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とりあえず食べるものを食べて、ゆっくりと休んだので、体力は回復したように思う。
…………若干ふらつくが、きっと大丈夫だ。
「……僕の事は、もう構わないでください」
奏は栄太にそう言うと、グイッとその身体を押し返した。
「奏、どうした? 」
「――お帰り下さい」
「おい、だから大使館へ行こうって……」
「それは、僕の決める事です。もう栄太さんには関係ないことですから」
この奏のつれない態度は、栄太にとって予想外であったらしい。
彼は困惑顔になると、奏の両肩へ再び手を置く。
「どうした? 怒っているのか? 」
「怒ってなんかいません。ただ、今はもうあなたの事を愛していないという事です。愛していると思ったのは――そう思おうとしていたから……」
「やっぱり、怒っているんだな」
栄太は奏の言葉を遮ってそう断言すると、掴んだ肩をガクガクと揺さぶった。
「何度でも謝る! だから許してくれ! でもあの時は、本当に会社が危なかったんだ。あの野郎、こっちの足元を見やがって――奏はあいつに寝取られて番にされてしまうし、オレも八方塞がりだったんだよ。だけど会社の方は、もう本当に立ち直りそうだから大丈夫になったんだ」
事実この数日間で、劇的に馬淵コーポレーションの状況は好転した。
栄太が案件となっていた土地を取得したことにより、駅前開発の選定は再び差し戻された。そして以前より攻勢をかけていた甲斐もあって、馬淵コーポレーションが開発事業に頭角を現すのは決定的になったのだ
この世の中、アルファよりもオメガよりも、多数を占めているのは栄太を含むベータである。苦境に立たされていた栄太には、思った以上に協力者が現われたのだ。
栄太は多くの同胞から口添えをしてもらい、再興が確定したのである。
さすがにここまで来ては、いかな青柳とて横槍を入れることは出来ぬであろう。
これを機に、栄太が代表を務める馬淵コーポレーションは一躍大企業へと上り詰める目処が立ったのだ。
今後二度と、アルファなどに媚び諂う必要などなくなる!
それを確信すると同時に、栄太には別の欲が出て来た。
一度は諦めたが――――やはり栄太は、奏が欲しい。
奏のお腹に、自分の子が宿ったと聞いた今は尚更だ!
第一、その子さえいれば、馬淵家の当主の座は栄太の手に渡ると約束されているのだ。
だから栄太はどうあっても引くわけには行かないと思い、ここへ来た。
「とにかく、このまま大使館へ行こう。段取りはつけてある」
栄太は再びそう言い、奏を促すが――――やはり奏は首を振るばかりだ。
「嫌です」
「奏っ! 」
飛び出した鋭い声に、奏はビクッと肩を震わせ、言った本人もハッとなる。
「――ああ、すまん……怯えさせる気はなかったんだ……あの、奏……」
しどろもどろになる栄太を見上げながら、奏は身体を強張らせて後退りする。
つい先日まで愛を誓い合った筈の、奏のこの態度に、栄太はショックを受けた。
「奏……どうして――」
「あ、あなたのことは……もう前のようには思えないと、さっきも言いました」
もう奏は、栄太とは恋人に戻れない。
今でも嫌いではないが、愛しているのかと問われれば…………もう、それはない。
「僕は、自分の気持ちに嘘をついてまで誰かと付き合おうとは思いません。あなたとは、もう終わりです。お腹の子供は僕が育てます」
「そんなっ! それじゃあ、正嘉を父親にする気か!? 」
「……」
「あいつは、何を考えているのか分からん男だぞ!? 家柄だけのアルファの若造が、お前を幸せに出来ると思っているのか? 」
「この子は――僕の子です。ですから、僕が育てます」
意を決して、奏はそう告げる。
「……正嘉さまが何をお考えなのかを確かめてから、僕は自分の道を定めます。もしかしたら栄太さんが考えている道筋通りに、アメリカへ渡る可能性もありますが……でもその時は、僕一人だけで実行します」
…………若干ふらつくが、きっと大丈夫だ。
「……僕の事は、もう構わないでください」
奏は栄太にそう言うと、グイッとその身体を押し返した。
「奏、どうした? 」
「――お帰り下さい」
「おい、だから大使館へ行こうって……」
「それは、僕の決める事です。もう栄太さんには関係ないことですから」
この奏のつれない態度は、栄太にとって予想外であったらしい。
彼は困惑顔になると、奏の両肩へ再び手を置く。
「どうした? 怒っているのか? 」
「怒ってなんかいません。ただ、今はもうあなたの事を愛していないという事です。愛していると思ったのは――そう思おうとしていたから……」
「やっぱり、怒っているんだな」
栄太は奏の言葉を遮ってそう断言すると、掴んだ肩をガクガクと揺さぶった。
「何度でも謝る! だから許してくれ! でもあの時は、本当に会社が危なかったんだ。あの野郎、こっちの足元を見やがって――奏はあいつに寝取られて番にされてしまうし、オレも八方塞がりだったんだよ。だけど会社の方は、もう本当に立ち直りそうだから大丈夫になったんだ」
事実この数日間で、劇的に馬淵コーポレーションの状況は好転した。
栄太が案件となっていた土地を取得したことにより、駅前開発の選定は再び差し戻された。そして以前より攻勢をかけていた甲斐もあって、馬淵コーポレーションが開発事業に頭角を現すのは決定的になったのだ
この世の中、アルファよりもオメガよりも、多数を占めているのは栄太を含むベータである。苦境に立たされていた栄太には、思った以上に協力者が現われたのだ。
栄太は多くの同胞から口添えをしてもらい、再興が確定したのである。
さすがにここまで来ては、いかな青柳とて横槍を入れることは出来ぬであろう。
これを機に、栄太が代表を務める馬淵コーポレーションは一躍大企業へと上り詰める目処が立ったのだ。
今後二度と、アルファなどに媚び諂う必要などなくなる!
それを確信すると同時に、栄太には別の欲が出て来た。
一度は諦めたが――――やはり栄太は、奏が欲しい。
奏のお腹に、自分の子が宿ったと聞いた今は尚更だ!
第一、その子さえいれば、馬淵家の当主の座は栄太の手に渡ると約束されているのだ。
だから栄太はどうあっても引くわけには行かないと思い、ここへ来た。
「とにかく、このまま大使館へ行こう。段取りはつけてある」
栄太は再びそう言い、奏を促すが――――やはり奏は首を振るばかりだ。
「嫌です」
「奏っ! 」
飛び出した鋭い声に、奏はビクッと肩を震わせ、言った本人もハッとなる。
「――ああ、すまん……怯えさせる気はなかったんだ……あの、奏……」
しどろもどろになる栄太を見上げながら、奏は身体を強張らせて後退りする。
つい先日まで愛を誓い合った筈の、奏のこの態度に、栄太はショックを受けた。
「奏……どうして――」
「あ、あなたのことは……もう前のようには思えないと、さっきも言いました」
もう奏は、栄太とは恋人に戻れない。
今でも嫌いではないが、愛しているのかと問われれば…………もう、それはない。
「僕は、自分の気持ちに嘘をついてまで誰かと付き合おうとは思いません。あなたとは、もう終わりです。お腹の子供は僕が育てます」
「そんなっ! それじゃあ、正嘉を父親にする気か!? 」
「……」
「あいつは、何を考えているのか分からん男だぞ!? 家柄だけのアルファの若造が、お前を幸せに出来ると思っているのか? 」
「この子は――僕の子です。ですから、僕が育てます」
意を決して、奏はそう告げる。
「……正嘉さまが何をお考えなのかを確かめてから、僕は自分の道を定めます。もしかしたら栄太さんが考えている道筋通りに、アメリカへ渡る可能性もありますが……でもその時は、僕一人だけで実行します」
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