公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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二章 士官学校

ベイルート⑥

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扉が開くなり飛び込んできた2匹は、それぞれの主人の足元にぴったりと寄り添った。
先ほどよりも身綺麗になっている2匹に疑問を感じながらも、ジェイデンは相棒たちを兄へ紹介する。

「私の騎獣のルーと、セオドアの相棒のギードです」

それぞれ大人しくお座りをしているが、ベイルートを警戒するようにじっと見ている。
一角狼の彼らは、主人に忠実で誇り高い。
たとえ今は黒い子犬にしか見えなくても、である。

「かわいい子犬にしか見えないが、恐ろしい魔力だな」

ベイルートはそう言って2匹をじっと見た。

子犬に擬態すると同時に、2匹は魔力を偽装している。
何気ないように言ったベイルートだったが、魔力探知に優れていないと見破ることは不可能だった。

「北の屋敷裏の禁足地の森で出会いました。まだ今より小さい赤ん坊の頃でしたが、近づくと風魔法が飛んできて驚きましたよ」

毛を逆立て、尻尾をピンと伸ばして威嚇してきたことを思い出して、ジェイデンが笑って言った。群れからはぐれ、2匹で丸まって震えていた仔狼だった。

保護してやろうと近づいたジェイデンたちだったが、怯えて見境なく風魔法を飛ばしてくるため、近づくのに苦労したものだ。彼らは幼く、まだ自身の魔力をコントロールできていなかった。

「そんな幼い頃から魔法を使える魔獣がいるのか?」

「細かい風刃が飛んできましたよ。狙っているわけではなかったようで、あまり当たりませんでしたけど、全方位に飛ばしてきたので苦労しました。魔獣に関しては、私よりもセオドアが詳しいですよ」

そう言ってジェイデンはそれとなくセオドアに水を向けた。

「禁足地の森には、人間の手が入っていないので強い個体が多いです。魔獣は弱肉強食ですので、弱い個体はすぐに淘汰されてゆきます」

「それは他の地でも同じだろう。人が住まぬ地だから魔獣がいるのか、強い魔獣がいるから人が住めぬのかは知らんがな」

「…そうですね。ですが、あの地は建国時より禁足地とされてきました。古来から棲みついている古い魔獣は多くいます。一角狼は騎獣としては特級とされていますが、彼らも森の頂点にはおりません」

「他にどんな魔獣がいるんだ?」

「スライムも、他では見ない黒や白い個体がいましたね。後は大きな所で言うと、ワイバーンや巨石人形もいました。古い竜の巣跡と思われる遺跡も見つけています。詳しくは私がまとめた論文がありますので、後でお届けしましょう」

「…竜だと?」

「巣跡です。竜を目撃したわけではありません」

「それでも大きな発見だ。その論文は発表したのか?」

「いえ、証拠に欠ける部分が大きいのでまだ…。そもそも発表する気はありません。私の研究は趣味ですので」

「趣味か」

「はい、趣味です」

ロンデナート家の禁足地の森が踏み荒らされるのは、彼の本意ではないのだ。
そもそも禁足地である。
セオドアはあの森をなぜ禁足地にしたのか、ロンデナート家の古文書を読んでみたいと常々思っていたが、ここでは軽々しく口にはできなかった。





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