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「私だって、それなりに正嘉さまの事は調べました! そして、分かった事があったんです!! 」
恵美はそこで言葉を切ると、憎々し気に奏の名を口にした。
「結城奏、あいつが……元凶だったんです! 」
「何を言って――」
「あいつが! 」
キッと兄を睨み付けると、恵美は強い声で言う。
「あいつが5年前に正嘉さまの前に現れなければ、正嘉さまがここまでお心を乱す事もなかったんです」
「それは……言い掛かりだ」
九条は、今までの経緯を奏から聞かされていたから、そう冷静に諭そうとしたが……。
「いいえ! あの汚らわしい淫売、あいつが全部悪いのです!! 生意気にインタビューを受けている時の映像が、偶然テレビで流れていたのを見た時から――――正嘉さまの様子がおかしくなって、この私を置き去りにしてそのままさっさと帰ってしまったのです。だから私は、これは絶対に何かあると思って調べたんですわ。そうしたら、何とあいつと過去に婚約していた仲だと分かって――」
「ああ、それはもう聞いた。だから彼らは、10年前まで婚約関係にあったんだと私も言っただろう? しかし、今はもう付き合いは無いんだ。お前が言っているのは、本当に奏くんにとっては迷惑千万な話で――」
「お兄様は、あいつの味方をするんですか! 」
恵美はヒステリックに、九条の言葉を遮った。
「低俗な下衆野郎のクセに、賢し気に国立生化学研究所の研究員面して――少しばかり頭がいいからといってテレビ取材まで受けて! 恥知らずの淫売のクセに!! 」
あまりの言い様に、九条は語気を強めて諫める。
「恵美! 何て言う口を利くんだ!! それに彼は無実だろう! それに今の奏くんには、ベータの婚約者がいるんだ。もう正嘉くんとは一切関係ないのだから、お前がそんなに一方的に感情を剥き出しにするなんておかしいぞ」
それに……と、九条は嘆息しながら続ける。
「おかしいのは、正嘉くんの方だ。客観的に言わせてもらえば、彼はとんでもなく歪んでいるよ」
「お兄様! 」
「いいから、聞きなさい!! 幾ら選り取り見取りだからと言って、幾らなんでも酷いじゃないか。調べたところによると、分かっているだけで彼は8件も婚約破棄しているんだ。表沙汰になっていないのも入れると、この倍以上になる。同じアルファとしても、ゾッとする! こんなにだらしない――――いいや、違うか。血の冷たい実の無い男に、大切なお前を番わせるワケにはいかない」
すると恵美は、また憎々し気に吐き捨てた。
「だから、あいつが悪いんです! 」
「恵美……」
「――――正嘉さまは、苦しんでいるんです」
「? 」
「運命の番を、無情に切り捨てた事に対する罪悪感に、ずっとあの方は苦悩しているんです」
意外な事を言われ、九条は何と返せばいいものか戸惑う。
(……罪悪感、だと? どうしてそんな話が? )
それに、奏に対して酷い事をしたと思っているなら、後日、彼の元を訪れてきちんと謝罪すればいいだけの話ではないか。
奏からの話では、一切そういったリアクションは無かったという。
そういった当たり前の事をしないで、それでどうして罪悪感で苦しんでいると言えるのか? 冗談も休みやすみ言えと、いいたい。
「恵美! いい加減に、目を覚ましなさい! お前は今冷静じゃないから――」
「いいえ! 私は冷静です! そして、正嘉さまの一番の理解者です!! 」
恵美は目に涙を浮かべて、そう言った。
鼻白む九条に、彼女は情感タップリに訴える。
「――――可哀想な方なんです。あの方の表面しか知らない人は、皆、やれ冷血漢だのドンファンだの適当な事ばかり言っていますが、本当はお寂しい方なんです。お父さまやお義母様とは疎遠になってしまっているし、近寄る人達も皆、青柳の権力財力に惹かれている者ばかり。女も皆見栄えはするが頭が空っぽな馬鹿者ばかりで――――現に、違う男が甘い言葉を掛けようものなら、フラフラと簡単に足を開くような貞操観念の無い淫乱だというではないですか」
恵美はそこで言葉を切ると、憎々し気に奏の名を口にした。
「結城奏、あいつが……元凶だったんです! 」
「何を言って――」
「あいつが! 」
キッと兄を睨み付けると、恵美は強い声で言う。
「あいつが5年前に正嘉さまの前に現れなければ、正嘉さまがここまでお心を乱す事もなかったんです」
「それは……言い掛かりだ」
九条は、今までの経緯を奏から聞かされていたから、そう冷静に諭そうとしたが……。
「いいえ! あの汚らわしい淫売、あいつが全部悪いのです!! 生意気にインタビューを受けている時の映像が、偶然テレビで流れていたのを見た時から――――正嘉さまの様子がおかしくなって、この私を置き去りにしてそのままさっさと帰ってしまったのです。だから私は、これは絶対に何かあると思って調べたんですわ。そうしたら、何とあいつと過去に婚約していた仲だと分かって――」
「ああ、それはもう聞いた。だから彼らは、10年前まで婚約関係にあったんだと私も言っただろう? しかし、今はもう付き合いは無いんだ。お前が言っているのは、本当に奏くんにとっては迷惑千万な話で――」
「お兄様は、あいつの味方をするんですか! 」
恵美はヒステリックに、九条の言葉を遮った。
「低俗な下衆野郎のクセに、賢し気に国立生化学研究所の研究員面して――少しばかり頭がいいからといってテレビ取材まで受けて! 恥知らずの淫売のクセに!! 」
あまりの言い様に、九条は語気を強めて諫める。
「恵美! 何て言う口を利くんだ!! それに彼は無実だろう! それに今の奏くんには、ベータの婚約者がいるんだ。もう正嘉くんとは一切関係ないのだから、お前がそんなに一方的に感情を剥き出しにするなんておかしいぞ」
それに……と、九条は嘆息しながら続ける。
「おかしいのは、正嘉くんの方だ。客観的に言わせてもらえば、彼はとんでもなく歪んでいるよ」
「お兄様! 」
「いいから、聞きなさい!! 幾ら選り取り見取りだからと言って、幾らなんでも酷いじゃないか。調べたところによると、分かっているだけで彼は8件も婚約破棄しているんだ。表沙汰になっていないのも入れると、この倍以上になる。同じアルファとしても、ゾッとする! こんなにだらしない――――いいや、違うか。血の冷たい実の無い男に、大切なお前を番わせるワケにはいかない」
すると恵美は、また憎々し気に吐き捨てた。
「だから、あいつが悪いんです! 」
「恵美……」
「――――正嘉さまは、苦しんでいるんです」
「? 」
「運命の番を、無情に切り捨てた事に対する罪悪感に、ずっとあの方は苦悩しているんです」
意外な事を言われ、九条は何と返せばいいものか戸惑う。
(……罪悪感、だと? どうしてそんな話が? )
それに、奏に対して酷い事をしたと思っているなら、後日、彼の元を訪れてきちんと謝罪すればいいだけの話ではないか。
奏からの話では、一切そういったリアクションは無かったという。
そういった当たり前の事をしないで、それでどうして罪悪感で苦しんでいると言えるのか? 冗談も休みやすみ言えと、いいたい。
「恵美! いい加減に、目を覚ましなさい! お前は今冷静じゃないから――」
「いいえ! 私は冷静です! そして、正嘉さまの一番の理解者です!! 」
恵美は目に涙を浮かべて、そう言った。
鼻白む九条に、彼女は情感タップリに訴える。
「――――可哀想な方なんです。あの方の表面しか知らない人は、皆、やれ冷血漢だのドンファンだの適当な事ばかり言っていますが、本当はお寂しい方なんです。お父さまやお義母様とは疎遠になってしまっているし、近寄る人達も皆、青柳の権力財力に惹かれている者ばかり。女も皆見栄えはするが頭が空っぽな馬鹿者ばかりで――――現に、違う男が甘い言葉を掛けようものなら、フラフラと簡単に足を開くような貞操観念の無い淫乱だというではないですか」
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