冤罪女

日比谷ナオキ

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絶望の底

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「………」
 考える気力も、とっくに失っていた。大切なものを奪われて、生きる気力も無くなっていた。どうやって死のうか。いつ死のうか。それだけを毎日考えていた。友達のラインも、全部未読になっていた。
「………」
 窓からが良いな。そしたら、途中で気絶して楽に死ねるらしいし。病院の窓から、下を覗き込んだ。
「……ひっ!」
 私の視界に浮かんだのは、魑魅魍魎な怪物が蠢く死の世界。そして、血の池に沈んでいる男達。あれは、私が追いやった人達だろうか。
「……し、死ね…ない…」
 怖い。あんな所に飛び込める訳が無い。でも、生きているのも辛い。どうすれば良いのだろうか。
『他人の人生を奪うという事が、どれ程重い事なのかを思い知れ。』
 ある男の言葉を思い出した。そうか。私はあんな場所に。あの人達を送ってしまったんだ。だったら、私のすべき事は死ぬ事じゃない。
「やら…なきゃ…」
 病院のハサミを借りて、髪の毛をばっさりと切り落とした。染めていた金髪は、スプレーの使用を止めてボロボロになっていた。それを黒く染め直す。カラコンも取り外し、素の自分を取り戻す。
「謝ら…ないと…死んでも死にきれない…」
 私はこの時から、『贖罪』の二文字が常に頭の中を駆け巡る様になった。
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