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「いいなぁ、お前」

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真琴が寝たあと、雨宮はいつも真琴を切なそうに見つめる。

今日もそうだと思ったが、今日は起き上がって俺を見て話しかけてきた。

「いいなぁ、お前」

「何がだ?」

真琴のことだとは思ったが一応聞いた。

「真琴、お前にべた惚れじゃんか」

「そりゃ、まあな」

「お前はちゃんと真琴のこと好きなのか?」

雨宮は責めるような目で俺を見てきた。

なんだこいつ。

俺も睨みながら言う。

「当たり前だ。こいつが好きな自信もあるし、好かれてる自信もあるしな」

「自信があるから俺に真琴を抱かせたのか?」

雨宮の表情が読めなかった。

「まあ、それもあるが。お前の真琴を見る顔を見ていたら、仕方ないかとも思えた」

「仕方ない、だと?」

俺は雨宮に目線を戻した。

「そうだ。お前は真琴にガチで惚れてたし、料理もして、挙げ句に俺等がやってるところも見やがって」

「お前何冷めてんだ?」

「ああん?」

雨宮の低くした声に反応して、俺は真琴の頭から腕を抜いた。

「俺に奪われる可能性、1パーもなかったのか?」

一瞬、俺は考えた。

考えた内容を否定した。

間があいた。

「なかったな」

「お前はやっぱり嘘つきだぁ」

雨宮は横になる。

そして、いつもより一層切なそうな顔をして真琴を見つめた。

クソッ。

不意に雨宮が言った。

「なぁ、雪人。真琴に雪人のどこが好きか聞いといて」

は?

「何で俺が。お前が聞けばいいじゃねえか」

「俺じゃだめなんだよ」

雨宮が俺を見て言った。

「俺じゃ真琴はほんとのこと言わないかもしれないだろ? お願い、聞いといて」

すがるような目で見てきた。

俺は天井を見て、目を閉じて考えた。
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