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Worrisome person
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今は、周囲の雑音に惑わされずに、悠々自適な研究ライフを送っているらしいが。
「でも、北欧にだってアルファもいればベータもいる。あの可愛い東洋人を狙っているオオカミは多いっていうウワサだねぇ」
「――そんな……48にもなったオメガ男体に――」
采が『そんなバカなと笑うと』、恵美は大真面目に答えた。
「歳なんか関係ないわよ。この雑誌を見ればわかるでしょう? 奏は、可愛くて魅力的なのよ……特に、子供を産んでからね」
そう、奏は達実を産んでから、とても魅力的に変化していたのである。
元々華奢で質素だった彼は、どちらかというとみすぼらしいとか弱々しいとかいう評価が当て嵌まるような雰囲気だったのに、妊娠、出産を機にとても麗しい可憐な華に変わったのだ。
穏やかに微笑みを浮かべる様子は、嫋やかな芙蓉のようだともっぱらの評判である。
彼の、あの細い手を取ってエスコートしたいと、あらゆる階級のアルファやベータ達が熱望するようになったのだが。
『みんな、優しくて親切ですね』
奏はその一言で笑ってやり過し、達実の世話と研究にばかり没頭してしまった。
「――あとはまぁ、御存じの通りよ」
「でも、九条の遺産だって相当魅力的なんじゃないですか? 達実はウチの籍に入ってるんだし、あいつだって本心では――」
「彼は、研究で次々と結果を出して多くの特許を持っているのよ? 自分自身の才能で一財産築いたわけだから、今更他所の家の財産なんか興味も無いし要らないってことね」
やはり、結城奏と達実を『実は守銭奴だ』と罵る事は見当違いらしい。
どうせ後で、やれ遺産相続の権利があるだなんだとハイエナのように言い出すのだろうと思っていた。
そこで、正義と正論を振りかざして堂々と糾弾してやろうと思っていたのだが……アテが外れた。
これでは本当に、自分は用も無いのに、無理に達実を日本へ呼び出した間抜けではないか。
憮然として、采は口を開いた。
「恵美さん――じゃあ、オレが間違っていたっていうんですか? 」
「あんたは、正しいわよ」
あっけらかんと言うと、恵美はカードを采へ差し出した。
「これ、あの子に渡してやって。日本にいる間は、このカードを使ってって」
「……」
「日本にいる間くらいは、こっちが面倒見るのが筋よ。諸々の手続きが終わるまで、あの子のお守りをよろしくね」
「そんなっ! 」
「仕事の方は、一ヵ月の休暇を空けてあげるわ。あの子と、少しは仲良くなりなさいよ。あんたの方がずーっと年上なんだから、ぶつかりそうになっても譲歩してやりなさい」
「恵美さん――」
「あんた達はっ! 」
強い声で言うと、恵美はキッと眦を吊り上げた。
「義理だけど兄弟なんだから、兄のあんたがちゃんと面倒見なさい! 分かったわね? 」
ある意味、母親代わりで育ててもらった恵美には強く言い返せない。
采は渋々、そのカードを受け取ったのだった。
「でも、北欧にだってアルファもいればベータもいる。あの可愛い東洋人を狙っているオオカミは多いっていうウワサだねぇ」
「――そんな……48にもなったオメガ男体に――」
采が『そんなバカなと笑うと』、恵美は大真面目に答えた。
「歳なんか関係ないわよ。この雑誌を見ればわかるでしょう? 奏は、可愛くて魅力的なのよ……特に、子供を産んでからね」
そう、奏は達実を産んでから、とても魅力的に変化していたのである。
元々華奢で質素だった彼は、どちらかというとみすぼらしいとか弱々しいとかいう評価が当て嵌まるような雰囲気だったのに、妊娠、出産を機にとても麗しい可憐な華に変わったのだ。
穏やかに微笑みを浮かべる様子は、嫋やかな芙蓉のようだともっぱらの評判である。
彼の、あの細い手を取ってエスコートしたいと、あらゆる階級のアルファやベータ達が熱望するようになったのだが。
『みんな、優しくて親切ですね』
奏はその一言で笑ってやり過し、達実の世話と研究にばかり没頭してしまった。
「――あとはまぁ、御存じの通りよ」
「でも、九条の遺産だって相当魅力的なんじゃないですか? 達実はウチの籍に入ってるんだし、あいつだって本心では――」
「彼は、研究で次々と結果を出して多くの特許を持っているのよ? 自分自身の才能で一財産築いたわけだから、今更他所の家の財産なんか興味も無いし要らないってことね」
やはり、結城奏と達実を『実は守銭奴だ』と罵る事は見当違いらしい。
どうせ後で、やれ遺産相続の権利があるだなんだとハイエナのように言い出すのだろうと思っていた。
そこで、正義と正論を振りかざして堂々と糾弾してやろうと思っていたのだが……アテが外れた。
これでは本当に、自分は用も無いのに、無理に達実を日本へ呼び出した間抜けではないか。
憮然として、采は口を開いた。
「恵美さん――じゃあ、オレが間違っていたっていうんですか? 」
「あんたは、正しいわよ」
あっけらかんと言うと、恵美はカードを采へ差し出した。
「これ、あの子に渡してやって。日本にいる間は、このカードを使ってって」
「……」
「日本にいる間くらいは、こっちが面倒見るのが筋よ。諸々の手続きが終わるまで、あの子のお守りをよろしくね」
「そんなっ! 」
「仕事の方は、一ヵ月の休暇を空けてあげるわ。あの子と、少しは仲良くなりなさいよ。あんたの方がずーっと年上なんだから、ぶつかりそうになっても譲歩してやりなさい」
「恵美さん――」
「あんた達はっ! 」
強い声で言うと、恵美はキッと眦を吊り上げた。
「義理だけど兄弟なんだから、兄のあんたがちゃんと面倒見なさい! 分かったわね? 」
ある意味、母親代わりで育ててもらった恵美には強く言い返せない。
采は渋々、そのカードを受け取ったのだった。
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