ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

文字の大きさ
7 / 116
Worrisome person

6

しおりを挟む
 昔から達実は、采に対しては攻撃的だった。

 叔母である恵美には敬意を以って接しているクセに、采にだけは違う。

 どうしてこんなに、こいつに憎まれ口を叩かれなければならないんだ!?

 そう考えると、イライラして仕方がない!

(しかも何だ、コイツのこの態度は! 久しぶりに会って少しは成長したかと思っていたら、余計にヒドクなっているじゃないか。大人になったと思ったのは、見た目だけか!? )

 18歳になった達実は少年から青年へ変わっていて、外見だけは、うっとりする程にますます麗しくなっていたというのに。

 口を開けば、聞くに堪えない言葉ばかりが飛び出してくる。

 ここはしっかりと、年長者である自分が義弟を教育しなければ。それが、兄としての義務だろう。


――――と、采は思った。


「達実! 大人しくオレの言う事を聞くんだ。今までは、子供の喋ることだと思って大目に見て来たが……お前も、もう18だろう? 結婚だって出来る年齢なんだ。自分でも、さっき番が云々と口にしていたじゃないか。いい加減に――」

「……て」

「? 」

「肩が痛い、外して」

 思いがけず弱々しい声が漏れて来た事に目を見張ると、達実は瞳を潤ませながら采を見上げてきた。

「僕――――先月バイクでコケて、脱臼したばっかりなんだよ。肩が痺れて、力が入らない……」

 それは大変だ!

 采は慌てて、ネクタイを解いた。

 すると……。


――――ドスッ!!


「う……」

 形勢逆転だ。采は床に押さえ付けられてしまった上、今度は達実が采に馬乗りになる。

 達実は得意気な顔で、采を見下ろした。

「バーカ。ちょろいんだよ、あんた」

「う――」

「マウント取ったんだから、これでオレの勝ちだな」

 達実は勝利宣言をして気が済んだのか、今度こそ部屋を出て行こうと腰を上げる。

 だが、達実は考え違いをしていた。

 采が、ずっと手加減をしていた事を。

「――――絶対、許さん」

 怒り心頭に達し、采はそう低く呻くと、達実の腰を抱いてそのまま勢いよく床へと転がる!

 そうして間髪入れず、達実の鳩尾部分へ拳を当てて強くそこを圧迫した。

 こうなると、常人は息が出来なくなり、満足な抵抗も封じられる。

 苦しいと訴える事も不可能になり、達実は顔を歪ませた。

「……ぅ」

 微かに腕を動かして抵抗しようとするが、今度は、采はもう油断しない。

 無言のまま、強く拳をギュッと捻じり込む。

 とうとう息が出来なくった達実は、フッと目の前が暗くなった。

「っと! 」

 ガクリと力の抜けた身体を前に、頭に血がのぼっていた采もさすがに冷静になる。

(しまった! つい、やり過ぎた――)

 采は慌てて、達実の頬をペシペシと叩く。

「おい、しっかりしろ! 」

「……」

「参ったな……息はしているよな? 」

 不安になって、采は達実の唇へと耳を寄せる。

 それは、呼吸をしているか確認しようとしての行為だったが。

――――だが、達実の紅く濡れた唇を前にして、采の心臓は不意にドクンと強く鼓動を打った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...