ヒネクレモノ

亜衣藍

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最終章

7

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 少し苦いものを感じ、ユウはぶっきら棒に言い捨てた。
 これに、零はニヤリと笑って答える。

「でも、恋愛経験は、ユウさんよりオレの方が絶対多いですよ? オレは昔から体も大きかったので、かなりモテました。五歳からモデルやっていましたから、業界の先輩を始め、お姉さん達からも常にお誘いは多かったんです。おかげで、ユウさんがおっしゃる通りオレはまだ若いですが、体だけの関係になった相手はそれなりに多いんですよ?」

「な、なんだって!?」

 ギョッとするユウに微笑みかけ、零は素直な思いを伝える。

「ですが、正真正銘、初恋はあなたです」
「え……」
「今までオレは、興味本位でしか人と付き合った事がなかった。生まれて初めて、心から欲しいと思ったのはユウさんだけです。こうして告白したのは、真実あなただけなんです。この思いは一生変わらないと誓いますよ」

――――すごいプロポーズだ。 

 ユウは根負けして、とうとう吹き出してしまった。
 これからどうなるかは正直言って分からないが、少なくとも、この十六歳のマセた男は、生意気に背伸びをしながら懲りずにユウを口説くのだろう。

 何度断っても、それは聞こえないフリをしながら。
 そう思うと、なんだか可愛らしく思えてしまう。

 大人の余裕で、ひらりひらりと蝶のように躱してやってもいいし、それこそ大人の本気でぶつかってやるのもいいかもしれない。

 だが、今しばらくは……その恋心を焦らして掻い潜って、簡単に落ちてなどやるものか。
 たとえヒネクレモノと言われようと、こんな自分が好きになったというのなら、それこそ海の底まで追いかけて来い!
 ずっと、物心ついた頃から人が怖くて壁を作っていたが、それも全部一気に吹き飛んだ気がする。

 霧が晴れ、目の前が何もかもがクリアに感じる。

「ハハハ……いいよ……お前、思ったよりもずっと生意気で、可愛いヤツだったんだな」
「?」

 不思議そうな顔になる零に、ユウは燦然と笑ったのであった。

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