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奏の頭の中は、まるで霧に包まれたように茫洋としていた。
(なに……が……? )
低く呻きながら、鉛の様に重い身体を蠢かせ、ゆっくりと手を上げる。
とにかく、首筋が熱くて痛い。それだけは確かだ。
(僕――は…………)
記憶が曖昧模糊として分からない。
しかしゆっくりと自分の首へ手を這わせると、そこがぬるりと温かく濡れているのを感じ取った。
そして、鼻腔を微かに刺激する――――生臭い、血の香り。
(…………え? )
徐々に熱さだけではなく、そこは痛みも感じて来た。
これはどうやら、何かで首を傷付けてしまったようだ。
(また? どうしていつも僕は、同じ場所ばかりにケガをするんだ――)
ああ、でも一度目は不慮のケガじゃなかったな。
自分で――――何かに深く絶望してしまって、フォークで傷を付けてしまったんだ。
――――じゃあ、二度目は?
(それも…………ケガじゃなくて、栄太さんと番いになった証しで…………)
ではどうして、こうしてまた同じ場所を傷付けて出血しているのだろう?
この、三度目のケガは――傷は、どうして付いてしまった?
(……それは――――)
段々に、意識がはっきりしてくる。
それと同時に、奏の顔は紙のように真っ白になる。
(それは、正嘉さまが……突然僕を押さえ込んで……それから――)
カッと目を見開き、奏は瘧に罹ったように震えた。
(正嘉さまが、僕の項を噛んだんだ! )
そこに至って、奏は弾かれたように身を起こした。
――――しかし実際は、その動きは非常に緩慢だった。
のろのろと身じろぎ、肘を使ってどうにか上体を起こした奏は――――次に、ヒッと短い悲鳴を上げた。
トロリと、何かが内股を伝い落ちる感覚。
下半身を覆う、重怠い独特の鈍痛……。
(な、なに? これは!? )
しかし何より、今の自分は服を身に付けておらず裸ではないか。
(僕は……? )
辺りを確認すると、見覚えのある内装が目に入る。
どうやら奏は、マンションの自室のベッドに横たわり、裸の上に毛布だけを被ったまま意識をしばらく失っていたようだ。
マンションのカギはバックに入っていた筈だ。
それを使い、どうやら賊は奏をここに連れて来たらしい。
――――そして賊とはつまり、正嘉に他ならないだろう。
その正嘉の気配は、今は消えている。
すでに彼は、ここを去った後らしい。
その事に安堵しながら、奏はベッドをそっと降りた。
どのくらいの時間、ここで奏が放置され一人で横たわっていたのかは分からないが……すっかり、身体は冷え切ってしまっている。
それなのに――――身じろぐ度に滴る、内腿の何かが生暖かくて気味が悪い。
その正体を考えないようにしながら、奏は蒼白の顔のままヨロヨロとバスルームへと向かった。
◇
(遅くなった……すまない、奏! )
あれから栄太は大急ぎで関係各所へ連絡を取り、何とか会社が踏み止まれるよう最大限の努力をした。
そして、日が変わる前にどうにか都市開発に携わる重要人物数名とアポイントを取り付け、ギリギリ首の皮一枚で繋がった状態にまで持って行った。
同時に、ネットに上がった『馬淵コーポレーションが潰れる』というデマが拡散する前に、社員総出で火消しに回るよう対応を急いだ。
(なに……が……? )
低く呻きながら、鉛の様に重い身体を蠢かせ、ゆっくりと手を上げる。
とにかく、首筋が熱くて痛い。それだけは確かだ。
(僕――は…………)
記憶が曖昧模糊として分からない。
しかしゆっくりと自分の首へ手を這わせると、そこがぬるりと温かく濡れているのを感じ取った。
そして、鼻腔を微かに刺激する――――生臭い、血の香り。
(…………え? )
徐々に熱さだけではなく、そこは痛みも感じて来た。
これはどうやら、何かで首を傷付けてしまったようだ。
(また? どうしていつも僕は、同じ場所ばかりにケガをするんだ――)
ああ、でも一度目は不慮のケガじゃなかったな。
自分で――――何かに深く絶望してしまって、フォークで傷を付けてしまったんだ。
――――じゃあ、二度目は?
(それも…………ケガじゃなくて、栄太さんと番いになった証しで…………)
ではどうして、こうしてまた同じ場所を傷付けて出血しているのだろう?
この、三度目のケガは――傷は、どうして付いてしまった?
(……それは――――)
段々に、意識がはっきりしてくる。
それと同時に、奏の顔は紙のように真っ白になる。
(それは、正嘉さまが……突然僕を押さえ込んで……それから――)
カッと目を見開き、奏は瘧に罹ったように震えた。
(正嘉さまが、僕の項を噛んだんだ! )
そこに至って、奏は弾かれたように身を起こした。
――――しかし実際は、その動きは非常に緩慢だった。
のろのろと身じろぎ、肘を使ってどうにか上体を起こした奏は――――次に、ヒッと短い悲鳴を上げた。
トロリと、何かが内股を伝い落ちる感覚。
下半身を覆う、重怠い独特の鈍痛……。
(な、なに? これは!? )
しかし何より、今の自分は服を身に付けておらず裸ではないか。
(僕は……? )
辺りを確認すると、見覚えのある内装が目に入る。
どうやら奏は、マンションの自室のベッドに横たわり、裸の上に毛布だけを被ったまま意識をしばらく失っていたようだ。
マンションのカギはバックに入っていた筈だ。
それを使い、どうやら賊は奏をここに連れて来たらしい。
――――そして賊とはつまり、正嘉に他ならないだろう。
その正嘉の気配は、今は消えている。
すでに彼は、ここを去った後らしい。
その事に安堵しながら、奏はベッドをそっと降りた。
どのくらいの時間、ここで奏が放置され一人で横たわっていたのかは分からないが……すっかり、身体は冷え切ってしまっている。
それなのに――――身じろぐ度に滴る、内腿の何かが生暖かくて気味が悪い。
その正体を考えないようにしながら、奏は蒼白の顔のままヨロヨロとバスルームへと向かった。
◇
(遅くなった……すまない、奏! )
あれから栄太は大急ぎで関係各所へ連絡を取り、何とか会社が踏み止まれるよう最大限の努力をした。
そして、日が変わる前にどうにか都市開発に携わる重要人物数名とアポイントを取り付け、ギリギリ首の皮一枚で繋がった状態にまで持って行った。
同時に、ネットに上がった『馬淵コーポレーションが潰れる』というデマが拡散する前に、社員総出で火消しに回るよう対応を急いだ。
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