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しおりを挟む「東北新幹線やまびこ東京駅15時着、12号グリーン車だ」
「了解」
雑踏に紛れながら、目つきの鋭い男たちは、ターゲットの乗車した新幹線が到着するのを息を呑んで待っていた。
タレコミでは、その車両に乗った中国系二世の紅浩一が、都内で発生している窃盗事件の重要な情報を握っているハズだ。
目つきの鋭い男たちの正体は――――ヤクザではなく、じつは警察官である。
『浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ』
この言葉の意味は『海辺に無数にある砂がなくなっても、世の中に泥棒がいなくなることはないであろう』、だ。
石川五右衛門の辞世と伝えられる歌で、初句は〈石川や〉
そんな事をチラリと考えながら、男は口を開く。
「……まったく、これじゃあ暴対法の意味がないねぇ」
雨後の竹の子のように、よくもまぁ次々と新しいのが出てくるもんだよ。
そうボヤくと、同感だと頷き返された。
相手がヤクザだったら、それだけで嫌疑アリとして手を打てるのだが、件の組織はヤクザではない。
中国残留孤児の二世三世や中国人が徒党を組む不良集団であり、暴対法の適用外にあたる、新しく半グレと呼ばれるようになった組織だ。
急速に成長した組織の一つで、今回捜査に当たっている警察では「黒龍」と呼ばれている。
ここの所、頻繁に都内で暴れ回っている強盗窃盗団である。
「しかし、せっかく花蓮ちゃんが仕事を辞めて専業主婦してくれるって事になったのに、お前も運がないな~」
「ま、来月の結婚式までには、さすがに決着がつくだろうさ」
相棒の揶揄に肩を竦めてそう言い返し、男はニッコリと笑った。
男は、二十七にして警視という地位にあり、エリートコースを順調に歩むキャリアであった。
だが、それを鼻にかけるようなところも無く、どこか飄々として親しみやすいキャラクターであったので、同僚や年下の部下からは慕われていた。
本来なら、彼のような高い地位にある者は、こんな現場の前線には顔を出さないのだが、何せ本人の性格というものがある。
人づての情報などアテにならないと言い、時には巡査と一緒に商店街を自転車で走るような、一風変わった男だった。
その男の視線が、ある一点で止まった。
(あの男は――――? )
「なぁ、達郎。あいつ、前にどこかで見なかったか? 」
「ん? 」
男の視線の先を見遣り、達郎と呼ばれた相棒は「ああ」と頷いた。
「あいつは、以前は天黄組の秘蔵っ子って呼ばれていた御堂聖だな。本庁のリストで見たことがある。天黄組の構成員のハズだが――どうもそれは違うんじゃないかとも言われている、謎の男だ」
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