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Liar and liar
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どうやら自分は、この人物と入れ違いに訪ねて来たらしい。
(もしかしたら、追い出す形になってしまったかな……)
――――それならば、この客人に対して申し訳ない事をしてしまった。
達実はそんな事を考えながら、降りてきた相手へ視線を向ける。
すると、相手はキッと敵意を込めて睨んできた。
「? 」
「あんたが、采の言っていたアルファか? 」
(采の言っていた? あいつ、僕の悪口を相手構わず触れ回っているのか? )
不愉快に思い、達実はチッと舌打ちをする。
すると、相手は少し怯えたような表情になったが、引き下がる気はないのか、肩に力入れて一歩前に踏み出してきた。
「……少し……じゃないけど――――き、綺麗だからって、オメガのフェロモンに勝てると思わないでよねっ」
「は? 」
「あんた、アルファなんだろう! だったら、オメガと張り合うようなマネするな! 」
「――いったい、何のことだ? 」
「オレはあんたなんかに負けないからな! バーカ!! 」
そう一方的に言うと、相手は鼻息も荒く去って行った。
漂う残り香りから、今の相手がオメガだというのは分かったが。
……見た目だけは、線が細くて華奢な、少年のように可愛いオメガと言えなくもないが。
そのオメガに、いきなり宣戦布告をされて何の事だか――――というか、なんで自分が一方的に『バカ』と、初対面の相手に罵倒されなければならないんだ。
そう思うと、達実はムカムカと怒りが湧いて来た。
そうしていたところ、背後から遠慮がちに声が掛けられる。
「あの、お客様。失礼ですが、九条さまが――」
「なんだよ! 」
キッと声の主を睨み返すと、ベータのコンシェルジュらしき男性は委縮したような様子になった。
――――達実は自覚がなかったが、美人が怒ると迫力が増して、声を掛けづらい雰囲気が倍増するのだ。
ましてや、彼はアルファだ。
その気迫たるや、並の相手では手に余る。
見つめられたら、魔力を宿したかのようなその深い瞳の色に魅入られ、動く事すら忘れたように凍り付く。
一分一秒も、彼から視線を逸らす事が不可能になってしまう。
達実は、まだ18にして、威風堂々としたアルファの気高い風格を既に身に着けており、それは到底、凡庸な並のアルファには及ばない領域にまで達していた。
言葉も忘れたように呆ける相手を、達実は訝し気に見遣る。
「――だから、僕に何の用? 」
首を傾げて訊いた達実にハッとして、コンシェルジュは焦りながら、取り繕うように微笑みを浮かべた。
「ああ、その――結城達実様ですよね? く、九条さまに、お部屋まで案内するよう申し付かりました。わたしくしはコンシェルジュの尾井川と申します」
「そうか、ありがとう」
そう礼を言うと、達実は社交辞令で微かに口許へ笑みを刷く。
艶やかに咲き誇る大輪の薔薇のような達実は、誰よりも美しく優雅で華麗だ。
コンシェルジュは顔を真っ赤にしながら、急いで達実から目線を外し、エレベーターの開ボタンを押した。
「ど、どうぞ」
「ありがとう」
しかし、達実の方はコンシェルジュの動揺する様子に気付かず、険しい表情になってエレベーターへと足を踏み入れる。
(あいつ――――やっぱり、気に入らない)
達実の頭を占めるのは、目前に迫った義父の法要よりも、このイライラの原因である九条采の事である。
どうしても胸のつかえを取り去りたくて、こうして自ら出向いてきた。
采には、やはり直接会って問い質したい。
先日のキスの事と――――それに、今の生意気なオメガの事も。
不機嫌そのままの顔で、達実はふぅと溜め息をつく。
すると、ビクビクしながら様子を伺っていたらしいコンシェルジュが声をかけてきた。
(もしかしたら、追い出す形になってしまったかな……)
――――それならば、この客人に対して申し訳ない事をしてしまった。
達実はそんな事を考えながら、降りてきた相手へ視線を向ける。
すると、相手はキッと敵意を込めて睨んできた。
「? 」
「あんたが、采の言っていたアルファか? 」
(采の言っていた? あいつ、僕の悪口を相手構わず触れ回っているのか? )
不愉快に思い、達実はチッと舌打ちをする。
すると、相手は少し怯えたような表情になったが、引き下がる気はないのか、肩に力入れて一歩前に踏み出してきた。
「……少し……じゃないけど――――き、綺麗だからって、オメガのフェロモンに勝てると思わないでよねっ」
「は? 」
「あんた、アルファなんだろう! だったら、オメガと張り合うようなマネするな! 」
「――いったい、何のことだ? 」
「オレはあんたなんかに負けないからな! バーカ!! 」
そう一方的に言うと、相手は鼻息も荒く去って行った。
漂う残り香りから、今の相手がオメガだというのは分かったが。
……見た目だけは、線が細くて華奢な、少年のように可愛いオメガと言えなくもないが。
そのオメガに、いきなり宣戦布告をされて何の事だか――――というか、なんで自分が一方的に『バカ』と、初対面の相手に罵倒されなければならないんだ。
そう思うと、達実はムカムカと怒りが湧いて来た。
そうしていたところ、背後から遠慮がちに声が掛けられる。
「あの、お客様。失礼ですが、九条さまが――」
「なんだよ! 」
キッと声の主を睨み返すと、ベータのコンシェルジュらしき男性は委縮したような様子になった。
――――達実は自覚がなかったが、美人が怒ると迫力が増して、声を掛けづらい雰囲気が倍増するのだ。
ましてや、彼はアルファだ。
その気迫たるや、並の相手では手に余る。
見つめられたら、魔力を宿したかのようなその深い瞳の色に魅入られ、動く事すら忘れたように凍り付く。
一分一秒も、彼から視線を逸らす事が不可能になってしまう。
達実は、まだ18にして、威風堂々としたアルファの気高い風格を既に身に着けており、それは到底、凡庸な並のアルファには及ばない領域にまで達していた。
言葉も忘れたように呆ける相手を、達実は訝し気に見遣る。
「――だから、僕に何の用? 」
首を傾げて訊いた達実にハッとして、コンシェルジュは焦りながら、取り繕うように微笑みを浮かべた。
「ああ、その――結城達実様ですよね? く、九条さまに、お部屋まで案内するよう申し付かりました。わたしくしはコンシェルジュの尾井川と申します」
「そうか、ありがとう」
そう礼を言うと、達実は社交辞令で微かに口許へ笑みを刷く。
艶やかに咲き誇る大輪の薔薇のような達実は、誰よりも美しく優雅で華麗だ。
コンシェルジュは顔を真っ赤にしながら、急いで達実から目線を外し、エレベーターの開ボタンを押した。
「ど、どうぞ」
「ありがとう」
しかし、達実の方はコンシェルジュの動揺する様子に気付かず、険しい表情になってエレベーターへと足を踏み入れる。
(あいつ――――やっぱり、気に入らない)
達実の頭を占めるのは、目前に迫った義父の法要よりも、このイライラの原因である九条采の事である。
どうしても胸のつかえを取り去りたくて、こうして自ら出向いてきた。
采には、やはり直接会って問い質したい。
先日のキスの事と――――それに、今の生意気なオメガの事も。
不機嫌そのままの顔で、達実はふぅと溜め息をつく。
すると、ビクビクしながら様子を伺っていたらしいコンシェルジュが声をかけてきた。
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