彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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9 living hell

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  ◇

 聖一人だけ連れ出され、てっきり生体データを取る為の部屋へ通されるのかと思っていたが。

 しかし予想に反し、聖は案内役の仮面の男により、小綺麗なサロンのような場所へと案内された。

(……ここは?)

 至る所に置いてある観葉植物はよく手入れされているし、カウチやローテーブル、さり気なく置いてある調度品もみな上質である。

 床は本物の大理石が敷き詰められており、光の差し込むバルコニーまでも、全てが豪華だった。

 仮面の男は恭しく会釈をすると、カウチへ手を差し伸べる。

「どうぞ、お掛けになって待ちください」

「――オレは、医師か研究員のような人間がいる部屋へ通されるのかと思っていたんだが?」

「その前に、まずは、主催が御堂様とお話をしたいそうです」

 どうやら、何事か段階を踏むらしい。

 仕方なしにその場で立っていたところ、そう間を置かずに男が入室してきた。

「初めまして御堂さん。よくぞ、おいで下さいました」

 一見すると、その男は実年齢が分からぬような、日本人の紳士だった。

 身に着けている衣類は全て上等な物であり、仕草の一つひとつまでもが上品である。

 まるで、ヨーロッパの王侯貴族のように、気品のある出で立ちではあるが――――

(これはまた、ずいぶんと全身・・に金を掛けた男だな)

 聖は苦笑したい気分を堪えて、ジッと男を見た。

 男の顔は、かなり高度な美容整形を施しているようだが。

 しかしどれ程完璧に施術したとしても、分る者にはわかる。

 よく見ると、男の目の際と目頭には、睫は生えていなかった。

 目の周りを切って目を大きくすると、切った箇所に睫は生えてこないのだ。

 その目の他にも、皺を取る為のフェイスリフトも幾度となく繰り返しているのか、頭部に対して耳の位置がズレておかしくなってきている。
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