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 気が付いたら、もう朝日が昇ろうとしている。

(まさか、こんなに時間が掛かるとは……)

 苦虫を潰したような顔をしている栄太を励ますように、吉川が声をかけて来た。

「――――社長、そんな顔をしないで下さい。大丈夫、まだ望みは充分残ってますよ」

「吉川……」

「馬淵コーポレーションは、まだ倒れちゃあいません。何とか踏ん張れました。でもまだ、駅の選定を再選してもうという確約は取れていません。これから、粘り強い交渉ですね……これが潰れたら、数百億の赤が確実です。頑張りましょう! 」

(なんだ、会社の事か……)

 肩透かしを食らった気をしながら、栄太は苦笑する。

「……ああ、そうだな。こっちも、先生方や太客にぶち込むように直ぐに実弾現金を用意しないとな――」

 栄太はそう返しながら、スッと椅子を引いて立ち上がった。

「とりあえず、いったん解散だ! 2人置いて、あとは仮眠と着替えに戻れ。3時間後、集合だ」

「はいっ」

 栄太の指示に、部下達はそれぞれ応答すると、三々五々に散っていく。

 そして栄太もまた、急いで駐車場へと向かった。

 奏から連絡を貰って、もう10時間以上が経過している。

 直ぐに行くと言っておきながら、つい会社に留まってしまった。

 もしかしたら、奏は不機嫌な顔をして怒っているかもしれない。

 妊娠するチャンスがあると教えたのに、肝心の番が駆け付けないとは何事かと。

(でも、発情期の期間は3日あるんだ。1日目が潰れたくらい、大丈夫だろう)

 機嫌を直してもらうように、何か差し入れでも買っていくか?

 それとも、また時間を掛けて優しく抱いてやろうか……。

(おっと、こっちは3時間のタイムリミットだった。そんなに悠長にはできないか)

 だが、根が優しくて真面目な奏の事だ。

 こちらの、止むに止まれぬ事情を話したら、絶対に分かってくれるだろう。



 栄太はそう楽天的に考えてしまい――――そしてこれが、次にとんでもない修羅場の原因となってしまうのであった。



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