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Depressed rose
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達実は、豪奢なカウチに身を横たえ、憂鬱そうな様子で佇んでいた。
彼が現在居るこの場所は、アレンが借り上げたコテージの一室である。
前回泊ったホテルは夜景を売りにする高層ビルで、アレンはそこのスイートに泊まったわけだが、今度は平屋建てで横に広いタイプの宿を選んだらしい。
何とこの宿は、庭やプールを含め、一棟分が1haもの面積を占めているそうだ。
なので、窓からは隣のコテージの住人など見えないし、車道も窓から見える場所には通っていないので、車の走る音も聞こえない。
一切の喧騒から切り離されている、完全なプライベート空間だ。
本物の金持ちの家は縦ではなく横に広い――――という話を聞いた事があるが、きっとアレンの住まうアメリカの屋敷も、このような造りなのだろうと思う。
だが、どんなに贅沢で豪華な場所でも、達実の心は依然として沈んだままだ。
(僕は……どうしたらいいんだろう)
アレンの真摯な求婚は、達実の心を揺さぶり続けている。
ありとあらゆる華を侍らせて、この世の春を謳歌する事が約束されているようなあのアレンが、恭しく膝を折って、達実へ愛の言葉を捧げて来たのだ。
それが嬉しくないといえば、ウソになる。
今まで、多くの人間から、蝶よ花よと持て囃されはしたが、ここまで真剣にプロポーズをしてきた男はいなかった。
アレンは、達実が自分と同じアルファであるにも拘わらず、堂々と『番』になろうという。
達実は、可憐で可愛いオメガではない。
身長も180cmあり、決して華奢ではない。
どちらかというと、アルファの特徴がよく体現されている部類に入る体格だろう。
――――それであるにも拘わらず、アレンは達実のことを可愛いと言ってくれる。
その言葉は、とても嬉しい。
しかし、そのセリフを本当に言ってもらいたい相手は…………違う相手だ。
「采……」
達実が恋する相手は、決して言ってはくれない。
想うより想われた方と添い遂げるほうが、幸せになれると皆が言う。
だったら、達実はアレンを選ぶべきだ。
アレンは――――達実のことを、本当に愛しているのだから。
(僕は、もう迷いは捨て去るべきなんだろうな)
それは、もう何度も繰り返した事だ。
第一、達実が想いを寄せる相手である采は、オメガの立野林檎を選んだのだ。
オメガと、アルファ。
尤もスタンダードな、理想的なカップルだ。
そこに、達実が口を出す要素など、どこにもない。
(あいつが、采のマンションで妊娠したって言い出した時は本当に驚いて……そのまま引き返したけど)
アレンの話では、あれは狂言であったらしい。
正直言って、そのことを知らされた時はホッとした。
だが――――。
しかし、その事を采は見抜いていたにも拘わらず、林檎を番にすることを決めたという。
これは、達実にとって青天の霹靂だ。
嘘を承知で『番』に迎え入れていいと言うなど、ハッキリ言って、正気を疑うような事例ではないか。
でも、采はつまり……そのくらい、林檎の事を愛していたという事になる。
その事実が、なにより達実を絶望させる。
(僕は、どうすればいいんだろう)
何度も、それを繰り返した。
アレンの、まるで壊れものを扱うような丁寧な態度。
そして、蕩ける程の愛撫。
それは、達実を煩悶とさせる。
このまま、アレンに全てを委ねてしまいたいと思わせるような――――。
だが、やはり達実は、自身の純愛を捨てる事はできない。
ワガママなのは知っている。
林檎に対してもアレンに対しても、意地悪なのは知っている。
それでも――――達実は、自分の純愛を捨て去ることは出来ない。
彼が現在居るこの場所は、アレンが借り上げたコテージの一室である。
前回泊ったホテルは夜景を売りにする高層ビルで、アレンはそこのスイートに泊まったわけだが、今度は平屋建てで横に広いタイプの宿を選んだらしい。
何とこの宿は、庭やプールを含め、一棟分が1haもの面積を占めているそうだ。
なので、窓からは隣のコテージの住人など見えないし、車道も窓から見える場所には通っていないので、車の走る音も聞こえない。
一切の喧騒から切り離されている、完全なプライベート空間だ。
本物の金持ちの家は縦ではなく横に広い――――という話を聞いた事があるが、きっとアレンの住まうアメリカの屋敷も、このような造りなのだろうと思う。
だが、どんなに贅沢で豪華な場所でも、達実の心は依然として沈んだままだ。
(僕は……どうしたらいいんだろう)
アレンの真摯な求婚は、達実の心を揺さぶり続けている。
ありとあらゆる華を侍らせて、この世の春を謳歌する事が約束されているようなあのアレンが、恭しく膝を折って、達実へ愛の言葉を捧げて来たのだ。
それが嬉しくないといえば、ウソになる。
今まで、多くの人間から、蝶よ花よと持て囃されはしたが、ここまで真剣にプロポーズをしてきた男はいなかった。
アレンは、達実が自分と同じアルファであるにも拘わらず、堂々と『番』になろうという。
達実は、可憐で可愛いオメガではない。
身長も180cmあり、決して華奢ではない。
どちらかというと、アルファの特徴がよく体現されている部類に入る体格だろう。
――――それであるにも拘わらず、アレンは達実のことを可愛いと言ってくれる。
その言葉は、とても嬉しい。
しかし、そのセリフを本当に言ってもらいたい相手は…………違う相手だ。
「采……」
達実が恋する相手は、決して言ってはくれない。
想うより想われた方と添い遂げるほうが、幸せになれると皆が言う。
だったら、達実はアレンを選ぶべきだ。
アレンは――――達実のことを、本当に愛しているのだから。
(僕は、もう迷いは捨て去るべきなんだろうな)
それは、もう何度も繰り返した事だ。
第一、達実が想いを寄せる相手である采は、オメガの立野林檎を選んだのだ。
オメガと、アルファ。
尤もスタンダードな、理想的なカップルだ。
そこに、達実が口を出す要素など、どこにもない。
(あいつが、采のマンションで妊娠したって言い出した時は本当に驚いて……そのまま引き返したけど)
アレンの話では、あれは狂言であったらしい。
正直言って、そのことを知らされた時はホッとした。
だが――――。
しかし、その事を采は見抜いていたにも拘わらず、林檎を番にすることを決めたという。
これは、達実にとって青天の霹靂だ。
嘘を承知で『番』に迎え入れていいと言うなど、ハッキリ言って、正気を疑うような事例ではないか。
でも、采はつまり……そのくらい、林檎の事を愛していたという事になる。
その事実が、なにより達実を絶望させる。
(僕は、どうすればいいんだろう)
何度も、それを繰り返した。
アレンの、まるで壊れものを扱うような丁寧な態度。
そして、蕩ける程の愛撫。
それは、達実を煩悶とさせる。
このまま、アレンに全てを委ねてしまいたいと思わせるような――――。
だが、やはり達実は、自身の純愛を捨てる事はできない。
ワガママなのは知っている。
林檎に対してもアレンに対しても、意地悪なのは知っている。
それでも――――達実は、自分の純愛を捨て去ることは出来ない。
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