彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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9 living hell

9-19

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 安蒜の説明に、聖は唖然とした。

「ジンは遺伝子……の意味だったのか……」

「そうだよ。別に深い意味はなかったんだ。二つは、いわばクローンみたいなものだね。きっと成長したら同じような外見だったと思うよ。まぁ、フロランスの子供の方はとっくに死んでいるだろうけど」

 それを聞き、聖は探偵から一番最初に提出された報告書の内容に合点がいった。

 瓜二つのジンが、確かに同時期に存在していたのだ。

 だから探偵は、聖が依頼したジンは養護施設で成年まで過ごしたが、一時期子役モデルもしていた過去があったという結果を出したのか。

(くそっ! お陰で、余計に混乱しちまったじゃねーか)

 とッ捕まえて文句の一つも言いたいが、出掛けに上がってきた報告書の修正版に、この事が書いてあったのだろうと思うと――

(とことん、タイミングが合わなかったな)

 苦虫を嚙み潰したような顔になり、聖はフゥと息を吐いた。

 安蒜はそんな聖の様子に気付いた様子もなく、声を荒げた。

「君は、フロランスを匿っていたのか? ここに来た真の目的は、僕を脅すことだったのか!?」

「――――その女は、とっくに亡くなっているそうだ。多分、子供もな」

「なに?」

「……悪いが、ショーは辞退させてもらう。それから、オレの生体データ提供の件もキャンセルだ」

 聖はそう言うと、肩を掴まれるのも汚らわしいとばかりに、ピシャリと安蒜の手を払い除けた。

「っ!」

「ジンと一緒に、オレはこのまま港へ戻ることにする。あなたはここで、ショーでも何でもすればいい」

 こんなヤツの為に、ジンが手を汚す必要はない。

 どんな理由があるにせよ、こいつは復讐をする価値も無い、下衆な男だ。

「それでは、失礼する」

 そう言い捨て、部屋を出て行こうとした聖を、安蒜は咄嗟に引き留めた。
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