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何かを諦めたように瞳を閉じた奏の様子に気付き、ドクターが少し訝し気に奏を見下ろす。
「どうしました、カナデ? 」
「……」
「それでは、血圧を測らせてもらいますね」
返事はなかったが、ドクターは気にせず、奏の身体に掛けていた毛布をスッと捲るが、
「っ!? 」
奏の履いていたズボンが赤く染まっている事に気付き、仰天した。
「Oh! これは……急いで婦人科の専門医に連絡をっ!! 」
◇
オメガの男体は、非常に不安定な両性といえる。
外見は、ベータやアルファと変わらない男性の身体をしているが、彼等には無い『発情期』が周期的に起こり、その期間中は特殊な身体へと変貌するのだ。
と、いっても、何か別のモノに変身する訳ではない。
彼らは何と、外見はそのままに、男体にして妊娠を可能にしてしまうのだ。
特異なのは、後孔での性交により、その発情期のわずかな期間だけ、普段は閉じられている子宮が受精可能状態になるという奇跡だろう。
女体と違って男体は、性交時に後孔を使う所為か受胎率は著しく低いが…………唯一『男性』にして『母』になれる身体をしているのだ。
(もちろん、オメガ男体は男性器も正常に作用するので、女性と愛を育み父親になる事も可能であるが)
だが、そのオメガ特有の狂おしい発情の様子に、未だに「男のクセに、男に尻を振る淫売」だのと影口を叩くものも多い。
しかし、実際に母になれる彼等は、ベータよりもアルファよりも実は貴重な存在だ。
――――だが、リスクも当然ある。
生来の不安定な両性が仇となり、妊娠初期で流産してしまう件数が非常に多いのだ。
だからオメガの男体が、もしも妊娠を確認した場合は、その『番』の匂いを染み込ませた巣を作って心の安定を図り、主にその巣の中で最初の3週を過ごすのを推奨しているのだ。心と体の穏やかにして安静にしなければ、不安定な身体は直ぐに影響を受けてしまうのである。
七海達樹も、番である九条凛に護られて、出来るだけ安静に過ごしていたのに…………それでもダメだったのだ。
なのに、奏の身に立て続けに起こった出来事は――――あまりにも過酷過ぎた。
「……」
奏はベッドに横たわったまま、静かに涙を流していた。
結果から言えば、奏と栄太の子供は――――鮮血となって流れてしまったのだ。
あの夢に出てきた子供は、やはり、未来に出会えていたかもしれない我が子だったのだろう。栗毛の髪に、吊り上がり気味の大きな瞳が忘れられない――――。
「う……」
堪え切れぬ涙が、次々と溢れて来る。
悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。
どうして、もっと真剣に、妊娠したことを考えなかったのだろうか?
授かりさえすれば、そのままお腹の中で順調に育つのだろうと勝手に思っていた。
なんて浅はかな考えだろう。
事前に、オメガ男体の出産率は低い事くらい知っていたハズなのに!
どうして、自分だけは違うと思ったのか?
(僕は……大馬鹿者だ…………)
そもそも、仕事に余計な使命感を持ったのも間違いだった。
多くの優秀なスタッフがいるのだし、もっと彼等を信用して頼ればよかったのだ。
全てを自分の手で進めようとして、必要のない負荷までを背負い込んでいた。
子供を身籠った事を公言して、周囲からサポートしてもらえばよかったのに。
どうして何もかも、全部自分で片付けようとしたのか?
(でも、妊娠したオメガは、番に護られるのが普通なんだと……世間ではそういうけれど……)
だが、それでは奏は、誰を頼って護ってもらえば良かったというのか?
「どうしました、カナデ? 」
「……」
「それでは、血圧を測らせてもらいますね」
返事はなかったが、ドクターは気にせず、奏の身体に掛けていた毛布をスッと捲るが、
「っ!? 」
奏の履いていたズボンが赤く染まっている事に気付き、仰天した。
「Oh! これは……急いで婦人科の専門医に連絡をっ!! 」
◇
オメガの男体は、非常に不安定な両性といえる。
外見は、ベータやアルファと変わらない男性の身体をしているが、彼等には無い『発情期』が周期的に起こり、その期間中は特殊な身体へと変貌するのだ。
と、いっても、何か別のモノに変身する訳ではない。
彼らは何と、外見はそのままに、男体にして妊娠を可能にしてしまうのだ。
特異なのは、後孔での性交により、その発情期のわずかな期間だけ、普段は閉じられている子宮が受精可能状態になるという奇跡だろう。
女体と違って男体は、性交時に後孔を使う所為か受胎率は著しく低いが…………唯一『男性』にして『母』になれる身体をしているのだ。
(もちろん、オメガ男体は男性器も正常に作用するので、女性と愛を育み父親になる事も可能であるが)
だが、そのオメガ特有の狂おしい発情の様子に、未だに「男のクセに、男に尻を振る淫売」だのと影口を叩くものも多い。
しかし、実際に母になれる彼等は、ベータよりもアルファよりも実は貴重な存在だ。
――――だが、リスクも当然ある。
生来の不安定な両性が仇となり、妊娠初期で流産してしまう件数が非常に多いのだ。
だからオメガの男体が、もしも妊娠を確認した場合は、その『番』の匂いを染み込ませた巣を作って心の安定を図り、主にその巣の中で最初の3週を過ごすのを推奨しているのだ。心と体の穏やかにして安静にしなければ、不安定な身体は直ぐに影響を受けてしまうのである。
七海達樹も、番である九条凛に護られて、出来るだけ安静に過ごしていたのに…………それでもダメだったのだ。
なのに、奏の身に立て続けに起こった出来事は――――あまりにも過酷過ぎた。
「……」
奏はベッドに横たわったまま、静かに涙を流していた。
結果から言えば、奏と栄太の子供は――――鮮血となって流れてしまったのだ。
あの夢に出てきた子供は、やはり、未来に出会えていたかもしれない我が子だったのだろう。栗毛の髪に、吊り上がり気味の大きな瞳が忘れられない――――。
「う……」
堪え切れぬ涙が、次々と溢れて来る。
悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。
どうして、もっと真剣に、妊娠したことを考えなかったのだろうか?
授かりさえすれば、そのままお腹の中で順調に育つのだろうと勝手に思っていた。
なんて浅はかな考えだろう。
事前に、オメガ男体の出産率は低い事くらい知っていたハズなのに!
どうして、自分だけは違うと思ったのか?
(僕は……大馬鹿者だ…………)
そもそも、仕事に余計な使命感を持ったのも間違いだった。
多くの優秀なスタッフがいるのだし、もっと彼等を信用して頼ればよかったのだ。
全てを自分の手で進めようとして、必要のない負荷までを背負い込んでいた。
子供を身籠った事を公言して、周囲からサポートしてもらえばよかったのに。
どうして何もかも、全部自分で片付けようとしたのか?
(でも、妊娠したオメガは、番に護られるのが普通なんだと……世間ではそういうけれど……)
だが、それでは奏は、誰を頼って護ってもらえば良かったというのか?
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