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路地裏にて

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冬は、とにかく餌が少ない。木の実は何も木になっていないし、地面に落ちた木の実は人間達に踏み潰されてしまう。

「ここに行くしかないか……」

躊躇いつつ、足を踏み入れたのは薄暗い路地裏。元親友の、カラスくんが教えてくれた場所。ここには、人間の捨てた生ゴミが沢山集まっているのだ。

「……良かった、沢山ある」

臭いは多少きついけれど、人間の食べている食べ物はとても美味しい。これをもって帰れば、妻達も美味しい食事にありつける。顔を綻ばせながら、ゴミを啄んで行く。

「にゃんだぁ?今日は随分と美味そうな鳩がいるじゃねぇか」

声がした途端、体がビクリと震えた。命を奪う、悪魔のような囁き。本能的に畏怖する、恐怖の言葉。

もう少し、疑うべきだったのだ。こんな美味しいご飯が、誰にも取られず置かれている訳が無いと。
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