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だから、栄太と奏が、互いに思い合っていると――――奏が都合よく錯覚してくれたことを幸いに、発情期ではない彼を情熱的に口説き、言葉巧みにベッドへ誘った。
ウブな奏は純粋に栄太の告白を受け入れてくれ、幸運にも、その心と体を開いてくれたが…………あの時の栄太の方に、そんな打算があったなどと夢にも思わないだろう。
純情な奏は、可愛らしく頬を染めながら、恥ずかしそうに栄太に身を寄せてくれた。
目を瞑って震える奏は本当に無垢な子供のようで――――栄太は、奏を騙しているようでズキリと良心が痛んだものだ。
だが、奏は、栄太の愛を享受することを選んでくれたのは間違いない事実だ。
真っ赤になりながも、それでも拒まずに、栄太を受け入れてくれたのだ。
これで確実に栄太の存在は、奏の心と体両方に入り込んだはず……。
栄太は、そこでようやくホッと安心した。
それで栄太は、少しずつ、奏のこの5年間の発情期に関する事共を教えることが出来たわけだが…………。
まさか、発情期の最中に正嘉の名を呼んでいたなどと知らなかったと、奏は本当に驚いていた。その様子からは、正嘉に対する慕情は感じられず『ああ、これで、上手いこと奏を手に入れられた』と喜んだのであるが。
(そうだ……オレは、本当は薄汚いハイエナなんだ……)
その事実に、栄太の表情は暗くなる。
正嘉という運命の番から巧みに眼を逸らせて、その心と身体を盗もうとした。
――――失敗しても、仕方がない。
割り込もうとしたのはこっちなんだ……。
そう黙り込む栄太に、正嘉は鼻を鳴らしながら声を掛けた。
「随分と冷静な様子だな。お前は本心では、奏をオレに差し出してホッとしているんじゃないか? 」
「――なに? 」
「奏のおかげで、青柳の土地を手に入れられたんだ。今回の事がなかったら――――そもそも奏の存在がなかったら、お前の会社は間抜けなヘマをして潰れる運命だったんだからな。あいつが居てくれて、本当に助かったな」
それは、ある意味本当の事だ。
だが、理性と感情は違う。
5年もの間――――腕の中に抱き締める度に、違う男の名を呼び続ける奏を、どういう気持ちで栄太は抱いてきたのか。
――――平気な筈がない。
栄太だって、奏を愛していたのに。
しかし、愛しい相手が口にするのは、いつも自分ではない男の名前で。
その、痛みと苦しみ……そして、狂おしい程の葛藤を。
(ただアルファというだけで――こいつは、平気な顔をして何もかもを奪っていく……)
その悔しさに、ギリッと、栄太は奥歯を噛む。
ようやく思いを通じ合えたと思った時も、長くは続かなかった。
本当に『運命の番』だというこのアルファが現われてしまい、奏をいとも簡単に連れ去ってしまった。
運命は、ベータである栄太を嘲笑うかのように、アルファの正嘉を露骨に依怙贔屓する。
どうしてここまで、滑稽なほどに天と地の落差が激しいのか?
大切なものの一つをを手放さなければ、何も得ることが出来ない栄太と違い、ただ黙っているだけで、天から全てのモノを与えられるアルファの正嘉がどうしようもなく憎い!!
(そうだ、こいつは――――オレと奏の間にはどうしても叶わなかった夢さえも、あっさりと手に入れようとしている――)
栄太はとうとう耐え切れずに、口を開いた。
「…………下らないガキの挑発だな。お前、それで本当に父親になる自覚はあるのか? 」
「――」
一拍置き、正嘉は不思議そうな顔をする。
「父親? 」
「……なんだ、まだ聞いてなかったのか? 」
何よりも大切な事だろうに、どうやらこいつは、奏の心をまだ完全には手に入れていないらしい。
その事に歪んだ優越感を覚えながら、栄太は口を開いた。
何も知らない様子でこちらを見る、正嘉の眼を見据えながら。
ウブな奏は純粋に栄太の告白を受け入れてくれ、幸運にも、その心と体を開いてくれたが…………あの時の栄太の方に、そんな打算があったなどと夢にも思わないだろう。
純情な奏は、可愛らしく頬を染めながら、恥ずかしそうに栄太に身を寄せてくれた。
目を瞑って震える奏は本当に無垢な子供のようで――――栄太は、奏を騙しているようでズキリと良心が痛んだものだ。
だが、奏は、栄太の愛を享受することを選んでくれたのは間違いない事実だ。
真っ赤になりながも、それでも拒まずに、栄太を受け入れてくれたのだ。
これで確実に栄太の存在は、奏の心と体両方に入り込んだはず……。
栄太は、そこでようやくホッと安心した。
それで栄太は、少しずつ、奏のこの5年間の発情期に関する事共を教えることが出来たわけだが…………。
まさか、発情期の最中に正嘉の名を呼んでいたなどと知らなかったと、奏は本当に驚いていた。その様子からは、正嘉に対する慕情は感じられず『ああ、これで、上手いこと奏を手に入れられた』と喜んだのであるが。
(そうだ……オレは、本当は薄汚いハイエナなんだ……)
その事実に、栄太の表情は暗くなる。
正嘉という運命の番から巧みに眼を逸らせて、その心と身体を盗もうとした。
――――失敗しても、仕方がない。
割り込もうとしたのはこっちなんだ……。
そう黙り込む栄太に、正嘉は鼻を鳴らしながら声を掛けた。
「随分と冷静な様子だな。お前は本心では、奏をオレに差し出してホッとしているんじゃないか? 」
「――なに? 」
「奏のおかげで、青柳の土地を手に入れられたんだ。今回の事がなかったら――――そもそも奏の存在がなかったら、お前の会社は間抜けなヘマをして潰れる運命だったんだからな。あいつが居てくれて、本当に助かったな」
それは、ある意味本当の事だ。
だが、理性と感情は違う。
5年もの間――――腕の中に抱き締める度に、違う男の名を呼び続ける奏を、どういう気持ちで栄太は抱いてきたのか。
――――平気な筈がない。
栄太だって、奏を愛していたのに。
しかし、愛しい相手が口にするのは、いつも自分ではない男の名前で。
その、痛みと苦しみ……そして、狂おしい程の葛藤を。
(ただアルファというだけで――こいつは、平気な顔をして何もかもを奪っていく……)
その悔しさに、ギリッと、栄太は奥歯を噛む。
ようやく思いを通じ合えたと思った時も、長くは続かなかった。
本当に『運命の番』だというこのアルファが現われてしまい、奏をいとも簡単に連れ去ってしまった。
運命は、ベータである栄太を嘲笑うかのように、アルファの正嘉を露骨に依怙贔屓する。
どうしてここまで、滑稽なほどに天と地の落差が激しいのか?
大切なものの一つをを手放さなければ、何も得ることが出来ない栄太と違い、ただ黙っているだけで、天から全てのモノを与えられるアルファの正嘉がどうしようもなく憎い!!
(そうだ、こいつは――――オレと奏の間にはどうしても叶わなかった夢さえも、あっさりと手に入れようとしている――)
栄太はとうとう耐え切れずに、口を開いた。
「…………下らないガキの挑発だな。お前、それで本当に父親になる自覚はあるのか? 」
「――」
一拍置き、正嘉は不思議そうな顔をする。
「父親? 」
「……なんだ、まだ聞いてなかったのか? 」
何よりも大切な事だろうに、どうやらこいつは、奏の心をまだ完全には手に入れていないらしい。
その事に歪んだ優越感を覚えながら、栄太は口を開いた。
何も知らない様子でこちらを見る、正嘉の眼を見据えながら。
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