公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

文字の大きさ
13 / 64
一章 旅路

王都到着①

しおりを挟む







キヴェを早朝に立ったお陰で、昼過ぎには王都に辿りついた。

「早めに発ってよかったな」

風猫亭では早起きしたマールに弁当を持たされ、またキヴェに寄る事があれば待っているから、と念を押されて見送られた。







王都はシエーナという。

内郭に位置する王宮を中心に、花弁が開くように街が外に広がっている。
本宮を守るために、幾重にも城壁が築かれており、それぞれの門には相応しい身分を持つ者しか通れないように厳重に管理されていた。



外郭にある貴族用の通用門を通り、王都の中へと入る。
ここでも騎獣は外郭沿いに置かれた獣舎へと預ける決まりがあるが、一部の貴族には例外的に三の郭まで騎乗したまま入る事が許されている。もちろん、この2人にも許可は出ていた。
外郭の次にある四の郭を通り過ぎ、三の郭を抜けるまでにはかなりの距離がある。
四の郭・三の郭は主に平民の住居や店舗となっており、王国中から人が集まる王都の繁華街としての賑わいをみせていた。
その内側にある二の郭まで、高位の貴族は下乗しないのが常であった。

「士官学校は二の郭の南端みたいだが、こっちであってるのか?」

王都の文化と商業の中心でもある三の郭は、貴族と平民の生活が交わる位置にあることから区画も広く取られている。
あまりの広さに、迷いそうだとセオドアが辺りを見渡した。

「ああ、二の郭だ。南の塔が目印になるはずだ」

四の郭から三の郭への移動は、日中は自由に行える。城門は開け放されており、住人や商人が忙しげに行き交っていた。
彼らも三の郭へと入り、少し進む速度を緩めながら周りを確認する。



ジェイデンも7年ぶりの王都である。
幼い頃は馬車での移動が常で、三の郭より外を自ら移動することはなかった。そのため、記憶は朧げである。

二の郭の南側は、王都の騎士団と魔術師団の本拠地となっており、それぞれの機関の中枢拠点として、南の塔がある。
士官学校は騎士団と魔術師団に属する形で運営されており、そのすぐそばに位置していた。


「この辺りは活気があっていいな」

ここでは騎獣できるのは貴族だけの為、彼らは周囲から注目を集めた。それに加え、大きな一角狼は王都でも珍しく行き交う人々が振り返る。視線を意識しながらも、2人は足を止めずに三の郭を抜け、二の郭への城壁にたどり着いた。

城門の前で下乗し、衛兵に身分証を見せて二の郭へと入る。

三の郭から二の郭へと移ると、街並みは一変した。
二の郭の北側地区は屋敷街である。貴族や、特別な許可を得た裕福な商人が居を構えており、区画整理された立派な邸宅が並ぶ。

「屋敷街を抜けて、あの正面に見えている塔の方向へ行けばいいはずだ」

南の塔は、立ち並ぶ屋敷に隠されて一部しか見えていない。
ジェイデンはそれを指差してセオドアへ告げると、魔狼たちへ声をかけた。

「また小さくなれるか?」

ここから先は騎獣も規制されている。
城門の近くには獣舎が備えてあったが、心得たように二匹は犬の姿に変化した。
呆れたような、感心したような顔でセオドアがそんな二匹を見る。

「堂に入った犬っぷりだな」

揶揄うセオドアに、2匹は素知らぬそぶりで尻尾を振りながらついてきた。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音
BL
箱入り公爵令息のエリアスは王太子妃候補に選ばれる。 キラキラの王太子に初めての恋をするが、王太子にはすでに想い人がいた・・・ 僕は当て馬にされたの? 初恋相手とその相手のいる国にはいられないと留学を決意したエリアス。 そして、エリアスは隣国の王太子に見初められる♡ (第一部・完) 第二部・完 『当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている』 ・・・ エリアスとマクシミリアンが結ばれたことで揺らぐ魔獣の封印。再び封印を施すために北へ発つ二人。 しかし迫りくる瘴気に体調を崩してしまうエリアス…… 番外編  『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子の胸に抱かれる』 ・・・ エリアスを当て馬にした、アンドリューとジュリアンの話です。 『淡き春の夢』の章の裏側あたりです。 第三部  『当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします』 ・・・ 精霊界の入り口を偶然見つけてしまったエリアスとマクシミリアン。今度は旅に出ます。 第四部 『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子といばらの初恋を貫きます』 ・・・ ジュリアンとアンドリューの贖罪の旅。 第五部(完) 『当て馬にした僕が、当て馬にされた御子さまに救われ続けている件』 ・・・ ジュリアンとアンドリューがついに結婚! そして、新たな事件が起きる。 ジュリアンとエリアスの物語が一緒になります。 S S 不定期でマクシミとエリアスの話をあげてます。 この2人はきっといつまでもこんな感じなんだと思います。 番外編 『僕だけを見ていて』 ・・・ エリアスはマクシミのことが大好きなのです。 エリアス・アーデント(公爵令息→王太子妃) マクシミリアン・ドラヴァール(ドラヴァール王国の王太子) ♢ アンドリュー・リシェル(ルヴァニエール王国の王太子→国王) ジュリアン・ハートレイ(伯爵令息→補佐官→王妃) ※扉絵のエリアスを描いてもらいました ※本編はしばらくお休みで、今は不定期に短い話をあげてます。

処理中です...