ヒネクレモノ

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
55 / 101
10

10-9

しおりを挟む
 震えながらも、何とか岸本は抗議をした。
 しかし聖はそれを無視して、ポケットからタバコを取り出して口に咥え、火を点ける。
 無言のまま一度だけ煙を喫うと、不意にそのタバコを岸本の顔目掛けて投げ付けてきた。

「うわっ!」

 慌てて、岸本は身をかわす。
 美央と明も、驚いて息を呑む。
 ただ一人零だけは、その御堂聖の顔を、穴が開くほどに睨みつけた。

(この人が、御堂聖か。たしか、まだ歳は四十二か三だと聞いていたけど……)

 しかし、初めて目の当たりにした聖は、実年齢よりもはるかに若々しい。
 だが、この場に居並ぶどの男よりも、はるかに貫禄がある。
 聖は、ガタガタと震える岸本を黙殺し、零と明と美央の三人を睥睨した。
 そうしながらゆっくりと口を開き、彼らの想定外の命令を下す。

「お前ら、上だけでいいから、今すぐ服を脱げ」
「え?」
「やれ」

 何だかよく分からないが、この場は命令に従った方がいいようだ。
 そう思い、三人は目配せをして、言われた通り上半身だけ服を脱いだ。

「さぁ、これでいいだろう!」

 美央が勇気を出して、そう声を上げる。
 すると今度は、聖は連れてきた女に何事か耳打ちをした。
 女は溜め息をつき、不承不承といった様子で、着ていた服を脱ぎ始める。

「おい、何をやらせる気だ?」

 メンバーでは最年長の明が、戸惑いながら聖に訊ねる。
 だが、聖は無言だ。
 女は無言のままどんどん服を脱ぐと、とうとう下着姿になった。
 そこで女はチラリと聖の方を見たが、聖が無言のままなのを確認し、女はまた溜め息をつきながらブラジャーのホックを外した。
 転がり落ちるような豊満なバストを目にして、岸本とアイドル三人はギョッとする。

「おい! もう止めろ!!」

 零が慌ててストップをかけると、聖もそこで女へ頷いた。

「もういいだろう――――じゃあ、この女を囲むように、男共は床に座れ」
「はぁ!?」

 今度は、三人の声が合わさった。
 しかし、聖はそれ以上説明する気はないのか、次に自身の背後を振り返ると、付き従っている男たちへ指図をする。

「女を真ん中に据えて、ガキどもが取り囲んでいるようにセッティングだ。お前はカメラの用意、他の連中は、こいつらが暴れないよう押さえつけろ」
「分かりました」

 その命令に疑問も抗議もせずに、屈強な男たちはあっという間に零たちを拘束し、オーダー通りに床へ押さえつける。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

金色竜は空に恋う

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:30

白猫は宰相閣下の膝の上

BL / 連載中 24h.ポイント:7,882pt お気に入り:942

かぶっていた猫が外れたら騎士団にスカウトされました!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:4,096

緑の魔法と香りの使い手

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:8,120

異世界日帰り漫遊記!

BL / 連載中 24h.ポイント:305pt お気に入り:952

触手の魔女 ‐Tentacle witch‐

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:19

高校生なのに娘ができちゃった!?

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:1,505

処理中です...