彼を応援することにしたのだ。

「ディノ様、頑張って、この街のために」

♦︎♢♦︎♢♦︎

彼女の言葉は天使の耳に入り、喜びを奏でた。

「ああ、なんと美しい人の業、行く末見届けるまでなく栄えるのみですね♢」

天界より見守る天使はそう歌って、事の顛末を見届けるのだった。

♦︎♢♦︎♢♦︎

ディノ様の応援の仕方は簡単よ、ディノ様が困っていたら、差し入れをしてあげるのよ、どんなもんだい、この社会!

♦︎♢♦︎♢♦︎

「なんと美しい人の業、どうせなら、美しく飾りたいものです、華やかに、華麗に、そう彩るのです、それが一番の華というもの、ああ、素晴らしい♢」

天界より見守る天使リバースは歌いながら周囲の精霊に助言するのだった、精霊たちは天使の周りを回りながら、輝きを放ち始めた。

♦︎♢♦︎♢♦︎

ある時、アルマがディノを疑いながら、ディノの仲間の情報を探ることがあった。

そして、アルマはコームの前で、ディノを疑っているところを見つかるのだった。

「やはり、疑わしきはディノ!はたして、何者なのか?」

その瞬間に思わずディノを応援するコームはあっさりとその場で反論してしまうのだった。

「なんでそんなこと言うの、ディノ様はそんなことしない、諦めなさい、ディノ様はあなたの敵じゃないわ」

♦︎♢♦︎♢♦︎

この発言はすぐに天使に届けられるのだった。

「ああ、なんとこれは物悲しい、報われぬ愛、救い手は何処に、だが、これで一輪の花となりました♦︎」

天界より見守るリバースは一人、目を瞑りながら嘆息し、真実に辿り着けない人の悲しさを訴えるのだった、人には見えない精霊たちはコームの周りを青色の輝きを放ちながら、回るのだった。

♦︎♢♦︎♢♦︎

あっさりと、反論されて、困るのはアルマだった、ディノは本当はいいやつなのかもしれない。今回はこのぐらいで引き上げることとしよう、そう考えて、アルマは消えていった。

「やっぱり、みんなディノ様のことを分かってない、本当はいい人なのに」

♦︎♢♦︎♢♦︎

コームの発言の最後の瞬間に、見えない精霊は彼女の周りを黄色になって回るのだった。

「ああ悲劇とはこのことです、私もまた去りましょう、去らばです、コーム、あなたに祝福の在らんことを…!」

♦︎かくして、天使リバースはどこかへと消えていった♢

♦︎♢♦︎♢♦︎

なお、彼女はその後も、役人であってもディノが悪人だと言われたら反論し、ディノがそれに傷ついている様子を見せて、顔を帽子に埋めれば一緒になって後ろから共に悲しんで見せるのだった。

だが、彼女は、最後にはディノ様がハンターだったことを知り、絶望のさよならをするのだった。
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