ナラズモノ

亜衣藍

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 まず、警察だ。

 紅が、10kgのハーブをリュックに入れて、新幹線で東京駅に着く情報が既に漏れていたようなのだ。

 紅の乗車した新幹線が到着する前に、東京駅のホームでひと騒動があり、それで警察が張り込んでいたのが分かった。

 念のためにと、離れた場所からホームの様子を監視していた仲間が携帯電話で知らせてくれなければ、間違いなく紅は駅で捕まっていたところだった。

 あの時は、替え玉を用意していて良かったと、心底胸を撫で下ろした。

(実はこの時は、捜査一課は強盗窃盗団を取り締まる目的でホームへ張り込んでいたのだが、黒龍は青菱とのトラブルを起こしたばかりの後だったので、完全に合法ドラッグの情報が漏れたと勘違いをした)

 だが、手ぐすね引いて待っていたのは、警察だけではなかったようだ。

 青菱もまた、紅を捕まえようと罠を仕掛けていた。こちらは完全に、最初から合法ドラッグ狙いだ。

 青菱は、駅で紅を捕えられなかったのが余程腹立たしかったのか、一気にヤクザの本性を現してきた。

 青菱は、紅の身柄とハーブの原材料を手に入れようと【黒龍】のメンバーに尾行を付け、彼らのアジトまで容赦なく暴いたのだ。

 愚かにも、その時の彼らはこれを「ヤクザのクセに生意気だ」と思ってしまった。

――――彼らは、暴走した。

 拳銃の実弾くらいなら、裏に手を回せば簡単に手に入る。

 彼らは実弾を入手し、青菱から与えられていた拳銃に弾を込め、威勢よく報復に出た。

 まず、彼らの動きを警察に漏らしたであろう可能性の強い刑事スパイを、言葉巧みに呼び出し、拳銃を使って射殺した。

 現役警察官の射殺はセンセーショナルに報道され、彼らはそれに委縮するどころか、更に増長した。世間が騒げば騒ぐほど、彼らは有頂天になったのだ。

――――どうしようもなく、彼ら半グレ集団は若く未成熟だった。

『次はお前だ。オレ達の要求を受け入れろ』

 そう、あろうことか青菱史郎へと、直接脅しを掛けてしまったのだ!

 それが、この、恐ろしく無慈悲な報復の始まりとなった。

「どうすんだよ、森村! 」

「どうするって……」

「次は、間違いなくオレ達一人一人にヤクザの報復が来るぞっ! 『花圃』の製造方法は渡したんじゃないのか!? 」

「渡したよ! 渡したのに――――あいつ、あのヤクザ……絶対許さねぇって――」

「じゃあ、どうするんだよ! このままブチ殺されるのを待ってろってのか!? 」

 紅の悲鳴のような声に、森村は沈黙する。

 そして、しばらく炎に包まれる家を見遣った後、森村は意を決したように口を開いた。

「――あいつの、弱点を抑えるんだ」

「弱点? 」

「残っている仲間に連絡して、何が何でも捜すんだよ! 前々から噂があるって、ヤクザの間では有名だったらしいじゃないか!? あいつには、ぞっこんのオンナがいるって! こうなったら、青菱史郎のその弱みを握って、とにかく交渉するしかねぇだろう! 」

 森村は、血走った眼をしながら言う。



「急いで、あいつのオンナを捜すんだ! 」



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