インチキで破廉恥で、途方もなく純情。

亜衣藍

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 正嘉は、青柳が経営する複数の会社の会長職を務めながら、家柄の良いオメガの女と番い、後継者を産み育てるという大切な役目をになう事となった。

 本人の意思とは関係なしに、その責務を負わされたワケだ。

 やがて怒涛のように押し寄せる、親族や付き合いのある名家からの紹介に仲介、仕事相手からの斡旋。

 それまでも見合いの話は多かったが、益々輪をかけてそういった話は多くなった。

――――しかし、彼はまだまだ若い。

 家の為に、好きでもないオメガの女と番うなど真っ平御免だ。

 故に、周りがうるさいので取り敢えず適当な女と婚約をしては、何だかんだと相手の不貞を理由に破談に持ち込み、次々と女達を放り捨てるようになっていった。

 青柳家と釣り合うようなハイクラスの家の令嬢は、基本的にプライドばかり高く、自分に甘くガードも甘い。

 正嘉は、そこに付け込んだ。

 婚約した相手の女が徐々に面倒になって来ると、その道のプロジゴロに金を与えて、その婚約した当の令嬢を口説かせる。

 令嬢は、冷たい正嘉の態度に大抵不安を募らせていたので、見栄えのする伊達男に甘い言葉を掛けられ、同情されて優しく慰められると……簡単に靡く。

 口づけでもしてくれたら、御の字だ。

 そこを証拠に押さえ、婚約を破棄する。

 相手の家も、婚約解消は自分の娘の不貞が原因なので、正嘉には何も言い返せない。

(バカばっかりだな、こんな単純な手に引っかかるなんて。ま、オレに惚れたのが間違いだったと思えばいいさ)

 正嘉は冷笑を浮かべては、そうせせら笑った。

――――元使用人の男は、そんな汚い仕事の処理係のようなものを担当していたので、その時の正嘉の様子を詳細に語った。

 本気で子供を設け、暖かい家庭を作るなんて考えは、正嘉には最初から無い。

 そもそも正嘉は、父親や自分と同じアルファを憎んでいる。

 そして、アルファもベータも嫌いだが、中でも一番オメガの女を嫌っていた。

 オメガの女達は、自分達が高確率で子を身籠る事が可能だという事を盾にして、同じオメガである筈の男を完全に下に見ている。

 彼女達は、何処に行っても何をしても、常に周りからかしずかれてチヤホヤと持てはやされてるのが当たり前だと思っていて、実に高慢だ。

 対して、同族である筈のオメガの男を、発情に苦しみ底辺をのたうち回り、後孔で男を迎え入れる淫売だと公言して憚らない。


――――彼女達は、正嘉の憎悪する父親を彷彿とさせる。


 正嘉の愛する母親は……オメガ男体であったが故に、青柳家から無情にも追い出された。

 今は、行方も分からない。

 可哀想な正嘉の母を、去ってもなお罵り続けた父親。

 彼女たちは、それと全く同じ事を言っている――! 

『オメガの男体なんて、キモイ淫乱ね』

 自分も発情期になると狂ったような淫乱になるくせに、それは棚に上げて、同族のオメガ男体を下卑して高飛車にののしる。

 そんなセリフ、高額な発情抑制剤を惜しみなく使えるからこそ言える言葉だろうに。

(オレは――――あんなメスなんぞと番う気はさらさらない)

 青菱の元使用人は、正嘉はそう言っていたと証言した。

 念のために、出入りの業者やその他使用人も接触したが、同じ回答が返って来た。

   ◇

 この事実を知った九条は、奏と相談する前に、直ぐさま妹の恵美の元へ直行した。

 彼にとっては、年の離れた可愛い妹である。

 こんな、性格の捻じれ曲がった男と誰が縁談などさせるものかと。

――――だが…………。

「ひどいわ、お兄様! 」

 恵美は九条の話を聞くと、逆に九条の方を罵り始めた。

「私に黙って、あの汚らわしい淫売オメガ男体を別宅へ間借りさせただけならともかく、正嘉さまを侮辱するなんて! 」

「え、恵美っ!? 」

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