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日本人観光客を含めた外国人にも、なかなか人気のBARのようだった。
場所もユウが宿泊するホテルから近いし、治安も良い。女性が一人で訪れても、安心して楽しめるくらいに。
これなら、犯罪に巻き込まれる心配もないだろう……ユウは、そう思った。
だから、ユウは行ってしまったのだ。
台湾公演が大成功で幕を下ろした、その夜に。
――――しかし、それが間違いだったらしい。
BARへ行ってはみたものの、ユウを待っていた様子の件の人物の姿は見当たらなかった。
なので、ユウは早々にホテルへ帰る事にしたのだが、店を出るところで妙な男に後ろからガバッと覆いかぶされたのだ。
「っ! 」
驚て振り返ったら、全く知らない男がニコニコ笑って声を掛けてきた。
「もしかして、畠山ユウじゃねーの! 」
日本語だ。日本人か?
年の頃は、多分25歳前後。身長はユウより少しだけ高いが、身体の方は鍛えているのか結構筋肉質のようで、ユウより一回り大きい印象だ。
髪は赤に染めていて、左耳に大きなピアスをしている。かなり派手だが、顔だちもハッキリとした目鼻立ちをしているので、それが妙に似合っていた。
男は更に畳みかけて来た。
「ね、ユウっしょ? 」
「……人違いです」
ユウはそう言って、男の腕から逃れるように身体を捩る。
「ちょっ……おい――」
男は更に腕を伸ばそうとしてきたが、ここは人通りも多くこれ以上は悪目立ちすると思い直したか、存外大人しく引き下がった。
「ユウちゃん、またね~」
「? 」
何の意味だか解らなかったが、とにかくその晩はホテルへと戻った……。
ようするに、ユウは最後に不可解な目に遭って、台湾を後にしたワケだが。
まさかそれから一か月経って、再びこのような事が起こるとは!
場所もユウが宿泊するホテルから近いし、治安も良い。女性が一人で訪れても、安心して楽しめるくらいに。
これなら、犯罪に巻き込まれる心配もないだろう……ユウは、そう思った。
だから、ユウは行ってしまったのだ。
台湾公演が大成功で幕を下ろした、その夜に。
――――しかし、それが間違いだったらしい。
BARへ行ってはみたものの、ユウを待っていた様子の件の人物の姿は見当たらなかった。
なので、ユウは早々にホテルへ帰る事にしたのだが、店を出るところで妙な男に後ろからガバッと覆いかぶされたのだ。
「っ! 」
驚て振り返ったら、全く知らない男がニコニコ笑って声を掛けてきた。
「もしかして、畠山ユウじゃねーの! 」
日本語だ。日本人か?
年の頃は、多分25歳前後。身長はユウより少しだけ高いが、身体の方は鍛えているのか結構筋肉質のようで、ユウより一回り大きい印象だ。
髪は赤に染めていて、左耳に大きなピアスをしている。かなり派手だが、顔だちもハッキリとした目鼻立ちをしているので、それが妙に似合っていた。
男は更に畳みかけて来た。
「ね、ユウっしょ? 」
「……人違いです」
ユウはそう言って、男の腕から逃れるように身体を捩る。
「ちょっ……おい――」
男は更に腕を伸ばそうとしてきたが、ここは人通りも多くこれ以上は悪目立ちすると思い直したか、存外大人しく引き下がった。
「ユウちゃん、またね~」
「? 」
何の意味だか解らなかったが、とにかくその晩はホテルへと戻った……。
ようするに、ユウは最後に不可解な目に遭って、台湾を後にしたワケだが。
まさかそれから一か月経って、再びこのような事が起こるとは!
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