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4 Jealousy
4 Jealousy
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どうしてこの肉体を味わっておきながら『本気にはならない』と言い切れるのかと。
――――ジンには何か目的があるという事だが……?
(聖の恋人だと触れ回ったとして、それでいったい何の得があるってんだ?)
男どもの嫉妬を一身に浴びて、悪目立ちするだけだ。
それでも、社会的に権力も財力も地位もある人間ならば、ライバルたちの嫉妬の眼差しも名誉の勲章と捉えるかもしれないが。
だがジンは、モデル業もそこそこレベルの凡人だという。
そんな低レベルの人間が聖の『恋人』を名乗ったところで、失笑され潰されるのがオチだろうに。
(竹野仁、か――)
史郎は考えを巡らせようとするが、甘い拷問に脳髄が痺れて集中できない。
「おい、少しは加減しろっ」
「嫌だね」
せせら笑い、聖は大きく腰をうねらせた。
これは堪らない。
「ぐぅっ!」
史郎は大きく喉を動かすと、耐え切れずに白濁を放出させた。
甘い拷問から解放され、その快楽から史郎の腕は少し緩む。
聖はその史郎の腕から素早く逃れると、後孔から雄芯を引き抜き、白濁を滴らせたままベッドの上で片膝をついた。
「フン、オレの勝ちだな」
「ぬかせ!」
悔し気に舌打ちする史郎に、聖は愉快そうに笑うが――その笑みは、徐々に少し切ないものに変わった。
「今夜は、これで、今までの貸し借りを無しにしたい」
「『貸し借り』?」
「……以前、男と別れる為にあんたを呼びつけて利用しちまったからな」
思い出すと、今でも胸が痛む。
聖は数か月前、若い役者と恋仲になったが色々あって――その男と別れる為に、史郎を呼び出して自分を抱かせたのだ。
その男の、目の前で。
「あいつにも可哀想な事をしたと思っているが、あんたにも悪い事をしたと、ずっと後悔していた。一度はその件に関して謝罪するチャンスもあったが、結局こっちの都合でそれもキャンセルしちまったしな」
正確には、真壁によって史郎と会う事を阻止されたのだが。
だが、近い内に直接史郎へ謝ろうと思っていた聖だ。
その機会が、たまたま今日巡って来ただけだ。
聖は全身から力を抜き、しどけなくベッドへと腰を下ろす。
「悪かったよ」
「聖――」
「あんたに別れを告げたっていうのに、突然こっちの都合で呼び出して……利用する真似をしてすまなかった。だから、今夜は――あの時の借りを返したい」
先程までの毒婦然としていた様相はガラリと変わり、清純で穢れの無い聖人のように首を垂れる聖を前に、史郎は言葉を無くす。
――――こいつは、何でこうなんだろう?
毒のある表の顔だけを見せられていたら、史郎もここまで惚れる事は無かっただろう。
その裏に隠された、眩しい程に純白で純真な顔とのギャップに……史郎は、昔から心を完全に囚われてしまっているのだ。
そう、まだ十九だった聖を見たあの瞬間から、ずっと。
一度は、聖から切り出された別れを受け入れて、おとなしく大人らしく違う道を歩んで行こうと思った。
自分は、とことん極道だ。
死ぬまできっと、悪党のままだろう。
だが聖は、カタギになって息子と一緒に真っ当な道を歩んで行きたいという。
ならば、ここは男らしくスッパリと引くべきだろう――――そう思った。
だが、無理だった。
不可能だった。
この世の何処にも聖の代わりに成りえるような人物などいないと実感し、あの華こそが唯一無二の『傾国の美女』なのだと、史郎はとことん思い知ったからだ。
そう理解したと同時に、史郎の心は餓え、飢えた。
――――ジンには何か目的があるという事だが……?
(聖の恋人だと触れ回ったとして、それでいったい何の得があるってんだ?)
男どもの嫉妬を一身に浴びて、悪目立ちするだけだ。
それでも、社会的に権力も財力も地位もある人間ならば、ライバルたちの嫉妬の眼差しも名誉の勲章と捉えるかもしれないが。
だがジンは、モデル業もそこそこレベルの凡人だという。
そんな低レベルの人間が聖の『恋人』を名乗ったところで、失笑され潰されるのがオチだろうに。
(竹野仁、か――)
史郎は考えを巡らせようとするが、甘い拷問に脳髄が痺れて集中できない。
「おい、少しは加減しろっ」
「嫌だね」
せせら笑い、聖は大きく腰をうねらせた。
これは堪らない。
「ぐぅっ!」
史郎は大きく喉を動かすと、耐え切れずに白濁を放出させた。
甘い拷問から解放され、その快楽から史郎の腕は少し緩む。
聖はその史郎の腕から素早く逃れると、後孔から雄芯を引き抜き、白濁を滴らせたままベッドの上で片膝をついた。
「フン、オレの勝ちだな」
「ぬかせ!」
悔し気に舌打ちする史郎に、聖は愉快そうに笑うが――その笑みは、徐々に少し切ないものに変わった。
「今夜は、これで、今までの貸し借りを無しにしたい」
「『貸し借り』?」
「……以前、男と別れる為にあんたを呼びつけて利用しちまったからな」
思い出すと、今でも胸が痛む。
聖は数か月前、若い役者と恋仲になったが色々あって――その男と別れる為に、史郎を呼び出して自分を抱かせたのだ。
その男の、目の前で。
「あいつにも可哀想な事をしたと思っているが、あんたにも悪い事をしたと、ずっと後悔していた。一度はその件に関して謝罪するチャンスもあったが、結局こっちの都合でそれもキャンセルしちまったしな」
正確には、真壁によって史郎と会う事を阻止されたのだが。
だが、近い内に直接史郎へ謝ろうと思っていた聖だ。
その機会が、たまたま今日巡って来ただけだ。
聖は全身から力を抜き、しどけなくベッドへと腰を下ろす。
「悪かったよ」
「聖――」
「あんたに別れを告げたっていうのに、突然こっちの都合で呼び出して……利用する真似をしてすまなかった。だから、今夜は――あの時の借りを返したい」
先程までの毒婦然としていた様相はガラリと変わり、清純で穢れの無い聖人のように首を垂れる聖を前に、史郎は言葉を無くす。
――――こいつは、何でこうなんだろう?
毒のある表の顔だけを見せられていたら、史郎もここまで惚れる事は無かっただろう。
その裏に隠された、眩しい程に純白で純真な顔とのギャップに……史郎は、昔から心を完全に囚われてしまっているのだ。
そう、まだ十九だった聖を見たあの瞬間から、ずっと。
一度は、聖から切り出された別れを受け入れて、おとなしく大人らしく違う道を歩んで行こうと思った。
自分は、とことん極道だ。
死ぬまできっと、悪党のままだろう。
だが聖は、カタギになって息子と一緒に真っ当な道を歩んで行きたいという。
ならば、ここは男らしくスッパリと引くべきだろう――――そう思った。
だが、無理だった。
不可能だった。
この世の何処にも聖の代わりに成りえるような人物などいないと実感し、あの華こそが唯一無二の『傾国の美女』なのだと、史郎はとことん思い知ったからだ。
そう理解したと同時に、史郎の心は餓え、飢えた。
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