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二章 士官学校
ベイルート⑤
しおりを挟む一方その頃、ルーとギードは召使いに抱えられ廊下を進んでいた。
玄関先で彼らを連れて行った召使いは、この犬たちを主人の前に出すために、肉球まで念入りにぬるま湯で脚を洗い、飼い犬用の艶出し油を少量つけたブラシをかけて、毛並みを整えた。
『お犬さまがた。今から綺麗にさせていただきますんで、すこぅし、じっとしていてくださいませい』
そう言って2匹の前で丁寧に頭を下げた召使いは、手の節張った老人である。
長年、ロンデナート家の愛玩犬や小動物を世話してきた人だ。
東寮を出る時にも散々ブラシをかけられた2匹だったが、召使いの丁寧な物言いと熱意に抵抗は諦め、大人しく身を任せた。
そしてその熟練のブラシ捌きは、2匹をうっとりさせるような、素晴らしい技術であったため、全身磨かれた魔獣たちは、この老召使いに世話を許し、一目置いて評価した。
本来は主人にしか触れさせない魔獣である彼らから見れば、破格の待遇である。
「おや、準備が整ったようですね」
ちょうど茶器を抱えて応接室から出てきたゲイルと部屋の前で鉢合わせた。
「はい。今まで見たことのない、利口なお犬さまですじゃ」
そう言って、召使いは腕の中でじっとしている2匹を見た。
彼は2匹が魔獣の変身体とは知らないが、長年の経験から普通の犬とは違うと感じているのだろう。
もともと、動物には真摯に向き合う男だったが、まるで貴族を前にしたような態度で2匹に接していた。
「この茶器を下げて、新しいものを持ってくるよう伝えてください。彼らのことは私が…おっと」
そう言って茶器と2匹を交換しようとしたゲイルだったが、触れられる前に2匹は召使いの腕の中から飛び降りた。
空になった手で茶器を受け取って、召使いは頭を下げてその場を離れる。
召使いには大人しく抱えられていた2匹だったが、ゲイルには簡単に触らせないとばかりに、さっさと歩き出し、前脚で応接間の扉をかりかりと掻く。
早くここを開けろとばかりに見上げてくる2匹に、ゲイルは苦笑いで扉を開けてやった。
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