1 / 64
プロローグ
北の辺境騎士団にて
ジェイデン・ロンデナートの元に一羽の赤鳩が1通の知らせを運んできた。
北の辺境騎士団に所属するジェイデンは、今まさに食堂で夕食を取ろうとしていたところだ。開け放していた窓から飛び込んできた赤鳩に周囲が注目する。
「赤鳩なんて珍しいな。よっぽど急ぎの用件なのか?」
同僚のセオドアが芋の煮込みをつつきながら、赤鳩の脚から書簡を外してやるジェイデンに声をかける。
「ああ、王都からだな。何の用だ」
そう言いながら書簡を開いたジェイデンの眉が寄る。普段とは違うその様子に、セオドアも食事の手を止めた。
「どうした?」
「…父からだ」
そう言いながら、ジェイデンは前髪をくしゃくしゃに掻きあげる。無造作にまとめていたら金髪が乱れることも気にせず、嫌そうに溜息をついた。表情は険しい。
書簡には父親の字で"来季の登校日から、王都の士官学校に通うように"と書かれている。
(今更、王都の士官学校に行く意味などあるのか)
書簡を睨んだまま動かないジェイデンを見かねて、横に座っていたセオドアが書簡を取り上げる。
「王都の士官学校か。今更って感じもするけどな…。断れねぇんだろ?」
「ああ」
ジェイデンは返事をしながら机の端に止まっている赤鳩の頸を撫でる。喉を鳴らす赤鳩は大人しい鳥にしか見えないが、希少な魔鳥である。
伝書鳩として多くの魔鳥が活躍しているが、その中でも赤鳩は数が少なく、飛ぶ速さは桁違いだ。そのため専ら緊急時に飛ばされることが多く、赤鳩を所有している家は少ない。
「赤鳩なんて久しぶりに見たぜ。魔力を喰うってほんとか?」
「ああ、そうだ。赤鳩は報酬として魔力を喰う」
そう言いながら、ジェイデンは掌に魔力を集める。
手掌の上で炎の様に立ち昇る魔力に合わせて、赤鳩が羽ばたき炎に溶け込むように魔力を喰らう。
心地良さそうに魔力を喰う赤鳩を遠目に見ていた周囲が、次第にざわつき始めた。
「あいかわらず羨ましくなる魔力の量だな」
伝書鳩は、飛ばす者と受け取る者、その両方から報酬として魔力を受け取る。
それが、赤鳩を所有することができる人間が少ない理由だ。
ジェイデンは平然と魔力を与えているが、赤鳩が求める魔力量は他の伝書鳩とは桁違いに多い。
例えば、街でよく見かける連絡用の白鳩なら、食べ物か少量の魔力を与えると誰でも使うことができる。白鳩は短距離しか飛ぶことができないが、赤鳩は魔力しか食べず、白鳩50羽分ほどの魔力量を要する分、飛距離も長く速い。
ここに居る者は、全員が赤鳩を問題なく飛ばせる程度の魔力を持っている。
しかし、それは体調が万全の場合だ。
「お前、昼間あれだけ訓練で魔法ぶっ放しといて、まだそんな残ってんのか」
セオドアの言葉に、唇の端で笑いながらジェイデンが立ち上がる。
それと同時に、満腹になった赤鳩が窓から飛び出していった。
南の空へ。一条の赤い光が走る。
「王都か」
赤鳩の残像を追いながら、ジェイデンは小さく呟いた。
北の辺境騎士団に所属するジェイデンは、今まさに食堂で夕食を取ろうとしていたところだ。開け放していた窓から飛び込んできた赤鳩に周囲が注目する。
「赤鳩なんて珍しいな。よっぽど急ぎの用件なのか?」
同僚のセオドアが芋の煮込みをつつきながら、赤鳩の脚から書簡を外してやるジェイデンに声をかける。
「ああ、王都からだな。何の用だ」
そう言いながら書簡を開いたジェイデンの眉が寄る。普段とは違うその様子に、セオドアも食事の手を止めた。
「どうした?」
「…父からだ」
そう言いながら、ジェイデンは前髪をくしゃくしゃに掻きあげる。無造作にまとめていたら金髪が乱れることも気にせず、嫌そうに溜息をついた。表情は険しい。
書簡には父親の字で"来季の登校日から、王都の士官学校に通うように"と書かれている。
(今更、王都の士官学校に行く意味などあるのか)
書簡を睨んだまま動かないジェイデンを見かねて、横に座っていたセオドアが書簡を取り上げる。
「王都の士官学校か。今更って感じもするけどな…。断れねぇんだろ?」
「ああ」
ジェイデンは返事をしながら机の端に止まっている赤鳩の頸を撫でる。喉を鳴らす赤鳩は大人しい鳥にしか見えないが、希少な魔鳥である。
伝書鳩として多くの魔鳥が活躍しているが、その中でも赤鳩は数が少なく、飛ぶ速さは桁違いだ。そのため専ら緊急時に飛ばされることが多く、赤鳩を所有している家は少ない。
「赤鳩なんて久しぶりに見たぜ。魔力を喰うってほんとか?」
「ああ、そうだ。赤鳩は報酬として魔力を喰う」
そう言いながら、ジェイデンは掌に魔力を集める。
手掌の上で炎の様に立ち昇る魔力に合わせて、赤鳩が羽ばたき炎に溶け込むように魔力を喰らう。
心地良さそうに魔力を喰う赤鳩を遠目に見ていた周囲が、次第にざわつき始めた。
「あいかわらず羨ましくなる魔力の量だな」
伝書鳩は、飛ばす者と受け取る者、その両方から報酬として魔力を受け取る。
それが、赤鳩を所有することができる人間が少ない理由だ。
ジェイデンは平然と魔力を与えているが、赤鳩が求める魔力量は他の伝書鳩とは桁違いに多い。
例えば、街でよく見かける連絡用の白鳩なら、食べ物か少量の魔力を与えると誰でも使うことができる。白鳩は短距離しか飛ぶことができないが、赤鳩は魔力しか食べず、白鳩50羽分ほどの魔力量を要する分、飛距離も長く速い。
ここに居る者は、全員が赤鳩を問題なく飛ばせる程度の魔力を持っている。
しかし、それは体調が万全の場合だ。
「お前、昼間あれだけ訓練で魔法ぶっ放しといて、まだそんな残ってんのか」
セオドアの言葉に、唇の端で笑いながらジェイデンが立ち上がる。
それと同時に、満腹になった赤鳩が窓から飛び出していった。
南の空へ。一条の赤い光が走る。
「王都か」
赤鳩の残像を追いながら、ジェイデンは小さく呟いた。
あなたにおすすめの小説
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい
発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』
そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。
そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。
あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。
「あ、こいつが主人公だ」
超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー
当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる
蒼井梨音
BL
箱入り公爵令息のエリアスは王太子妃候補に選ばれる。
キラキラの王太子に初めての恋をするが、王太子にはすでに想い人がいた・・・
僕は当て馬にされたの?
初恋相手とその相手のいる国にはいられないと留学を決意したエリアス。
そして、エリアスは隣国の王太子に見初められる♡
(第一部・完)
第二部・完
『当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている』
・・・
エリアスとマクシミリアンが結ばれたことで揺らぐ魔獣の封印。再び封印を施すために北へ発つ二人。
しかし迫りくる瘴気に体調を崩してしまうエリアス……
番外編
『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子の胸に抱かれる』
・・・
エリアスを当て馬にした、アンドリューとジュリアンの話です。
『淡き春の夢』の章の裏側あたりです。
第三部
『当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします』
・・・
精霊界の入り口を偶然見つけてしまったエリアスとマクシミリアン。今度は旅に出ます。
第四部
『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子といばらの初恋を貫きます』
・・・
ジュリアンとアンドリューの贖罪の旅。
第五部(完)
『当て馬にした僕が、当て馬にされた御子さまに救われ続けている件』
・・・
ジュリアンとアンドリューがついに結婚!
そして、新たな事件が起きる。
ジュリアンとエリアスの物語が一緒になります。
書きたかったことが書けた感じです。
S S
不定期でマクシミとエリアスの話をあげてます。
この2人はきっといつまでもこんな感じなんだと思います。
番外編
『僕だけを見ていて』
・・・
エリアスはマクシミのことが大好きなのです。なんか、甘めの話を書いてみたくなりました。
『ホワイトデー♡小話』(前後編です)
・・・
エリアスからのプレゼントのお返しをするマクシミのお話です。
ホワイトデーなので、それっぽく書いてみました。
エリアス・アーデント(公爵令息→王太子妃)
マクシミリアン・ドラヴァール(ドラヴァール王国の王太子)
♢
アンドリュー・リシェル(ルヴァニエール王国の王太子→国王)
ジュリアン・ハートレイ(伯爵令息→補佐官→王妃)
※扉絵のエリアスを描いてもらいました
※本編はしばらくお休みで、今は不定期に短い話をあげてます。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
愛され方を教えて
あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。
次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。
そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜
天気
BL
完結に向けて頑張ります
5月中旬頃完結予定です
その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます