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冬の到来

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「あそこの家、恵まれない子供からも食べ物を強奪してるらしいぜ……」

「大人しい顔して残虐な事しやがる……」

なんて酷い言われようだ。僕は憤慨しながら、ホトトギスの誘いに乗ったことを後悔した。このとき僕は、頭の中でなにかがふつふつと記憶の底から浮かんでくるのを感じていた。

もう少し、疑うべきだったのだ。いきなり家に来てご飯をくれなんて言う奴が怪しくない訳が無いんだ。

 冬がやってきた。僕達も、エサをくれる人間も出歩く事が少なくなり、代わりに元気な人間の子供達が外で遊んでいるのを見かけるようになった。

「……ご飯を探しに行かないと」

妻と子供も、もうだいぶこの貧困に耐えてもらっている。もっと沢山ご飯を集めないと。そう思って僕は、珍しく狩りへと出かけることにした。
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