彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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9 living hell

9-13

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 顎と鼻のラインを作る為に入れたのであろう、プロテーゼも逆に悪目立ちしている。

『ギリシャ彫刻のように完璧な美貌』

 と言いたいところだが、如何せん日本人の薄い顔には、そんなに似合うものではないと聖は思う。

――――だが、人工的ではあるが、金を掛けた分だけ男の容姿が整っているのは確かである。その点は認めよう。

 ここに普通の女がいれば『なんてハンサムな男性なんだろう』と、ウットリと見入るかもしれない。

 男の顔面、全てが作り物ではあるが――

「ん? 僕の顔に何か付いているかな?」

 男はそう言うと、微笑みながら聖へ握手を求めて来た。

 聖はそれを胡乱そうに見遣りながら、ぴしゃりと言う。

「まずは、名乗るのが先では?」

 薄々正体を察しながらもそう促すと、男は再び微笑んだ。

「ああ、そうですね。僕はAHIRUのオーナー兼デザイナー、安蒜昂輝です。今日はこのプライベートアイランドで、VIPだけを招待した特別のショーを開催するのですが、あなたは恋人のジンに頼まれてここまで来たのでしょう?」

「ああ」

「すでに承知しているとは思いますが、この後、採血と精液の採取をお願いします。なに、あと数刻だけ協力して頂いたらそれで終了ですから。あなたも思う存分ショーを楽しんで下さい」

 安蒜あひるは上機嫌の様子でそう言うと、握手どころか、馴れなれしく聖の肩へと手を回してきた。そうして至近距離で聖を見つめると、感歎かんたんしたように息を吐く。

「ああ、写真や動画で見る以上だ! やはり実物は良い。これ程までに綺麗な人を見たのは生まれて初めてですよ」

「……それはどうも」

 素っ気なく返したが、安蒜は気にする様子も無く滔々と語る。

「僕は、昔から美しいものが好きでしてね。所有するモノは全て最高級の逸品で統一しているんですよ」
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