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Liar and liar
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そのセリフを待っていたかのように、相手は舌をペロリと出して、露骨にフェラチオを連想させるような仕草を見せつけてきた。
どうやら反応の悪い采を、何とかその気にさせようという魂胆らしい。
その仕草はセクシーで可愛いと言えなくもないが、どうにも下品に見えてしまうのは否めない。
――――それにやはり、今日はどうにも気分が乗らない。
一昨日、義弟相手に感じた強烈な劣情に比べると、明らかに雲泥の差だ。
そんな采の感情は、直接的にオスの部分にも反映されたようだ。
「――んっ! ちょっと、今日本当に元気ないじゃない……」
得意の舌伎を駆使しているのに、全く反応を見せないペニスを前に、不満そうな様子で青年は顔を上げる。
「……やっぱ、今日ってマズかった? 」
ここで、やれインポだ何だと騒がない所は愛人の立場を心得ているが……溜め息をついて、采は首を振った。
「お前は関係ない。これは、オレの問題だ」
「……? 」
「一昨日、義弟とやり合ってな。その時のムカムカが、どうにも尾を引いているらしい」
正確に言うと、達実に対して感じた『熱』が強烈過ぎて、他に対して性欲が湧かないのだ。
しかしまさか、こうして実際にナニを咥えられても勃起しないとは思わなかった。
これは、かなり重症かもしれない。
難しい顔をしていると、相手もバツが悪いような顔になって口を開いた。
「用がないなら、オレ帰ろうかな……」
「ああ、悪いが今日はそうしてくれ――――それから、これ」
「? 」
スッと、用意していたカードと薔薇を一輪差し出す。
「今日は、付き合ってから一年だろう。一緒にいてやれないが、これで美味い物でも欲しい物でも好きなのを買え」
采としたら、特にそれに意味を持たせたつもりはなかったが、相手はそうは取らなかったらしい。
乙女のように頬を染め、キラキラと瞳を輝かせたかと思ったら、本当に嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ありがとう、采! オレ嬉しい!! 」
「――――そうか、よかったな」
「あのさぁ、本当はオレ……」
と、何か言い掛けたところで、采の携帯に着信があった。
見ると、一昨日ケンカ別れしたばかりの達実からだった。
「……なんだ? 」
そう努めて冷静に口を開いたところ、向こうからは刺々しい声が返って来た。
『なんだ、じゃないよ。あのあと、連絡がいつ来るのかと思って待ってたのに、全然音沙汰が無いじゃないか。僕は日本の葬式って知らないんだぜ? ダディの通夜と葬式の時は、奏にくっ付いていたから何とかなったけど――――四十九日って何するんだか全然わかんねーんだ。もっとちゃんと教えろよな』
「急に協力的になったな。そっちから訊いて来るなんて、空から槍でも降って来るんじゃないのか? 」
『バッカじゃねーの! とにかく、今、あんたのマンション前まで来てるんだ。これから上がらせてもらうぞ』
それだけ告げると、電話は切れてしまった。
仕方なしに、采はマンションのロックを解除するが――――そこでハッとして、先程から居る愛人の存在を思い出した。
「悪いが、義弟が訪ねて来たらしい。何か話があるなら、手短に頼む」
「い、いいよ……また次でも……」
そう言うと、愛人のオメガはそそくさと帰り支度を始めた。
その後ろ姿に視線を投げ掛けながら、采はポツリと呟く。
「アルファが、アルファに惹かれるなんて――――そんな事が、果たしてあるものなのかな……」
そのセリフにピクリと肩が震えた気がしたが、相手は素っ気ない様子のまま「さぁ? そんなの気のせいじゃないの」と答えた。
「気のせい、か――」
「そうだよ。そんなバカな事があるワケがない」
どうやら反応の悪い采を、何とかその気にさせようという魂胆らしい。
その仕草はセクシーで可愛いと言えなくもないが、どうにも下品に見えてしまうのは否めない。
――――それにやはり、今日はどうにも気分が乗らない。
一昨日、義弟相手に感じた強烈な劣情に比べると、明らかに雲泥の差だ。
そんな采の感情は、直接的にオスの部分にも反映されたようだ。
「――んっ! ちょっと、今日本当に元気ないじゃない……」
得意の舌伎を駆使しているのに、全く反応を見せないペニスを前に、不満そうな様子で青年は顔を上げる。
「……やっぱ、今日ってマズかった? 」
ここで、やれインポだ何だと騒がない所は愛人の立場を心得ているが……溜め息をついて、采は首を振った。
「お前は関係ない。これは、オレの問題だ」
「……? 」
「一昨日、義弟とやり合ってな。その時のムカムカが、どうにも尾を引いているらしい」
正確に言うと、達実に対して感じた『熱』が強烈過ぎて、他に対して性欲が湧かないのだ。
しかしまさか、こうして実際にナニを咥えられても勃起しないとは思わなかった。
これは、かなり重症かもしれない。
難しい顔をしていると、相手もバツが悪いような顔になって口を開いた。
「用がないなら、オレ帰ろうかな……」
「ああ、悪いが今日はそうしてくれ――――それから、これ」
「? 」
スッと、用意していたカードと薔薇を一輪差し出す。
「今日は、付き合ってから一年だろう。一緒にいてやれないが、これで美味い物でも欲しい物でも好きなのを買え」
采としたら、特にそれに意味を持たせたつもりはなかったが、相手はそうは取らなかったらしい。
乙女のように頬を染め、キラキラと瞳を輝かせたかと思ったら、本当に嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ありがとう、采! オレ嬉しい!! 」
「――――そうか、よかったな」
「あのさぁ、本当はオレ……」
と、何か言い掛けたところで、采の携帯に着信があった。
見ると、一昨日ケンカ別れしたばかりの達実からだった。
「……なんだ? 」
そう努めて冷静に口を開いたところ、向こうからは刺々しい声が返って来た。
『なんだ、じゃないよ。あのあと、連絡がいつ来るのかと思って待ってたのに、全然音沙汰が無いじゃないか。僕は日本の葬式って知らないんだぜ? ダディの通夜と葬式の時は、奏にくっ付いていたから何とかなったけど――――四十九日って何するんだか全然わかんねーんだ。もっとちゃんと教えろよな』
「急に協力的になったな。そっちから訊いて来るなんて、空から槍でも降って来るんじゃないのか? 」
『バッカじゃねーの! とにかく、今、あんたのマンション前まで来てるんだ。これから上がらせてもらうぞ』
それだけ告げると、電話は切れてしまった。
仕方なしに、采はマンションのロックを解除するが――――そこでハッとして、先程から居る愛人の存在を思い出した。
「悪いが、義弟が訪ねて来たらしい。何か話があるなら、手短に頼む」
「い、いいよ……また次でも……」
そう言うと、愛人のオメガはそそくさと帰り支度を始めた。
その後ろ姿に視線を投げ掛けながら、采はポツリと呟く。
「アルファが、アルファに惹かれるなんて――――そんな事が、果たしてあるものなのかな……」
そのセリフにピクリと肩が震えた気がしたが、相手は素っ気ない様子のまま「さぁ? そんなの気のせいじゃないの」と答えた。
「気のせい、か――」
「そうだよ。そんなバカな事があるワケがない」
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