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Liar and liar
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息が詰まって言葉にならないが、達実の自己評価の出鱈目ぶりに、采は抗議の声を上げようとする。
「誰が、いつ、そんな事を言った……! 」
「うるさい――!! 」
また拳を握ると、馬乗りのまま采の腹を殴る。
この度重なる攻撃には流石にたまらず、采は手加減するのを忘れて手刀を払った。
采は、空手の有段者だ。
手加減の無いそれは達実の脇腹を薙ぎ、彼の息を瞬間止めた。
「っ――」
「どけ! 」
強い声で言うと、采は達実の上体を腕で押して強引に引き剥がす。
不意打ちを喰らった達実は、殴られた腹を抱えて絨毯の上にうずくまった。
だが、腹を抱えて膝をつきたいのは采も同じである。
二回も達実の拳を喰らったのだ。
ハッキリ言って、相当痛い。
しかし采は、兄としての威厳を保ちたいという意地だけで何とかそれを堪えると、出来るだけ毅然とした態度を取りつつ、説教の為に口を開いた。
「バカな事ばかり言うな! オレの愛人が気に入らないのはよく分かったが、何でそれでオレに絡んで来るんだ。とにかくお前は、オレの弟だ。嫌いとか好きとか、あのオメガとは全然違う次元の話だろう! 」
「う……」
しかし、返って来たのは弱々しい達実の呻き声である。
もしや、手刀が決まり過ぎて肋骨にヒビでも入ったか?
急に不安になった采は、うずくまったままの達実へ駆け寄った。
「どうしたっ!? どこか――」
だが、そのセリフは強制的に途切れさせられた。
達実が、近寄ってきた采の唇をまたもや奪ったからである。
しかし今度は直ぐに唇を離すと、綺麗な瞳から真珠のような涙をポロポロとこぼした。
「采は――僕のことは、好きじゃないのか? 」
「好きって……だ、だから……それは――」
「『それは』?……なに? 」
「う……」
達実の真剣な眼差しに、采の心が揺れる。
思わず、口が滑りそうになってしまう。
『お前が好きだ』と。
『誰よりも美しいお前から、いつの間にか目が離せなくなっていた』と。
――――だが…………。
「オレは、お前の事は……好きじゃない! 」
と、心とは裏腹な事を口走ってしまった。
目に見えて分かるくらいに青ざめた達実に向かい、采は視線を逸らしながら、続けて断言する。
「オレもお前もアルファだ。アルファ同士でなんて、そもそも恋愛の対象になる訳がないだろう」
その嘘を誤魔化すように、采は立て続けにひどい嘘を口にする。
「お前はガキで生意気だし、可愛げも無い。ましてや義理とはいえ弟だ。二十以上も歳の離れた、な」
「僕はガキじゃない。もう18だ! 」
「オレから見たら、充分にガキだ。まったく――親父のヤツにも困ったもんだよ。純愛だか何だか知らないが、番が他所で作った子供を九条の籍に入れて――」
と、いつもの憎まれ口を叩こうとしたところ、達実は反撃する様子も無くフラリと立ち上がった。
通常なら、ここで『うるさいっこのハゲ! 』と、やり返して来るはずなのに。
しかし翠玉の瞳からは、途切れることなく涙がこぼれている。
采は、自分がどうしようもない極悪人になったような気がしてきて狼狽えた。
「あ――あの、な……」
とりあえず何か言い繕おうと言葉を探す采に、達実はキッと視線を向ける。
そうして、押し殺すような声で呟いた。
「誰が、いつ、そんな事を言った……! 」
「うるさい――!! 」
また拳を握ると、馬乗りのまま采の腹を殴る。
この度重なる攻撃には流石にたまらず、采は手加減するのを忘れて手刀を払った。
采は、空手の有段者だ。
手加減の無いそれは達実の脇腹を薙ぎ、彼の息を瞬間止めた。
「っ――」
「どけ! 」
強い声で言うと、采は達実の上体を腕で押して強引に引き剥がす。
不意打ちを喰らった達実は、殴られた腹を抱えて絨毯の上にうずくまった。
だが、腹を抱えて膝をつきたいのは采も同じである。
二回も達実の拳を喰らったのだ。
ハッキリ言って、相当痛い。
しかし采は、兄としての威厳を保ちたいという意地だけで何とかそれを堪えると、出来るだけ毅然とした態度を取りつつ、説教の為に口を開いた。
「バカな事ばかり言うな! オレの愛人が気に入らないのはよく分かったが、何でそれでオレに絡んで来るんだ。とにかくお前は、オレの弟だ。嫌いとか好きとか、あのオメガとは全然違う次元の話だろう! 」
「う……」
しかし、返って来たのは弱々しい達実の呻き声である。
もしや、手刀が決まり過ぎて肋骨にヒビでも入ったか?
急に不安になった采は、うずくまったままの達実へ駆け寄った。
「どうしたっ!? どこか――」
だが、そのセリフは強制的に途切れさせられた。
達実が、近寄ってきた采の唇をまたもや奪ったからである。
しかし今度は直ぐに唇を離すと、綺麗な瞳から真珠のような涙をポロポロとこぼした。
「采は――僕のことは、好きじゃないのか? 」
「好きって……だ、だから……それは――」
「『それは』?……なに? 」
「う……」
達実の真剣な眼差しに、采の心が揺れる。
思わず、口が滑りそうになってしまう。
『お前が好きだ』と。
『誰よりも美しいお前から、いつの間にか目が離せなくなっていた』と。
――――だが…………。
「オレは、お前の事は……好きじゃない! 」
と、心とは裏腹な事を口走ってしまった。
目に見えて分かるくらいに青ざめた達実に向かい、采は視線を逸らしながら、続けて断言する。
「オレもお前もアルファだ。アルファ同士でなんて、そもそも恋愛の対象になる訳がないだろう」
その嘘を誤魔化すように、采は立て続けにひどい嘘を口にする。
「お前はガキで生意気だし、可愛げも無い。ましてや義理とはいえ弟だ。二十以上も歳の離れた、な」
「僕はガキじゃない。もう18だ! 」
「オレから見たら、充分にガキだ。まったく――親父のヤツにも困ったもんだよ。純愛だか何だか知らないが、番が他所で作った子供を九条の籍に入れて――」
と、いつもの憎まれ口を叩こうとしたところ、達実は反撃する様子も無くフラリと立ち上がった。
通常なら、ここで『うるさいっこのハゲ! 』と、やり返して来るはずなのに。
しかし翠玉の瞳からは、途切れることなく涙がこぼれている。
采は、自分がどうしようもない極悪人になったような気がしてきて狼狽えた。
「あ――あの、な……」
とりあえず何か言い繕おうと言葉を探す采に、達実はキッと視線を向ける。
そうして、押し殺すような声で呟いた。
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