ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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Depressed rose

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 でも――――ものの見事に却下されてしまった。

 それは、やっぱり自分が外見も内面も可愛くない所為なんだと思う。

 どうしても、オメガのようにはなれない。

 だって自分は、冷たい“支配者”のアルファなんだから。

『そんな事はないよ。達実は、僕にとって一番可愛くて素敵なアルファだよ』

 耳に心地いい優しい声に、達実はまたポロポロと涙をこぼす。

「でも――僕は、奏みたいに小柄じゃない。身長も180cmあるけど、まだ伸びそうだし……。もしかしたら、采を追い越しちゃうかもしれないんだ。こんなデカい男から好き好って言われても、やっぱり嬉しくないだろうし――」

 だから、可憐で可愛いオメガが羨ましかった。

 愛される人種というのは、やはり『護ってやりたい』と思うような、ああいう人間なんだろうと思うから。

 あの、小狡こずるいオメガである立野林檎も……実際に達実の眼から見ても、華奢で可愛い方だと思う。

 だから采は、林檎の嘘を承知で番にすることを承諾したんだから。

『おや? そこで諦めちゃうの? 』

「だ、だって……完全に僕が邪魔者じゃないか。アルファとオメガのカップルの間に入っていくなんて無理だよ……」

 出会う全ての相手から、美しく麗しいと褒め称えられる達実であったが、自分から誰かを好きになって行動した事はなかった。

 いつだって向こうの方から、愛情を捧げられた。

 その達実が、本気で好きになった相手は――――達実を選んでくれない。

 達実は、自分の恋をどうすればいいのかが分からない。

「やっぱり、僕は諦めるべきなんだと思う……そうして、アレンを選ぶのが一番じゃないかな……」

『それでいいの? 後悔しない? 』

「そんなの――」

 言葉を切り、そして達実は口を開いた。

「でも、仕方ないじゃないか! 」

――――仕方がない。

 そう言うものの、それでは納得できるはずが無いというのも自覚している。

――――どうやら、先日泥酔した時に、アレンから何か良からぬことをされそうになったらしいが――――

 鬼のような顔で達実の身体を検分した采を思い出し、達実はブルリと震える。

 さすがの達実も、あの時の只ならぬ采の形相をかんがみると、今はアレが何だったのか察している。

 アレンは達実を泥酔させて、無理に抱こうとしたのだろう。

 そこを、林檎と采に救出された…………。

(そう考えるとあの二人、やっぱり僕が思う以上に仲が良いんだな……)

 オメガとアルファ。

 やはり理想的な組み合わせだ。

 林檎と采の二人を認めるならば、達実は采をあきらめてアレンを選んで、この身をゆだねる決意を固めなければならない。

 今度は素面しらふで、アレンの愛の行為を受け入れなければならない――――。

「ねぇ、奏……どう考えても、僕が我慢して身を引くのが一番いいようなんだけど……」

 思わずも頼りなげな声が漏れてしまう。

 すると、電話の向こうで奏が笑う声が聞こえた。

『ふふふ、いっつも自信満々の達実の口から、そんな殊勝なセリフが出るなんてね』

「奏っ」

『じゃあ達実は、自分の愛はあきらめるの? 心は封印するの? そんなこと出来るの? 』

「愛――」

 そこで言葉を切ると、達実は少しの間を開けて別の事を口にした。

「それじゃあ訊くけど、奏はダディやパパのことはどう思ってたの? 」

『え? 』

「七海パパはオメガだったけど、子供を産めるだけの体力が自分には残ってなかったから――だから奏のお腹を借りて僕を産ませたんだよね? 」

『うん、そうだよ』

「じゃあ、奏は――――本当は誰が好きだったの? 七海パパ? それとも、九条のダディ? それとも……七海パパが可哀想だったから、それだけの理由で僕を産んだの? 」
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