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9 living hell
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ゴクリと息を呑み、聖はその続きに耳を傾ける。
安蒜は『竹野』について、どのように認識しているのか。
……フロランスが竹野姓を名乗っていた事は知っていたのか?
それ次第で、物事が大きく変わる。
ここから先は、一言たりとも聞き逃すわけにはいかない!
そんな聖の緊張など気付かぬ様子で、安蒜は口を開いた。
「じつは、ジンは昔でいうところの試験管ベビーでしてね。両親は、将来俳優を生業に出来るような、美しく賢い、そして遺伝性疾患もない丈夫な子供が欲しいというオーダーを我々に出したんですよ。で、我々はストックしてある卵と精子から要望に添うものを選択して受精卵を作り、母体へ胚移植したわけです。そうして誕生したのが、彼なのですよ。言っておきますが、これは違法行為ではありませんよ?」
続けて、安蒜は言う。
「彼は本当に可愛かったので、5歳頃まで子役モデルとして活躍したようです。しかしその後に起こった不幸な事件によって住処を失い、どこかへ移ったと聞いたのが最後でしたが」
(事件?)
訊き返したいが、今は我慢だと自制する聖だ。
安蒜は何も気付かぬまま、自分の知るジンの身上を語る。
「しかし、二年前にモデルへ復帰したという事で、日本AHIRU事務所へ彼は突然挨拶に来たようです。是非、AHIRUの専属モデルになりたいのでデザイナーの安蒜昂輝と会わせてくれと。暗に、我々の裏の顔を臭わせながら……それを聞いた時は、何をバカな事をと思いましたよ。基本的に、我々とは子供が誕生した後は関わらない契約だったというのに」
それを聞き、聖は内心で安堵していた。
(どうやらこいつは本当に、竹野の因縁については知らないようだ)
現に、安蒜は全くその事について一言も言及していない。
ジンは、彼らが過去に手掛けた作品の一つだった――くらいの認識のようだ。
と、いうことは……やはり、フロランスが竹野京香に改名した事も知らないという事か?
気になり、遠回しに探りを入れることにした。
「あなたは、ファッションブランドの方を立ち上げた時は一人だったのか?」
安蒜は『竹野』について、どのように認識しているのか。
……フロランスが竹野姓を名乗っていた事は知っていたのか?
それ次第で、物事が大きく変わる。
ここから先は、一言たりとも聞き逃すわけにはいかない!
そんな聖の緊張など気付かぬ様子で、安蒜は口を開いた。
「じつは、ジンは昔でいうところの試験管ベビーでしてね。両親は、将来俳優を生業に出来るような、美しく賢い、そして遺伝性疾患もない丈夫な子供が欲しいというオーダーを我々に出したんですよ。で、我々はストックしてある卵と精子から要望に添うものを選択して受精卵を作り、母体へ胚移植したわけです。そうして誕生したのが、彼なのですよ。言っておきますが、これは違法行為ではありませんよ?」
続けて、安蒜は言う。
「彼は本当に可愛かったので、5歳頃まで子役モデルとして活躍したようです。しかしその後に起こった不幸な事件によって住処を失い、どこかへ移ったと聞いたのが最後でしたが」
(事件?)
訊き返したいが、今は我慢だと自制する聖だ。
安蒜は何も気付かぬまま、自分の知るジンの身上を語る。
「しかし、二年前にモデルへ復帰したという事で、日本AHIRU事務所へ彼は突然挨拶に来たようです。是非、AHIRUの専属モデルになりたいのでデザイナーの安蒜昂輝と会わせてくれと。暗に、我々の裏の顔を臭わせながら……それを聞いた時は、何をバカな事をと思いましたよ。基本的に、我々とは子供が誕生した後は関わらない契約だったというのに」
それを聞き、聖は内心で安堵していた。
(どうやらこいつは本当に、竹野の因縁については知らないようだ)
現に、安蒜は全くその事について一言も言及していない。
ジンは、彼らが過去に手掛けた作品の一つだった――くらいの認識のようだ。
と、いうことは……やはり、フロランスが竹野京香に改名した事も知らないという事か?
気になり、遠回しに探りを入れることにした。
「あなたは、ファッションブランドの方を立ち上げた時は一人だったのか?」
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