ナラズモノ

亜衣藍

文字の大きさ
77 / 102
18

18-4

しおりを挟む
   ◇

 正弘たちは車から出てきた安永の舎弟を締め上げて、今の深刻な状況を改めて知った。

「何だと!? ドラッグの過剰摂取だぁ!?  」

 道理で、あの聖が、大人しく安永の人質になっているワケだ。

 そうでもなければ、この状況に説明が付かないと納得する。

 ガクガクと正弘に頷き、舎弟は必死になって言い募る。

「そ、そうだ。一刻も早く専門医に連れて行かないと、ヤバイ状態なんだ」

「だったら、今すぐてめぇらのとち狂った親分を車から引き摺り出して、聖を連れてこい! 」

 怒鳴り散らし、舎弟を蹴っ飛ばして車に向かわせるも、

「誰も来るなっ! 」

 と、車内からは安永のひっくり返ったような声が上がり、また銃声が轟いた。

 完全に恐慌状態に陥り、安永は敵も味方も最早分かっていないようだ。

 正常な判断力を失い、ただただ手にした傾国の美女に夢中になっているのだろう。

 これでは、八方塞がりだ。

 急性麻薬中毒で助かるかどうかは、時間との勝負であるのに――――。

「畜生! どうすりゃあいいんだ!? 」

「こんな時の為の警察だろうが! 何とかしやがれ! 」

 ヤクザの怒号に、警察もタジタジになる。

「たった今、特殊捜査班SITの出動を要請した。こちらへ向かっている! 」

 だが、そのSITが到着したからといって直ぐに、人質立て籠もりが解決するとは限らない。

 現に、そのまま何時間も膠着状態が続く場合が圧倒的に多いのだ。

「どうすればいいんだ――」

 真壁が、呻くような声を漏らす。

 亡き兄に代わり、これからは自分が聖を支えて行こうと決意していたのに、こんな事になるなんて……と、歯噛みをする。

 そしてそれは、その隣に立つ碇も同じだった。

 聖と同時に盃事を執り行い、せっかく兄弟分になったのだ。

 長いお勤めも先日終わり、天黄組幹部に就任し、さぁこれからと思っていた矢先にこれだ。

 自分は、まだ何も成し遂げていない。聖との間には、友情さえも芽生えていない。

 第一、まだ碇は、聖の眼中にも入っていない。ゴリラ呼ばわりされ蹴られただけだ。

 これでは悔しくて情けなくて仕方がない。

「「こらぁ、安永ぁ! このクソッたれ!! 出てきやがれー―――! 」」

 二人の男は、同時に同じ怒号を放っていた。

 対して正弘は、イライラしながら、この場をどう収束させるか考えていた。

 いくら怒鳴って脅しても、今の安永は出てこないだろう。

 ならば、賺して誘うか? 

 正弘は、警官の一人が手にしていた拡声器を奪い取り、声を上げる。

「――――安永よぉ。このままじゃあ、せっかく手に入れた別嬪が台無しになっちまうぜぃ? てめぇも、動かない人形なんざ本当は興味ねぇはずだ。なぁ、そこから出てきて、聖をこっちに渡してくんねぇか? 」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ニューハーフヘルス体験

中田智也
BL
50代のオジサンがニューハーフヘルスにハマッた実体験と心の内を元にしたおはなし

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...